【UO小説】『ヒリュウとマロ』

この作品は #逆噴射プラクティス を活用した #UltimaOnline #小説 です。

(これまでのあらすじ)
さすらいの牧羊家 オモチ・ザ・シェパードは、ダブル元服記念で徳之島を冒険観光をするダイミョの護衛・案内役として雇われた。同行者はニンジャのジンゴロウ、サムライのセンエモン。それと家来が三人と荷運びのラマ。全員死んだ。オモチはダイミョの護衛のため恐怖の捕食者の眼前に立ちはだかる。

ヒリュウとマロ

#1

「ハァーッハァーッ!」私は息を切らせて巨木の影に飛び込んだ。そこには胸から上を食いちぎられたジンゴロウの死体がある。それをまさぐり腰のベルトごと鋼鉄の星、手裏剣を引き寄せた。武器も戦闘力ももたない私がヤツと戦える武器はこれしかない。気軽な「観光旅行」って聞いていたのにこんなことになるなんて!!

(だいじょぶだいじょぶ、マロはブシドーの達人だしタツジンの護衛もおる。旅に明るいお主には案内だけを頼みたい……あと酌もな、ぐふふふ)

「グエー!」近くで悲鳴が聞こえた。今度は荷運びのラマがヤツに殺された。ヤツはラマ肉に興味を示さず新たな標的を探して徘徊する。この森で人間の味を覚えた捕食者からは逃れることはできない。背中を向けて逃げ出せば追いつかれて死ぬ。つまりヤツを狩らなくては生き残れない。

「アナヤ!」ダイミョ(大名:徳之島の領主階級)が恐怖に耐えきれず悲鳴を上げて逃げまどい始めた。あろうことか木陰の私を発見してこっちに駆け寄ってくる。(おまえ!! マロを助けるのじゃ!) 

なんてこと!? あのダイミョは無意識に戦場をかき乱すタイプだ。案の定ヤツが牛車めいた巨体を揺らしてダイミョを追いかけ始めた。嗚呼!!あんなマロ野郎でも雇い主だから助けなくてはいけない。私は手裏剣を構えてダイミョと入れ替わる形でヤツの前に立ちはだかった。ヒリュウ、この森最大の捕食者の眼前に。

ヤツは眼前の獲物が入れ替わったことで私に興味を移したらしい。逃げるものよりは立ち向かうもの。ジンゴロウのような強敵との戦いを求める貪欲な狩猟本能がターゲットを変更した。私はジンゴロウの手裏剣ベルトをたすき掛けにして片手に鋼鉄の星を構え、もう一方の手には、牧羊専用のベーシックな杖を構える。

「私が相手だバケモノ!!」湾曲した杖を振り回して威嚇。対象との距離を測り手裏剣投擲のチャンスを探る。ヤツは一瞬だけ警戒を示したものの私の杖術が素人のそれだと看破したようで口角を上げ「Grrr」と喉を鳴らした。嗤っているのだ。 「人間をなめるな!」 私は手裏剣を投擲した!

#2

「人間をなめるな!」私が投擲した手裏剣はなよなよした放物線を描きヤツに命中した。所詮、素人の真似事だ。薄皮一枚を切り裂いたに過ぎない。 当然、ヤツは怒り狂う。完全に見下していた弱々しい肉の少ない女に傷をつけられたのだ。痛みはない。傷もすぐにふさがるだろう。だが、この森の王者としての威厳に傷をつけたままではいられない。ヤツは突進した。

私はヤツの鼻先に牧羊杖を突き付ける。当てる必要はない。けん制の、注意をそらすための布石だ。鼻先の杖に食らいつこうとしてヤツは突進速度を速める。 GRAB! ヤツの狙いが逸れ、後方の灌木をかじりとった。

 「ハァーッハァーッ!」間一髪だ。何度も繰り返せる技ではない。ヤツはゆっくりと身体をねじりカタナのような眼光で私を射すくめた。(来るっ!)

次の瞬間、ヤツは跳んだ! ヒリュウ【飛竜】の由来通り、その巨体からは想像ができない跳躍から繰り出す爪撃だ。 ヤツはこの得意技で騎乗のサムライを落馬させ何もさせずに食い殺した。

しかし、これは想定済みだ。私は身をかがめ杖を地面に突き立てシェルターとする。ヤツの巨体は杖を支点に向きを変え、GRAB! ダイミョが身を隠す巨木をかじりとった。「アナヤ!」ダイミョが悲鳴を上げるがヤツは見向きもせず、その視線は不可思議な技を使う牧羊家に向けられている。

(マロを殺す気かえ!)ダイミョが気色ばむが、この場で彼を守れるのは牧羊家一人しか残っていないことに気が付き、言葉を飲み込む。実際、牧羊家はよくしのいでいる。サムライを、ニンジャをも一撃で殺した飛竜の致命的な噛みつきを間一髪で回避し続けている。しかし、回避だけでは飛竜を狩ることはできない。次第に防御は破られ……「アッ」ついに飛竜の爪が彼女を捕らえた。(アブナイッ!)

#3

(シマッタ!)一瞬の油断! 私は飛竜の爪によって拘束された。王者の威厳を傷つけられたヤツは私をできるだけ残虐にいたぶって血肉を森中にまき散らすつもりだ。ヤツは残虐なジュラ紀めいた大顎を最大まで開いた。

 遺伝子に刻まれた本能的な恐怖が私に絡みつき時間感覚が泥めいて鈍化。私は自身の肉体を第三者視点(クォータービュー)で見下ろしている。その時、視界の端に何かが突進してくるのが見えた。あれは……マロ?

