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ヨーダの物語 1

遠い遠い昔、はるかかなたの銀河系で・・

「ヨーダ・・、ヨーダ・・」
 とても懐かしい、包みこむようなやさしい声がきこえる。
 この声には聞き覚えがある。この声は母さんの声だ。
 ヨーダは目を開けようとするが、すぐ夢に引き戻されてしまう。
夢の中のヨーダの手はしわだらけで、右手には緑色に光るライトセーバーを持っていて、敵と思われる者からのミサイルを跳躍しながらかわしている。
 (そうか、おれは将来、しわだらけの手でライトセーバーを持ち、戦争に参加することになるのか。目の高さが今と大して変わらない感じがするから、どうやらおれの背はこれ以上伸びないらしい)
 ヨーダは、ライトセーバーを1本しか持っていないことに、なぜか違和感を覚えた。
 夢の場面は唐突に変わる。とてつもなく広い球状の空間にヨーダはいて、遠くに見えるわん曲した壁には、無数の円盤がしきつめられている。ヨーダはその円盤のひとつに乗っている。やはり手はしわだらけだ。向こうの方から10個以上の円盤が、何者かによって”フォース”を使って投げつけられる。そのフォースの主は、黒いローブに身を包み、わずかに見える眉間に深いしわが刻み込まれている、顔の蒼白い老人だ。その老人には、ものすごく大きく、そして深いダークサイドのエネルギーを感じる。
 再び夢の場面は変わる。今度は、じめじめして鬱蒼とした森のなかに池が見える。その池のほとりの大きな岩の上に座って星を眺め、何者かの到着を待つ自分がいる。自分の足を見ると、やはりしわだらけで潤いを欠いている。
 来るかもしれないが、来ないかもしれない、と思いつつ穏やかな気持ちで星の外からの来訪者を待っている。ヨーダはもの心ついてから砂に包まれた自分の星を一度も出たことがないのに、そのじめじめした星をとても懐かしく感じている。
 ずっとここにいたい、という思いとは逆に、夢の場面は次々と切り替わってゆく。
 ふたたび戦争に戻る。自分は無数の白づくめの兵士たちに指示を出していて、かれらはヨーダの指示どおりに忠実に動いていたが、突然自分に銃口を向け攻撃してくる。なぜ、と思う間もなく攻撃を跳んでかわし、兵士たちを倒す。
 夢の場面は、またじめじめした懐かしい星に戻る。自分は金髪の青年の背中にのって会話をしている。
 自分の声は、聞いたこともないようなおじいさんの声になっている。手には木の杖を持ち、若者のゆたかな金髪の生えた頭を何度もたたいている。その若者は、前を向いて必死になって走っていて顔はよく見えない。
 会話の内容は、自分で話しながらよくわからないが、なにか説教じみたことを言っている気がする。若者の背中は大きく温かい。
 「ヨーダ・・、ヨーダ・・」
 懐かしく、やさしい声が再びきこえる。その声はだんだん深みを増し、若い声からやがて穏やかな老女の声に変わっていく。声は老いても、やさしく包みこむような性質はそのままだ。
 「ヨーダ、そろそろ起きなさい」
 少年ヨーダがゆっくりと目を開ける。いつもの見慣れた母、ロザリータの穏やかな笑顔が朝日に照らされていた。
 (2につづく)