ヨーダの物語 50
【前回までのあらすじ】
少年ヨーダはジェダイ・アカデミーに通うジェダイ・イニシエイト。
親友ギークは、元シス・ツキシマとの戦いで顔に傷を負い、さらに謎の老人と戦うが完敗してしまう。
老人の誘いで恐れ山に行き、ギークは強くなりたい一心で老人に修行を頼む。
「あんた、シスだろ。おれはジェダイになるからあんたの弟子になるつもりはないが、強くなる方法を教えてほしい」
「授業料はいらん。この石はおぬしが見つけた、おぬしだけの石じゃ。
ひとつきかせてくれ。なぜそんなに強くなりたい?もうじゅうぶん強いじゃろう?その歳でそれほどのフォースを操れれば、数年もすれば放っておいてもわしを超えることができる。いまいるジェダイの中でも最強になれるじゃろう、地道に訓練を積めばな」
うつむいて聞いていたギークは顔をあげた。
「死の渓谷のツキシマから姉さんを守るために、おれはいま強くなりたい。友達と一緒に倒しに行ったが、奴はまだ生きている。おれはいま強くなって、やつを倒したいんだ」
「ツキシマか・・」
「やつを知っているのか?あいつもあんたもシスだからな。あいつは人間をさらって、実験に使うか食うかしている。さらわれる集落がだんだんうちに近づいてきているんだ。いつさらわれるかもわからない」
「いまおぬしは家を離れているわけだが、姉さんとやらは大丈夫なのか?」
「姉さんも訓練こそしていないが、フォースの感受性は高い。ある程度遠くに離れていても、無事でいることはわかる」
「話を戻そう。わしはツキシマを知っている。やつはかつてわしの弟子だった。やつはジェダイ・マスターをやめてからわしのところに自らの意思で弟子に入った。いま便宜的にジェダイと言ったが、わしにとってはジェダイもシスも違いはない。ただフォースに対する解釈が異なるだけじゃ」
「解釈?」
「それについては追々話すことにしよう。ツキシマはかつてわしの弟子で、不老不死を作り出す研究に取り憑かれ、ついにマスターであるわしをも実験台にしようとした。だからやつを殺そうとしたが、瀕死の状態でやつは逃げ、仮死状態で自らを冷凍保存し、時を待って復活し、ふたたび実験に没頭しているようじゃ。わしへの復讐心も忘れていないだろう」
「いまのおれではやつを倒せない。倒し方を教えてくれ」
「おぬしがツキシマに勝つにはいくつか足りないものがある。フォース以前のスピードとパワー。これらはわしが教えられることではないから、わしのペットたちが教えてくれる」
レイゴウがピウッ!と口笛を吹くと、洞窟の闇の奥から、後ろ足の一本を太い鎖でつながれた獣がでてきた。体はギークより遥かに大きく、一本ずつの上下の牙が恐ろしく長く、口からはみ出て交差していた。短めの全身の毛は緑色で興奮で毛羽たっていた。腹が減っているらしく、口からは涎が糸をひいて垂れている。
「こいつと戦えと?」
「戦ってはいかん。万が一おぬしが勝ったらわしの大切なペットが傷ついてしまうだろうが。攻撃せず、よけ続けろ。フォースを使って手なずけるなどということは考えるな。ただただよけ続けるのじゃ」
「・・わかりました」
レイゴウは手をかざすと、獣の足の鎖がガチャリと音を立てて外れた。
「こいつは三日間肉を食べていない。果たして食われずに済むかな?」
レイゴウが言い終わるまえに獣はギークに飛びかかった。
(ヨーダの物語 51につづく)