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【映画】『アメリカン・ヒーロー』無知性ヒーロー誕生

(これまでのあらすじ)
ニューオリンズの名物おじさんメルヴィンは自堕落な生活に溺れ、別れた妻に幼い息子レックスの親権を取られても生活を変えられないようなダメおやじなんだけど実は超能力をもったスーパーおじさんなんだ。でも、このおじさんは超能力を特に悪用したり有効活用したりしないただの名物スーパーくそオヤジだから特に注目を浴びたりすることもなく平穏に堕落しているだけなんだけど、そんな彼が初めて自分のため、家族のために能力を行使しようとする。これは事件だぞ!

「アメリカン・ヒーロー」WOWOWより


【超能力者名鑑#001】

メルヴィン
超能力:サイコキネシス+超人的な健康体

破壊力:A (スクラップ車両をねじ切り上空まで放り投げる)
スピード:B (放たれた銃弾を静止させる程度には早い)
持続力:B (隣室のテーブルセットを浮かせながらピアノを弾き続けるくらいの持続力がある)
射程距離:B (約20m強。アパートの地上から3階~4階までの射程がある。車両を放り投げた場合の有効射程はさらに伸びるが飛ばした後のコントロールはできない)
精密性:C (素手よりやや劣る。スクラップ車両の再組み立てはできるがコーヒーを丁寧に注がせるには不安がある。遠隔ペッティングも可能
成長力:C (ほぼ完成している。本人が必要としていないため出力を抑えている)

ほぼ「ゼルダBoW」のマグネキャッチ能力を有していると考えてよい。持ち上げた物体の慣性モーメントや位置エネルギーがそのまま破壊力に直結する。金属を対象とする場面が多いが金属以外の対象にも有効で不可視の指やモーメントを生み出すと考えてよい。たぶん、本気になれば自治体が浮き上がるし太陽光線をサイコ握力で収束したりできるだろう。

ニンジャスレイヤーとの親和性

彼はニンジャスレイヤーで言えば、タナカ・ニンジャ・クランの高位ソウルを宿している。精度と強度とリスクを高レベルで兼ね備えておりアンブッシュの銃弾を静止させるなどグレーター級の力をもっているようだ。しかし、彼はニンジャ性に飲まれておらず善人でも悪人でもないただの不良ガイジンだ。しかし、彼は離婚した家族を守るために初めてニンジャソウルの力を利己的に行使しようとする。そこへ赤黒い影が現れ……。

なんだか第三部のサブストーリー(ネオサイタマ・アウトロウズ)に居そうだ。レオパルドのデスハイクやデモンハンドのネーミングの由来など「それしか知らないからそう生きるしかなかった」という寂寥感を感じてしまう。

超能力者は不幸になるなんて誰が決めた

(トークから再録編集)
『アメリカン・ヒーロー』観ました。育ちが悪く学も親権も健康保険もないおっさんは実は念動力を操るヒーローだったのだ! とでもいう映画になるのかと思いきや、おっさんはそれを有効活用する知恵もなくメイクマネーもフェイムもない。ハードコア・ヘンリーのあいつと同じことができるのに悪落ちもしない。すごい精神性の持ち主だ。(あるいは無知性ゆえに考えたこともないだけかもしれない)

超能力市民モノだと傑作『クロニクル』が筆頭にあがりますが、あいつらは「頭が良い+若者パワー」なので明日なき暴走の果てにしんでしまった。失敗したほうの『ファンタスティック・フォー』では「頭がよい+学者+監督がなんか」なのでしんでしまった。現代社会では無知能で害意がない方が生き延びやすいのだろうか。なんだか世知辛い。

比較していこう

この作品単品だと盛り上がりの少ない不謹慎コメディに過ぎないんだけど、他作品(特に超能力を得てメイクミラクルするやつ)と比較するとすっごい味が出てくるね。彼は身の丈の範囲でモテたいとか儲けたいとか考える程度で「世界を変えてやろう」とか「戦争とはマグロとは……」とか「やはり人類は滅ぼさねばならぬ」とかの身の丈を超えた深い悩みとは無縁な無知性ヒーローであり「映画的につまらないヤツ」だ。

けれど、我々は「ニンジャ(超能力者)になっても以前と変わらない精神性を保つ」ことのすごさを知っているので逆にすごい。

我々は超能力を得ても精神的に破たんをしない(※生活は破たんしきっています)ことを称え、もう少しメルヴィンを応援していくべきではないだろうか。お前はすごい、お前はけっこうすごいんだよ! と。

というか、彼の超能力を知っていても祭り上げたりカルト化したりしない、ニューオリンズの皆さんの精神的メンタル健全性がすごい。サミュLとかがスカウトに来ないやさしいせかい。あるいは近代SNS世界における奇跡の矮小化か。(神の大安売り)

本作はドキュメンタリーですというスタンス

本作はあくまで「ドキュメンタリーの撮影です」という体で進行していく。なので、映画的に面白い場面がなくてもよいし、むしろ起こらないほうが普通だという保険が掛けてある。クレバーですね。本作の鑑賞レビューで「盛り上がりに欠ける」という指摘が見られますが、まさしくごもっとも。でも、それだからこそ平穏が保たれているのでしょう。

Twitter版の感想も載せます。

観た直後に書いてるから温度差があるかも。

おしまい。

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