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山登りことはじめ

そこに山があっても登らない側の人間であったはずでした。
であったはずなのに。
きっかけは昨年末、(なんかもう疲れたな・・・狸に戻って山に帰りたいな・・・やめるか人間を・・・)などと思いながら手に取った一冊の雑誌『山と渓谷』でした。
ぱっと開いた頁に広がっていたのは美しいアラスカの写真。
星野道夫の『旅をする木』を愛するわたしは、その写真に釘付けになりました。
そのままレジへ直行、『山と渓谷』を購入し帰宅してぱらぱらとめくり、しかし特に山へ登ろうという気持ちが湧くこともなく2018年は静かに幕を閉じました。

明けて2019年、その衝動はじわじわとやってきました。
箱根駅伝の山登りに脳のどこかが刺激されたのか、はたまた『山と渓谷』が時間をおいて沁みてきたのかなんなのか、直接の原因はよく分からぬまま登山欲がむくむくと湧いてきたのです。
となるとまず必要なのは靴。
これまでまるでご縁のなかった登山靴ではありますが、実は心あたりがひとつありました。
それは巣鴨に構える手作り靴のお店、ゴロー。
わたくし大学卒業後しばらく靴作りをかじっていたことがあり、「登山」からではなく「手作り靴」からのアプローチでゴローというお店の存在を知っていたのです。
知ってはいたけれど、購入するつもりもないのになかなか入れないよなー・・・と、興味を持ちつつも足を運ぶことはありませんでした。
しかし時は来た。今こそゴローへ。
三が日も明けて間もない週末、意気揚々と巣鴨へ向かいました。
それほど広くはない店内、その二階にはぐるりと様々な種類・大きさの靴が並べられています。
先客のフィッティングの様子をチラ見しつつ、ずらりと並んだ靴を手に取ってみたりしつつ、一角に置かれた登山関連の本たちをめくりつつ待っているといよいよわたしの番です。
てきぱき働く女性の店員さんに
・まったくの初心者であること
・これから色んな山へ行ってみたいこと
・いずれはちょっと高い山にも登ってみたいこと
をお伝えすると
「ならブーティエルかブーティエムですね!」
そのふたつはどう違うんですか?
「デザインが違います」
あ、それだけか。
ブーティエルはわたしにはいささか可愛すぎるように感じ、見た目にゴツいブーティエムを選びました。
丁寧に足を計測して頂き、サイズを決めて、さらには登山用の靴下をお借りして試し履き。
つーか本題の靴に足を入れる前にな、この靴下がまたすげえ。
FITSというその靴下、履いた瞬間grip and hold!!!感が半端ありません。こりゃいいや。
靴下に感動しつつ、
①適当と思われるサイズ
②5mm大きいサイズ
③5mm小さいサイズ
をそれぞれ履いて歩いて階段上り下りして、最終的に「これ!」と決めて購入。
登山靴は足の実寸から+7mmを推奨しているそうで、普段履いている靴よりも少し大きいものになります。
そのため、納得できるように大小のサイズも併せて試し履きして貰うようにしているんだとか。
取り立てて特徴のない形をしているわたしの足には、セミオーダーするまでもなく既に出来上がっている靴が良く合い、靴下・防水ワックスと一緒にその日のうちに持ち帰ることが出来ました。
教えて頂いた通りワックスを塗り込んで乾かし、ブラシで磨いて準備完了。
あとは履いて出掛けるのみです。

そして待ち望んだ週末、鎌倉は天園ハイキングコースで靴を慣らします。
本当は奥多摩の手前くらいに行こうかと考えていましたが、寝坊したので住まいから比較的アクセスしやすい鎌倉に変更しました。
北鎌倉で横須賀線を降り、静かな駅前から通り沿いに歩くこと15分ほど。
立派な門構えの建長寺に到着です。

広々とした境内を抜け、仏様に手を合わせたら一路半僧坊へ。
山中も上り下りはありましたが、いちばんキツかったのはこの半僧坊前後の階段だったように思います。
息を切らしつつも山の中を歩くのはとても楽しく、街のすぐ側であることを忘れてしまうような束の間の時間を満喫することができました。

瑞泉寺付近から下った道沿いにひっそりと開いていた小さなパン屋さんに立ち寄り、さくさくのクロワッサンを頬張りながら鎌倉を後にしたのでした。

実際に歩いてみて靴は何ら問題なかったし、少し距離を伸ばすか・・・ということでお次は高水三山を歩く予定でした。
がしかしまたしても寝坊したため、低山歩き2度目のこの日はちょっとだけ手前の青梅丘陵にコース変更です。
新宿から中央線に揺られること一時間以上、ひと気のあまりない軍畑駅からスタート。
道なりに車道を歩くこと30分ほど、途中『国立奥多摩美術館』という名を冠した謎の施設を横目に(ぜったい国立じゃないだろ・・・)などと思いながら進んで行けば、ハイキングコースの入口に到着です。
あの美術館この間は残念ながら閉まっていたけれど、是非に開館している時を狙って訪れてみたいものです。
この青梅丘陵はなにが良いかって青梅まで歩きとおすことも出来れば、途中駅までの少し短い距離を歩くことも出来るということ。
立ち並ぶ針葉樹の間から吹き抜ける風を頬に受ける瞬間、幸せと言わずしてなんと言えよう。
鎌倉でも感じたことですが、「ハイキングコース」という名の割にはまあまあアップダウンもあり、日頃運動していない人間にはなかなか登り甲斐のある道でした。

そして3度目の低山歩きは、母に誘われ筑波山へ。
筑波山へは何度となく通い、全てのコースを歩いたことのある母お勧めの「白雲橋コース」、筑波山神社からスタート。
ロープウェイやケーブルカーという交通手段も備えられている筑波山、ワンピースにハイヒールのような格好で出掛けることも可能ですが、我々はがっつり歩く所存ですので登山靴と重ね着で臨みます。
歩き始めからけっこうな登りが続き、すぐ近くを歩いていた若い一団のなか初心者と思しき女性の、悲鳴のような「けっこうな登り・・・」「段差~・・・!!」という声が響き渡ります。
めっちゃ理解できるよその気持ち。わたしもツラい。がんばろうな!などと心の中で彼女に呼びかけたりしつつ、休憩を挟みながら歩き、女体山登頂。
当初はそこから少し戻った後「おたつ石コース」で下山予定でしたが、女体山頂すぐ手前の岩場が凍っていたこともあり下るのが恐ろしかったため我儘を言ってコース変更、男体山まで足を伸ばして登頂してから御幸ヶ原コースを通りスタート地点の筑波山神社へ戻ってゴールと相成りました。

さてお次はどこへ行こうかな
フンフンフーン♪

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