影山拓也という偶像の話


前略
影山拓也さん、生きてる?

冒頭、いきなりの不謹慎。
思った通り元IMPACTorsからは何の音沙汰もなく、退所から半月ほど経ちました。
影山拓也さんもとい、元IMPACTorsの皆さんはいかがお過ごしでしょうか?(feat.SoulJa)

6月11日の本日、影山拓也さんは26歳のお誕生日を迎えられて、私と同い年になった。
そんな中、誰かと誕生日パーティーをするでもなく、何かしらの企画をするでもない私は、実家から新宿行きの夜行バスに揺られている。
体力的にも夜行バスが厳しくなったり、地方遠征も迷わず新幹線を選べる財力を手にしたり、これが大人になったということなんだろう。
それでも私は夜行バスが好きだ。
夜行バスで一睡もできない私は、カーテンの隙間から見える流れ星のような光漏れを眺めながら、七尾旅人のサーカスナイトを延々とリピートするのが好きだ。
車内の星空を眺めて、翌日のコンサートに想いを馳せて生きてきたからだ。
大人になって、夜行バスという選択肢が狭まったことも、この先夜行バスに乗る用事がないかもしれないということも何だか少し切ない。


閑話休題
これは、影山拓也さんを好きになってから極端に言語化をしなくなったオタクが、相棒を喜ばせるためだけに重い腰を上げて書いた誰得文章である。

元はと言えばオタクのブログを見ることも、自分が書くことも好きだったはずだ。
他人の感性に触れることが好きだったはずだ。
ところがどうした、言語化ができなくなってしまった。
出来なくなったというか言語化を意識的にやめてしまった。

そもそも“好き”は、誰かと共有できる感情ではないのかもしれない。
好きな人について、推し活のような形でアウトプットしないのは、少ない語彙と稚拙な文章力では言語化が難しいから避けているというのが一番の理由ではあるが、なんとなく“感覚”で推しているところがあるのだと思う。

影山拓也さんは、私が『なりたいアイドル像』だ。

ジャニオタたるもの、誰もが一度はジャニーズJr.になる妄想をしたことがあるだろう。
あわよくば履歴書を送りたかったオタクもいることだろう。

自分がジャニーズJr.になったら尊先に担当の名前を挙げて、同期でシンメの相棒とマイクジュニアになった時、絶対背中合わせで歌ってやろうと思った時期があるだろう。
私はあるよ。夢小説書いたことあるもん!

そんな生産性のない虚妄が吹き飛ぶくらい影山拓也さんは私の理想のアイドルだった。
影山拓也になりたいと思った。
これは影山拓也転生夢主愛され総受け夢小説ではない。
ガチで影山拓也というアイドルになりたいと思った。

頭のおかしいオタクの妄言だが、私が影山拓也なのかもしれない。

影山拓也とファンの間には信頼から成り立っている関係も多いかと思う。
私もその一人だ。
この歳になって推しに対して意外性を求めなくなった。
できるだけ見た目に伴った中身で居て欲しい。でないと良くも悪くも疲れてしまうからだ。
これも大人になったということだろうか、太陽のような不変性とパフォーマンスの安定感が何よりも心惹かれる特記事項になっていた。
何も影山拓也さんに意外性がないという話ではない。太陽のような存在が作り出す“影”を垣間見てしまったような妖艶なパフォーマンスは至極魅力的だ。

常日頃から、影山拓也さんに対して「テーマパークダンサー」だの「おはスタレギュラー」だの言ってる私だが、理想のアイドル像の一つとして“老若男女に愛される存在”になって欲しいと思っている。
いや多分もう愛されてはいる。だがもっとだ。
あの屈託のない笑顔でお茶の間を虜にして欲しい。

あわよくばドラえもん放映中のCMに出て欲しい。戦隊モノの赤レンジャーになってほしいし、動物番組のレギュラーで雛壇に座ってほしい。知育系の番組で少しトンチンカンな発言をする若手ポジであって欲しい。

