ヨーダの物語 71
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗する。そしてレイゴウのもとで修行をし、ダークサイドに堕ちてしまう。ジェダイ・マスターふたりを殺し、ヨーダにも圧倒的に勝つ。
ヨーダは、師匠となる(かもしれない)グラドゥの住む星へ到着した!
岩の地面を疾走し、岩山をいくつか越えると、突如として大きな森が見えた。見渡すかぎりの岩のなかで、森の緑が大海にポツンと浮かぶ島のように思えた。もっとも、ヨーダは海というものをアカデミーの教科書でしか見たことはないが。
森には林道のようなものがあり、森からひとりの人間がでてきたのが遠目にわかった。ヨーダはホバーボートの速度をおとし、スコープをのぞいた。腰を曲げ、杖をついていることから老人だと分かった。(まさかあの人がジェダイ・マスターのグラドゥ?)その老人は巨大な頭で黒い帽子を被り、長い白髪を束ねて帽子に入れていた。籠を背負い、籠からは山菜らしきものが見えた。
ヨーダは老人を驚かせないように少し離れたところでホバーボートを降り、歩いて近づいくと、あることに気がついた。老人は腰が曲がり杖をついているが、体よりだいぶ前方についていて、体を支えるためのものではないようだった。つまり老人は目が見えないようだった。その証拠に、ヨーダが近づいても老人は顔を上げなかった。
「あのう、突然すみません。人を探しているのですが・・」
ヨーダは恐る恐る声をかけた。目の見えない人と接するのは初めてだった。話しかけると老人はピタッと足を止めて顔を上げた。鼻が鷲鼻で高く、普通の人間と比べるとかなり顔が大きく長かった。しわだらけで、眉が長く、分厚いまぶたは閉じたままだ。耳は大きく、耳たぶが肩まで垂れ下がっている。老人はまた歩き出した。
「あのう、すみません」
老人はまた止まったがすぐに歩き出した。どうやら耳が遠いらしい。
「あの!突然すみません!人を探しています!」
今度は聞こえるように声を張り上げた。また老人は止まった。
「あんだって?」
ヨーダは老人の声を聞いて、おばあさんであることがようやくわかった。
「人を探しています!」
「人を・・探していると?」
「はい、グラドゥというジェダイ・マスターなのですが・・。あ、僕はヨーダと言います!ジャクーという星から来ました!」
「・・グラノーラっていう人は知らんなあ」
老人はまた歩き出した。
「いえ、グラドゥ!です」
ヨーダは老人の耳の近くで叫んだ。
「グラドゥ・・?グラドゥがどうしたって?」
「グラドゥに会いたいんです!知ってますか?」
「・・ああ、グラドゥなら知っているよ」
老人は杖で地面をコツコツして歩きながら応えた。
「ほんとですか?どこにいますか?」
「あたしの家の方だよ」
「ぜひ会わせてください!」
ヨーダは目を輝かせた。耳が遠くて理解に時間がかかるが、グラドゥを知っている人に会うことができたのだ。
「一緒に行くかい?年寄りにはこれは重いから、代わりに背負ってくれるかい?」
「もちろんです!」
おばあさんは、背負っている山菜の詰まった籠をヨーダに渡した。ヨーダはおばあさんより背が低いので、背負うと籠の底が地面ギリギリの状態だった。
老人は杖を前について歩き出した。長年の行き来で慣れているのだろう、地面の大小ある石や、岩のゴツゴツした部分を器用によけながら歩いていた。
QQ11も、目の見えないひとを見るのが初めてだったらしく、四足でおばあさんの周りをウロチョロし、おばあさんを観察していた。
10分ほど歩いたところで、おばあさんとヨーダを、遠くの岩山からライフルブラスターのスコープ越しに見ている二人組がいた。かなり遠くなのでヨーダも気づいていない。
「おい、あのばあさんか?賞金がかかってるのは」
「間違いないな。あの森の昔からの持ち主で、森にある『資源』を高い金積んでも譲らないらしい」
もうひとりの男が、老人の顔のホログラムと見比べながら言った。
「資源てなんだ?」
「おまえ、それを知らないでここまで来たのか」
「おれは賞金稼ぎだ、細かいことは知らねえ。ただ賞金首を差し出して金がもらえりゃそれでいい」
「おめでたい奴だなおまえは。銀河で最も高い額で取引されるスパイスの原料が、あの森でわんさか採れるらしいぜ。しかしあのばあさん、昔から代々伝わる自分の土地だつって、譲らないんだと」
「そんなもん、ばあさんが寝ている間に森に入って盗めばいいだろ?」
「そんなこと誰でも考えるよ。盗賊じゃラチがあかなくて、以前、夜中に軍隊一個師団が入って『資源』を探したが、翌朝にはみんな森のそとで倒れた状態で発見されたらしい。しかも、みんな誰に襲われたか記憶がまるっと無いんだと。みんな恐れてそれから誰も近づかなくなった」
「何が起きたんだ?」
「誰も知らない。衛星の映像で見ても、森の木で隠れて何が起きてたかわからない。おそらく、とんでもなく強い護衛を雇っているんじゃないかと言われてる」
「だから森から離れたあのばあさんをここから狙撃すると?」
「その通り。ばあさんが死ねばあの森は誰のものでもなくなる。護衛のことは、お偉いさんがゆっくり考えるだろう。金で釣るとかな」
「無防備な年寄りを暗殺するのは気が進まねえが、金のためならしょうがねえな・・」
「やべえ、どんどん遠ざかっていくぞ!」
「おい、ばあさんの横に小さいガキがいるな。そんな情報あったか?」
「いや、知らねえ。いいや、どっちも殺っちまおう。まずはばあさんが最優先だ、それからガキな。目撃者は生かしておけねえ」
ふたりのライフルブラスターの照準は、おばあさんに合わせられた。
ヨーダは、どこかから発せられる殺気にようやく気づいたが、場所が特定できず、まわりをキョロキョロした。老人はそんなことも知らずにトボトボと歩き続けた。ヨーダがちょうど賞金稼ぎふたりに背を向けた瞬間に、ライフルブラスターから計四発の青い光線が発射され、おばあさんの頭と心臓を貫かんとする一瞬、おばあさんは杖を持たない左手をすっと上げた。すると青い光線四本はおばあさんの体の前でUターンし、賞金稼ぎふたりのスコープを通って頭を貫いた。
(ヨーダの物語 72へつづく)