「むずむず」に殺されそうになった夜

昨日、なぜか父親が急にバーベキューをやると言い出し、誘われたので彼氏を連れて参加した。

そのまま実家に泊まり、狭いシングルベッドに二人で寝ていたのだが、夜中の3時ごろ、私はふと目を覚ました。

最近は夜中に目を覚ますことが多い。
大抵喉が渇いており、膀胱も溜まっているので、トイレと水分補給をするのがお決まりである。

昨夜も、例のように喉が渇いており、尿意も感じた。そして暑かった。

エアコンの設定温度を下げ、風量も上げ、トイレと水分補給を済ませた。

再び寝ようとするが、どうも寝付きが悪い。脚の暑さが妙に気になる。そして、足の裏がなんだかむずむずする。

脚に水をかけ、エアコンの風で脚を冷やして寝ようとしたが、それでもやはり眠れなかった。

何度か水をかけ直したが、それでもあまり効果はなく、それどころかむずむずが気になって仕方なくなった。


むずむず脚症候群。

別名、レストレス レッグス(落ち着かない脚)症候群。


主に夕方から夜にかけて発症し、脚などに不快なむずむず感や痛みを感じる病気である。

このむずむず感というのは、その患部を筋肉から揉みしだいたり、猛烈に動かしたりしたくなる、非常に不快で堪え難いものだ。

軽いうちは貧乏ゆすりやマッサージをするなどしてある程度解消できるが、酷くなるとどうやっても治まらず眠れない


私は4年前、東京で一人暮らしをしていたとき、この病気をきっかけに大学へ行けなくなった。

その日の夜のことは忘れない。

それより前からふくらはぎにむずむず感は出ていたが、その晩に出たむずむず感は、今までの比じゃなかった。

もう爆発的にむずむずする。
私は当時、その感覚を「脚がイライラする」と言っていたが、高速貧乏ゆすりや指圧マッサージ、冷水かけと、色々試したが、そのイライラ感は治まる気配がなかった。

当然、眠れない。
翌日も授業があったので早く寝なければならなかったが、もう絶対に眠れる気などしなかった。

そして一晩中脚のむずむず感と格闘し、ついに明け方になると、メガネもかけずに裸足で家の前をダッシュした。

もう、私は疲れ切っていた。
そして本来起きるべき時間になったころ、ようやくむずむずは治まり、私は気絶するように眠った。

その日以来、私は完全に昼夜逆転生活を送ることになった。

夜中はひたすらむずむずする。
しかし、何かに集中していれば多少治まることがわかったので、近所のレンタルビデオ屋で借りてきたDVDを一晩中観ていた。
そして疲れ切ったところで、半ば気絶するようにして床につく日々が続いた。

最初は3時くらいにはなんとか寝ていたが、段々と遅くなっていき、最終的には7時寝16時起きというとんでもない生活リズムになっていた。


昨晩、私は4年前の悪夢を思い出していた。

一度ひっくり返った生活はなかなか元に戻らない。あのときも随分苦労した。親の理解もなかなか得られず、暴れて家出したこともあった。

また昼夜逆転になってしまったら、ただでさえぬるい今の飯炊き女生活もままならなくなる。そのとき、私はどうしたらいいのだろう。


しかし、非情にも眠れない。足はむずむずし続ける。

私はとりあえず、スマホで漫画を読んで気を紛らわそうとした。
なぜだかわからないが、むずむずしているときに暗い中で画面を見ると、なんとなくマシになる感じがするのだ。

とはいえ、そもそもが眠い。暗い中で明るい画面を注視するのも疲れる。一時間くらいで断念した。


私はとうとう彼氏に泣きついた。眠れない。つらい。

私の彼氏は本当に優しい。横になるとつらいので、リビングのソファーで寄り添ってくれた。

たまに喉が渇いたりすると、お茶を汲んでくれたりもした。


私はもう、完全に疲れ切っていた。頭も身体も最高潮に眠い。4年前のときより酷かった。
しかし、むずむず感が眠るのを許さない。

それはもう、拷問そのものだった。

頭の中では、槍でモノを破壊したり、今でも病気に理解のなさそうな父親をぶん殴ったりするような画が浮かんだが、身体は疲れすぎてピクリとも動かせない。

喉が渇いても、それを彼氏に訴えることさえできなくなっていった。

眠ることができないならいっそ殺してくれと思うほどには、身も心も参っていた。


日が昇り始め、誰かの目覚まし時計が鳴り出した。

流石にこれ以上ないくらい満身創痍となり、ベッドに戻ってうずくまった。

今日は11時半から美容院の予約を入れていたので、何としても11時には起きなければならなかった。


11時ごろ。死ぬほど眠かったが、「人様(美容院)に迷惑はかけられない」の一心だけで、無理矢理起きて着替えた。

本当は自分で運転して行く予定だったが、母親に送迎を頼んだ。


美容院では、ほとんど寝ていた。

美容師さんも気遣ってくれたのか、サービスのマッサージを丁寧にやってくれた。

おかげである程度疲れはとれ、一応運転できるまでには回復した。


とはいえ、あまりにも質の悪い拷問のような夜を過ごしたせいか、再び酷い眠気に襲われた。

流石に昼寝せざるを得なかったが、あまり寝すぎるとまた悪循環になるので、彼氏に頼んで起こしてもらい、なんとか一時間で留めた。


今日は彼氏だけ帰ってもらい、私は実家に留まっている。

そしてこの記事を書いているのだが、書いている間にもふくらはぎがむずむずとしてきた。


頼むから眠れないのはやめてくれ。

明日は家庭教師もあるのだ。支えてくれる彼もいない中、あの拷問に堪えるのはもう御免である。

大学中退病弱フリーター。病気で中途半端な障害を負って、身体という資本をほぼ失いました。あるのは思考大好きな頭と、ちょっと硬くなった手。あなたの支援は、私の存在価値の裏付けになります。