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「ひたすら面白い映画に会いたくて」27本目『後妻業の女』

27本目:『後妻業の女』

     『後妻業の女』(2016)

 原作:黒川博行 / 脚本・監督:鶴橋康夫

    「豊川悦司のナニワ商人道」

物語のあらすじ

  資産家の高齢者をターゲットに後妻となり、公正証書を書かせる。そして夫の死後、遺産を全て相続する。これが「後妻業」の仕事だ。武内小夜子(大竹しのぶ)はこの「後妻業」のエースであった。小夜子とタッグを組むのは、結婚相談事務所「ブライダル微祥」の経営者柏木亨(豊川悦司)。彼は後妻業を仕掛けるために、ターゲットが参加する婚活パーティーに小夜子を参加させる。

   妻に先立たれた中瀬耕造(津川雅彦)は、婚活パーティで小夜子と出会う。これをきっかけに彼女との仲を深めて再婚したが、結婚後まもなく脳梗塞で衰弱死してしまう。この父の死と小夜子の関係について疑念を抱く娘の朋美(尾野真千子)は、探偵の本多(長瀬正敏)を雇い、小夜子の身辺調査を依頼する。すると、小夜子は、「後妻業」だという事実が判明した。しかも小夜子と結婚した夫はみな父のように結婚後すぐに亡くなっているという。

   朋美と本多が、小夜子と柏木の悪事を暴くことで、徐々に2人を追い詰めていく。本作はそんな物語だ。

映画とドラマの違い

 ドラマでの関西弁には違和感ばかり抱いてしまい、物語の内容にイマイチ入り込むことが出来なかった。しかし本作では、俳優陣の話す関西弁が聴き慣れた関西弁であったからか、関西弁に気にならずストーリーに没入することが出来たのだ。特に大竹しのぶと豊川悦司、この2人のコンビの会話が安定して面白いし、関西弁もかなり上手かった。

 関西弁のイントネーションを含めた演技に関しては本作に軍配が上がっているであろう。

 終わり方は本作よりもTVドラマ版のほうが面白かったように思える。本作は尺の都合だと思うが、中途半端な終わり方をするのである。私のようにストーリーにスッキリできなかった人は、本作を観てからTVドラマ版を観ることをおすすめする。

本作の魅力

 本作のMVPは豊川悦司である。彼は誰よりも演技が上手く、おまけに関西弁もピカイチに上手かった。彼の演じた柏木という役に、どこか親しみを感じることができたのも、彼が演じたからであるに違いない。豊川悦司は本作では本当にいい味を出していた。彼はこんなにもナニワの香りを纏うこともできる人であったのだなあ。予想外であった。

 また津川雅彦が本作でも「スケベジジイ」を演じていたことは、個人的に高評価なポイントである。彼ほど安定にこの役を演じ切れる爺さんはいないであろう。ナイスキャスティングだ。

 そして、大竹しのぶと津川雅彦の2人による「ツイストダンス」のくだりも面白すぎて笑ってしまった。あんなの絶対笑ってしまうじゃないか。反則である。なんて楽しい映画なんだろうか。そう思える素敵なシーンであった。

私の1番好きな場面

 私の1番好きな場面は、武内小夜子と中瀬朋美が焼肉屋で大ゲンカする場面である。

 関西弁で繰り広げる2人のセリフは、どれもパンチの効いたセリフばかりで、観客を笑いに誘うことであろう。そしてそれだけでなく、2人は口論の末、取っ組み合いの喧嘩にまでヒートアップする。その際の取っ組み合いのケンカシーン。これには面白すぎてお腹が苦しくなってしまうほどだ。

 大竹しのぶと尾野真千子。この2人は、気の強い「女」を演じることにかけて非常に長けた女優である。そのことを再認識させられる場面でもあったのだ。敵に回したら恐ろしすぎる2人である。この「化け物」vs「鬼」の直接対決は本作の見所だ。

 それにしても、焼肉屋という環境を上手く生かした「舌」のジョークには随分笑わされた。この場面の清々しいほどの関西弁のオンパレードには、関西人は笑い合い、関東人は圧倒されることであろう。関西人である私にとっては、楽しくて仕方がない場面であった。

最後に

 物語の舞台が「大阪」ということもあり、知っている場所がたくさん出てきたのでテンション上がりっ放しであった。道頓堀、通天閣と大阪の名所が当たり前のように画面に映り込んでくるので、大阪に馴染みある人にとって本作はかなり楽しめる作品となっているはずだ。関西弁も比較的ナチュラルに話されているので、TVドラマ版よりも先に本作を観ることを私はおすすめする。

予告編

↓映画『後妻業の女』の予告編です↓

(出典 : 【YouTube】東宝MOVIEチャンネル「「後妻業の女」特報」)

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