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『恋する江ノ島』(最終回)

 稲村ケ崎の灰色の砂浜に大仏と観音が仲良く埋もれている。江ノ島全島を巻き込んだ恋のから騒ぎは「大規模なマクリダシが発生し江ノ島が消失した」という政府発表で落着し世間からも次第に忘れ去られていった。

 騒動後、江ノ島が消失したことで太平洋の波濤が鎌倉の海岸線を直撃するようになった。欠け波によって数年後に江ノ電の線路は崩落する。新たな路線が必要になる等と長谷と話しながらいつまでも海岸線を歩いた。

 恋する惑星ヤドカリ、エスカーとカンノンとブッダの三角関係は今も海底で続いている。彼女たちはいずれハワイ沖にへ到達し、10年後に真珠湾に江ノ島シーキャンドルが屹立するというのが長谷の予測だ。

 夕日に照らされた長谷は白衣をなびかせ遥か遠いハワイ沖を見つめている。俺達は強く手を結び失った仲間たちに想いを馳せた。

──20年後。

俺は潜望鏡を上げ叫ぶ。

「前方シーキャンドル二基!」
「そして小型がもう一基!」

おわり

#結末だけ400文字  

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