「アイエエエエエ!!」ダイミョはボクト(木刀:刀剣を持ち込めない宮殿で使用する儀礼的な刀剣)を振りかざし飛竜へ突進した。ポクッ!ポクッ! モクギョ(木魚:徳之島のプリーストが扱う伝統的なパーカッション)を打つような奇妙な打撃音が森に響く!! 打撃は重くない、だが……とにかく耳障りだった。

「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」

「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」「アイエエエエ!!」「ポクッ!ポクッ!」

半狂乱のダイミョの乱打に音を上げたヤツが注意を逸らした。私はその隙に転がって拘束から離脱。二発目、三発目の手裏剣をヤツの背中に打ち込む!! 「ARGHHHHH!?」 ヤツはいぶかしんだ。一発目の手裏剣の傷が癒えない。それどころか傷が熱を持ちヒリュウを苛んだ。二発目、三発目の傷も同様に熱を持ち「ニンジャの毒」が"彼女"の自由を奪う。

煩わしいダイミョを振り払いヤツは私に向きなおった。「Grrrrr」その顔にもはや笑みはない。一人と一頭は頬が触れ合うような距離で睨み合った。次の行動でどちらかが倒れる。決着の刻だ。私はすでに限界を超えていた。朦朧とした意識の中、一瞬気を失い、手放した牧羊杖が地面に落ちる音と同時にヤツは跳躍した。

#4

飛竜にとって他の竜族と異なる最大の特徴は跳躍力である。そしてもう一つ、密集した森林での狩猟に適した驚くほど静かな滑空飛行能力を持つ。ヤツは後方へ跳び、大木を蹴ってトライアングルリープ(三角跳び:急激な軌道変更を伴い襲い掛かるカラテ奥義)めいた急角度の爪を放つ! その致命必死の軌道に立ちはだかったのはダイミョであった。「キエエエエ!!」決断的なシャウトと同時にボクトを構え、飛竜の爪撃を後方へ受け流した。飛竜は巨木に激突、今度は幹をかじりとるほどの体力は残っておらず、横倒しになった。

私は寸断された意識の中で見た光景に目をみはった。あのダイミョが私の前に立ちふさがり飛竜をブシドー(武士道:サムライとしての技術や教養を修めるための学問)の奥義で飛竜の爪を打ち払ったのだ。「アッパレであった!」ダイミョは私を振り返り涙ぐんだ顔のまま破顔した。

−−−−−−−−−−−−−−−−

私たちは危険な徳之島の森から生還するため最低限の遺品のみを持ち帰ることにした。ジンゴロウの鉄爪、センエモンのダイショウ(大小:一対の刀、サムライのステータスシンボル)、家来たちのドッグタグ等を拾い集め帰路を急ぐ。ダイミョは口を固く結び何かに耐えているようだった。出発前に文句を言っていた荷担ぎですら積極的に行い、足元の悪い場所では私を支えるほど献身的だった。やや展望が開ける。森林地帯の出口は近い。その時「コココココ」飛竜の鳴き声が背後から聞こえてきた。

#5 エピローグ

振り返るとそこに飛竜の幼生体がいた。「ココココ」まだ幼く母親を探すような仕草を見せる。我々が浴びた母親の"におい"を追跡して追ってきたのだろう。私は牧羊杖を掲げ、幼生体を森へ返すように誘導しようとするが、それをダイミョが制止した。

「ここはヤツの縄張りから遠く外れておる。森へ返しても他のオスに食われるだけじゃ。よってマロが都へ連れ帰り飼いならす」
徳之島のブショー(武将:指揮官級グレーター武士)は元服と同時に飛竜の幼生を飼いならし長じてからは戦場を共に駆けるという風習があった。その風習はいまや廃れ形式的なものになっており、今回の冒険観光もそもそもは「ダブル元服記念に危険な飛竜の森へ行ってみた」というイベント的な動機から実行されたものだ。

「オヌシの母親はマロらが討った。スマヌ」「ココココ」
「野生の修正故、我々に遺恨はないがオヌシが成長し気に食わない場合はマロを食えばよい」「ココココ?」

ダイミョは私に頭を下げ「牧羊家殿、都まで頼む」と畏まった。
私は頷き、牧羊杖で幼飛竜を導き始めた。

・・・All Follow Me All Follow Me 。

都への路はまだ遠いが、ダイミョの足取りに迷いはなかった。

『ヒリュウとマロ』 終わり。


【解説】
徳之島:Ultima Onlineに存在する東アジア風世界観の破片世界。独自の文化「ニンジャ」「サムライ」「ヨウカイ」が暮らす。
手裏剣:ベルトに収められた手裏剣の命中率と毒レベルはそれを仕込んだ人間の技能に依存する。(つまり使用者のスキルは問わない)
飛竜:体長3m程度の騎乗に適した竜族。火を吐かずその生態は恐竜に近い。
幼飛竜:乗りこなすには高度な調教スキルを必要とするが例外的にブシドー達人であれば心通わせ乗りこなすことができる。
武士道:達人級の使い手は集中力を高めることによって一瞬だけ呪文も含めたあらゆる攻撃をそらすことができる奥義を操る。
牧羊術:動物やモンスターの進行方向を操る技術。戦闘力はゼロだが高次元能力者はモンスターとの距離をコントロールし接触を避けることができる。

◆CAUTION◆
この作品には専門家が出演しています。作中で描写された「牧羊術+手裏剣術」は実際にゲーム内で行える技術ですが危険ですので決して真似をしないでください。

なお、この小説はUOゲーム内での閲覧に最適化された編集版が存在します。おいでやす、ウルティマオンラインの世界へ。


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お望月さん

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