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ヨーダの物語 45

【前回までのあらすじ】
 少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
 人間をさらって喰うと言われる元シス、ツキシマを親友ギークと共に倒したが、ギークは深い傷を負ってしまい、命はなんとか取りとめることができた・・


 ヨーダの母ロザリータは、ヨーダと遊びに行ったギークがケガをしたことを、ギークと姉のリンクに謝りにいったが、ギークは会ってくれなかった。リンクは、実はギークとヨーダが死の渓谷へ行き、元シスと戦ったことは伏せておいてくれた。ヨーダは心の底から感謝した。

 ギークは傷を負ってからジェダイ・アカデミーに来ていない。ヨーダは何度か見舞いに行ったが、リンクが言うには、今は誰にも会いたがらない、夜たまに外に出て訓練をしているとのことだった。
 顔の傷の具合を訊くと、傷痕はのこっているものの、包帯をとる許可は医師からでている。しかし、本人は姉の前でも包帯を外しておらず、顔の左半分は隠したままとのことだった。ヨーダは左眼が見えているか心配したが、包帯をとらないので姉にもわからなかった。
 ギークがアカデミーに復帰しないままパダワンになれるかヨーダは不安だったが、ギークの実力があれば大丈夫だろうと思った。また、自分で訓練を続けているとのことで少し安心した。
 ヨーダがホバーボードに乗ってギークの家をあとにするのを、ギークは窓越しに見送っていた。リンクがヨーダが来たことを伝えにギークの部屋に行くと、窓は開かれカーテンが風で揺れていた。
 ギークは外で木刀を振るっていた。それはものすごいスピードで、まるで見えない敵と必死に戦っているようだった。ギークの心の叫びがこだまして周りにきこえるような気迫だった。

 そこへ、一台のスピーダーがギークの家からかなり遠いところを通り過ぎたが止まり、方向を変えてギークの方へ向かってきた。我を忘れて木刀を振るっていたギークはしばらく気づかず、視界に入ってきてやっと気がつき、動きを止めた。
 ギークの少し離れたところでスピーダーが停止し、白いフード付きガウンを羽織った者が降りて杖をついて歩いてきた。
 見たこともない人だったのでギークは身構えた。その者は、ゆっくりと白いフードをとった。短い白髪の老人の男だった。顔は青白く、皺だらけで髪よりも長い髭をたくわえている。
 「君の剣の振るい方は、怒りにみちているね。それに哀しみも・・」
 老人は優しい口調で言った。
 「あんた誰だ?」
 ギークは息を荒げながら、端的に問うた。
 相手はギークの家を見遣ったあと、
 「君はパダワンかね?それとかなり若いからイニシエイト?ジェダイ・アカデミーには通っているのかい?」
 「おれの質問に応えてないぞ」
 ギークの呼吸は少しずつ整ってきた。
 「わしかね?わしは通りすがりのただの老人じゃよ。君のフォースがあまりに凄くて、つい立ち寄ってしまった」
 「それがどうした。おれに何か用か?あんたジェダイか?」
 「・・いや、ジェダイではない。正確には遠い昔ジェダイだったが、すでに引退し、今は骨董品屋を細々とやっている。老いた身じゃが、フォースを感じとることはできる。君のあやつるフォースは強大で、見逃すことはできなかった。君のフォースが語っている、もっと強くなりたい、と。この銀河中で最も強いジェダイになりたい、と。そんなに強くなりたいのかい?なんのために?」
 「骨董品屋かなにかはしらないが、あんたと話している暇はない。押し売りにも応じない、うちは金がないからな。帰ってくれ」
 「押し売りなんてめっそうもない。どうしてわしを帰そうとする?自分に利益をもたらさない相手だからか?もしもわしが、君にあり余るほどの利益をもたらすとしたら?」


(ヨーダの物語46  へつづく)