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「ひたすら面白い映画に会いたくて」22本目:『図書館戦争 THE LAST MISSION』

   本作で『図書館戦争』シリーズは完結を迎えます。小説を実写化した作品の中でも、『図書館戦争』シリーズは、群を抜いてクオリティの高い作品であったのではないでしょうか。最初から最後まで非常に満足度の高い作品でした。

   本シリーズを観終わると、無性に近所の図書館へと足を運んでみたくなることでしょう。そこで、久しぶりに本を借りて読んでみるのもいいかもしれませんね。それでは、 『図書館戦争 THE LAST MISSION』をお楽しみ下さい。

22本目:『図書館戦争 THE LAST MISSION』   

     『図書館戦争 THE LAST MISSION』(2015)

原作:有川浩 / 脚本:野木亜紀子 / 監督:佐藤信介

          「図書隊の存在意義とは」

物語のあらすじ

 「THE LAST MISSION 」。それは関東図書基地のタスクフォースたちにとって、これまでにないほど困難なミッションであったのだ。

 図書館にとっての「自由の象徴」である『図書館法規要覧』。この本を、「未来への「自由」展」という展覧会のメインシンボルとして展示させることであった。

 この展覧会は、世間の人々に「表現の自由」の大切さに関心を抱いてもらうこと。そしてそれだけでなく、「表現の自由」を守るために図書隊だけが戦っているという、この世の中の「意識」を少しでも変えること。これらを目的に開催される展覧会である。

 このミッション、展覧会へと本を運ぶだけであるので簡単そうに見える。だが、本作の敵はそんなに甘くないのだ。

 なんと本作では、妨害相手にメディア良化委員会だけでなく、手塚の兄、手塚慧(松坂桃李)の作った組織「未来企画」も絡んでいるからである。これが本作で苦戦を強いられる一因なのだ。

   手塚の兄は、元図書隊のエリートで、現在は文科省で働いている。そして、同時に「未来企画」の代表だ。

 彼の狙いはただ一つ、図書隊を文科省の傘下に組み込み、防衛部の解散を実行すること。「未来企画」の代表である彼は、図書隊の防衛部が良化隊に激しく対抗するからこそ、検閲が厳しくなるのだ、と考えている。つまり、彼は図書隊の防衛部の存在に懐疑的なのである。

 そんな彼が本作では、図書隊の防衛部の中でも1番強いと言われているタスクフォースとの全面戦争に乗り出す。タスクフォースを全滅させることで、全国の図書隊の戦意喪失を狙う戦略である。

 果たして図書隊は、このミッションを無事に果たすことができるのか。『図書館法規要覧』という図書館にとって非常に大切な1冊を良化隊の手から守ることができるのか。『図書館戦争』シリーズ堂々の完結作だ。

本作の魅力

 本作は、今までのシリーズと比べて戦闘シーンの臨場感、そして迫力が共に倍増していた。良化隊のメンバーに凄腕スナイパーが存在していたのには、驚いたほどだ。見応えある戦闘シーンの連続である。

 まさに本作では、戦争映画さながらの銃撃戦を観ることができたのだ。戦争映画以外でここまでの戦闘シーンを描き切った作品は、珍しい。その意味でもこの『図書館戦争』シリーズは、非常に重要な作品である。

   本作もノルマのように登場する笠原と堂上教官の2人による「身長イジりネタ」が素晴らしかった。最終作ということもあってか、本作は笠原史上1番大きい姿で堂上の前に現れる。なんと笠原がヒールを履いているのである。めちゃくちゃデカイ!思わず堂上も「デカイな!」と言ってしまうほど大きいのである。

   榮倉奈々の岡田准一に対するこの「超上から目線」の演技は、観る価値あり。このシーンは、『図書館戦争』シリーズだけでしか味合うことのできない貴重な場面であるのだ。いやあ、めちゃくちゃ面白い場面であった。

私の1番印象に残った場面

 私の1番印象に残っている場面は、茨城図書館でのタスクフォースと良化隊との銃撃戦の次のシーンだ。

 良化隊の銃による攻撃により、図書館の本棚に入っている本が撃たれてしまい、ズタズタに破れてしまう場面である。この場面には、さすがに心が痛くなった。あまりにも残酷すぎる本の「死」を見続けなければならないからである。この光景は、視聴者だけではなく、図書隊の隊員にとっても計り知れないほどの精神的ダメージを与えたはずだ。

 この場面での玄田隊長(橋本じゅん)の叫びが、そのことをよく表している。彼の「もうやめろ〜!」という悲痛な叫びがそれだ。

 この場面は、本を守るために良化隊と戦っている図書隊が、その戦いを行うことで多くの本を犠牲にしてしまうという矛盾を上手く表している。なぜ、1冊の本を守り抜くために、他の本を何冊も失わなければならないのか。彼らは思わずそのように自問してしまうことであろう。

 本作を一言でいうならば、「図書隊」の存在意義を考えさせられる物語である。

 本作で繰り広げられた、図書隊防衛部のタスクフォースvs良化隊による戦争は、図書隊のアイデンティティが問われた1戦であったのは間違いない。図書隊にとって、自分たちの軸を再認識するために必要な1戦であったのである。

おわりに

 好きな本を自由に読むことができる。このことがどれだけ幸せなことであるか。本は「宝」。そして、その宝を保管している図書館は、「宝庫」である。本作は、この「本」とそれを保管する「図書館」のありがたみを改めて感じさせてくれる素晴らしい作品であった。

   本が好きな人、自分にとって大切な本を持っている人、本に助けられたことのある人たちは多いのではないか。きっと、そのような人たちは本作の「図書隊」の存在意義を肯定できるに違いない。もちろん、私もその1人である。これからも本を大切にし、図書館にも足を運んでいきたい。


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