何の努力もせず、毎日の労働にヒィヒィ言わされ、部屋の掃除もろくに出来ない女は今からお茶の間のアイドルになれっこない。
だからその夢を勝手に影山拓也さんに託している。
いつか影山拓也さんが天てれ団長になったら、地方イベ全通謎財源ババアになりたい。
ファンとして影山拓也というアイドルに賭けた。

”絶対的なアイドル様”になって欲しいのだ。


これは私個人の話だが、前述した信頼の上にうっすらとした恋慕めいた感情が乗っている。
隣にいて欲しいのに遠い存在。直接想いを伝えられないもどかしく歯痒い距離。絶対に崩れることのない偶像と信者の関係性。
アイドルファンの多くが当てはまる事象ではあるが、そのすべてが思考を溶かすには十分だ。

クッソ〜〜〜…次元が違ければ彼氏だ旦那だ好き勝手言えたのにな。
ったく、乙女ゲーのスチルみてぇな顔しやがって……好きになっちまっただろ…

とは言ったものの、私は影山拓也さんが三次元のアイドルだから好きなのだと思う。ルックスやパフォーマンスを武器に愛を売る人だから好きなのだ。
それでいて、できれば自分に矢印は向いてほしくない。欲を言えば他人に向いた矢印を側から見て苦しくなりたい。

私は生粋のNTR厨だ。

自分には見せない顔を側から見たい。私にとって苦しさは愛おしさだ。我ながらアイドルファンに向いてる癖をしていると思う。
そもそも他人から与えられたNTRは旨味が少ない。
自分から傷付くことを選びたい。なんてエゴイズムだろう。
それもあって、影山拓也さんに関するツイートをほとんどインプットしないことにした。
NTR厨は幸せになれない。遅かれ早かれ破滅に向かうだけだ。
他から発せられた影山拓也情報をインプットしないことで、アイドルファンとして延命しているのだ。

このご時世、Twitterで何かに乗じて変なタグができるのが嫌いだ。
クソダリィからだ。
もっと言えばファンとして参加しなければいけないのか?という空気感が嫌だ。
それに愛は大きさじゃない。ましてや比べるものでもない。様々な形の愛があって当然で、その全てが美しい。
結局のところ変なタグへの参加も不参加もどちらも悪ではないし、個人の自由だ。
それでもこのブログを読んでくれた貴方がもしそうなのであれば、出来るだけマイナスな言葉で不安を扇動することは控えて欲しい。
誰も幸せにならないプロパガンダは何のためにあるか、今一度考えて欲しい。
言論の自由と言われちゃ終いだが、そういうのは鍵垢でやれ。不特定多数に見える所でやるな。

そしてそれに傷付いてる貴方は、事実と憶測を同じ鍋で煮ることは辞めよう。
これはNTRではないから傷付く必要はない。自己責任で情報の取捨選択をしてほしい。それが出来ないのなら貴方はきっとインターネットに向いていないかもしれない。
私は本人から発信されたもの以外は信じないし、特段興味もない。
私は偶像の信者であり、アイドルのファンだからだ。


彼らがジャニーズでの活動を終えた今、ふと考えることがある。
私達ファンの応援は、本当にアイドルの活動の糧になっているのだろうか。
同時に、自分なりの一生懸命はきっとどこにも足りなかったとも思う。
それでも人を愛することを生業とした彼らからは、両手から溢れるほどたくさんの愛を貰った。
ジャニーズとしてデビューして欲しいという大きな夢はもう二度と叶うことはない。
IMPACTorsと呼ぶことも、PINKyを名乗ることも、大切なオリ曲を聴くことも、この先一度もありはしない。
それでも彼らの未来が輝かしくあることを信じて待っているファンが世界中にいるのだ。

どうか貴方の進む道に幸多からんことを。
草々


車内の星空が薄明に変わる頃、目覚ましかわりの車内灯が点いた。
バスのエンジンが切られると、ネックピローの潰れる音が聞こえ始めた。
タイトなスニーカーに足を捩じ込んでバスを降りる。
そう、令和のBoAとは私のこと。

ただいま、東京は雨。




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