記念撮影に混じる見知らぬ人

※怖い話が苦手な方はご遠慮ください

こんな夢をみた。

とこかの観光地でわたしは小さな土産物屋の店主をしているようだ。店の前で団体客に記念撮影を頼まれている。

年齢も性別も服装もバラバラの十数人のグループ。普段着の若者、お洒落した女性、アウトドア系のおじさん、ツーリング系の男女。その中にうちの常連さんも混じっている。

渡されたスマホの画面をみて全員が入っているか確認。一番左端の人が見切れている気がして、目視で全体を見直す。

この画角で取れば全員が入るなと確認して、スマホの画面をみる。また左端の人が見切れている。スーツ姿の男性が右半身しか入っていない。そして、なんだかその人の姿だけ解像度が悪いことに気がつく。

驚いて目視でみると、左端にスーツ姿の男性などいない。みんなは微動だにせず笑顔でこっちを見ている。

またスマホを構えて液晶画面をみる。やはりスーツ姿の男性が左端に見切れている。ゆっくりとスマホの画面を左に振ると、その男性の全身が映る。解像度が悪くて顔はよくわからない。

再びスマホを外して目視でみるとやはり誰もいない。わたしは怖くなり慌ててスマホを構えてシャッターボタンを連射する。動揺して画面は斜めに傾き、手が震えて最後には男性のアップの顔が撮影される。そこでもやはり顔はぼやけている。

わたしは引きつった顔でスマホを返す。団体客の人たちはそれぞれお礼を言って去っていった。

ひとり残ったうちの常連さんがわたしに話しかける。

「この前、救急車を呼んだ人は無事だったかなあ」 

わたしは思いだす。先日、ここでスーツ姿の男性が苦しみのたうち回っていて、わたしが救急車を呼んだのだと。

「大丈夫じゃなかったかも」わたしがそう言うと常連さんは不思議そうな表情でわたしをみていた。



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