ヨーダの物語 56
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人レイゴウと戦うが完敗し、レイゴウのもとで修行をする。
一方、ヨーダはギークの様子を見に行くと、家の前でギークとジェダイ・マスターふたりが戦っているのを発見する!
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ヨーダはテレスコープをのぞきながら再びつばをゴクリと飲みこんだ。
ギークは、白いローブの老人に見守られながらふたりのジェダイ・マスターと戦っていた。そのひとりは全指を折られた左手を袖にしまい、右手を使って必死の形相でライトセーバーを振るっていた。
もうひとりのジェダイの振りおろした青い光刃をギークは赤い光刃で受け止め、つば競り合いをしていた。相手より体は小さく細いギークは、力では劣勢に見えたが、徐々に相手を圧倒し、光刃を合わせたままジェダイが膝をついた。
赤い光刃は相手の光刃より太く、より強い光を放っているように見えた。ヨーダのテレスコープでズームすると、膝をついたジェダイの顔が青と赤の入り混じった光を反射していた。そして赤い光刃が青い光刃を切り裂き、ジェダイの肩に赤い光刃が食いこみ腹まで到達して、ジェダイは絶命した。ライトセーバーがライトセーバーを切り裂くのをヨーダは初めて見るのだった。(そんなことがありえるのか?同じライトセーバーなのに・・)
ギークはすぐにもうひとりのジェダイを振り返ると、光刃の鋭い突きが顔めがけてきたが、それを素手で受けとめた。ヨーダは自分の目が信じられず、恐怖でテレスコープを持つ手が震えるのを必死で抑えた。ジェダイもあまりの驚きに目を丸くしていた。受け止めた手の平からは火花が散っていた。ギークは光刃を受け止めたままの手の平を相手に向けると、青い光刃は屈曲し、ジェダイの喉に突き刺さって倒れた。
ギークは自分が殺したジェダイふたりをしばらく見下ろし、家の中に入っていった。老人はまだ外に立っている。
ヨーダは気がつくとホバーボートに乗り、ギークのところへ向かっていた。いまギークと戦ったら間違いなく負けるが、いまギークに会わなければ二度と会えないような気がした。ギークの家に近づくと、家の中に火が見えた。その中から荷物を肩にかけたギークが出てきた。
ヨーダはホバーボートを降り、白いローブの老人の横を走りぬけ、ギークのもとへ向かった。
「ギーク!」
ヨーダが叫ぶと、俯いていたギークは顔をあげた。いくぶん背が伸びたように見え、テレスコープですでに見ていたが、顔の左半分には銀色の鉄仮面があり不気味な印象だった。
「ヨーダ」
ギークは太陽の光にしばらく当たっていないのか、以前にも増して肌が真っ白だった。右目の下には何日も寝ていないようなくまがくっきりと彫刻されていた。
(ヨーダの物語 57へつづく)