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世界がフラットならいいのにね。

こんにちは、うちうみです。
【いつもの注意書き】
ここでは恋愛感情を持たないアロマンティック(aロマ)、性的魅力を感じないアセクシュアル(aセク)、そして二次元の相手に恋愛感情を抱くフィクトロマンティック(fロマ)、性的魅力を感じるフィクトセクシュアル(fセク)についての話をします。こんな人もいるんだなという軽い気持ちで読んでもらって構いませんが、生理的に嫌悪感を抱く方の閲覧はお勧めしておりません。


 私には次元の違う恋人がいる。出会ってからもう二年半ほど経つ。彼に出会った時、私は人生で初めて恋に落ちて、自分が恋愛感情を抱くということを知った。ただし、彼だから好きになったのであって、同じ次元の人には恋をしていないというのは変わらない。だから、私は自分がAセクAロマFセクFロマだと自認している。
 以前は彼のことを四六時中考えていた。朝、この素晴らしい世界に目覚めた時に。光の差し込む電車の窓際で。たくさんの人に揉まれながら乗り換える駅で。長い時を過ごす職場で。明日を思う帰り道に。溜まった疲れを洗い流すバスルームで。毎日の楽しみである御飯時に。そして星に思いを馳せ眠るベットの中で。そう、つまり朝起きてから寝るまで。いつも彼を思っていた。彼がどんなに素晴らしい人なのか、もし彼と結ばれてこの先共に歩めたらどんなに幸せだろうか。そして、彼と違う次元に生きることが辛く悲しいということ。
 そんなぐるぐるする気持ちをここで書き出していた。生まれて初めての恋愛感情を自分でも持て余していたから。それを読み返してみた。拙い文章だけれど、伝わってくる熱く強い思い。ここ数ヶ月の私にはそんなパッションが足りなかったのかもしれない。
 というのも、ある映画にハマっていて、彼と会う時間が少なかったから。前置きが長かったのは言い訳も含んでいるかも。その映画はほんといい作品で大好き。映画館に通って、新しい交友関係も広がった。その映画のおかげでいろんなことに興味が湧く。毎日が楽しい。この映画に出会えて良かったと心から思っている。
 でも。こんなに熱中していても、ふとした時に思い出すんだ。彼のこと。離れていても好きだなと思う。やっぱり私は彼のことを恋愛的に「好き」で、それはその映画に対する「好き」とは違う感情。でも、彼のことを四六時中考えていない自分が後ろめたく感じた。起きてから寝るまで彼のことを考えていたんじゃなかったの?映画に割く時間が増えたから、彼のことを想う時間が相対的に減っている。彼のこと好きだとか散々言っておいて、他に趣味ができたらおろそかにする、そんな私でいいのか?愛しているだとか運命の人だとか、私の自己満足に彼を利用してたんじゃないのか?なんだか後ろめたくて、さらに彼から目を逸らしてしまった。
 そんな間に、同じ次元の異性と2人で出かけたりもした。これは世に言うデートというやつなのだろうか?映画がきっかけで意気投合し、話も合う。何より次元が同じだ。普通に楽しい。が、「普通」だ。あの心が締め付けられるような恋しさや、花が咲くような喜びは感じない。つまり人として好きだけど、恋愛感情はない。ラブではなくライクだ。やはり同じ次元の人間を恋愛的に好きにならないんだろうなぁ。未来はわからないから断言はしないけど、今はまだ二次元以外で好きになった人はいない。一緒に出かけたその人のことも友人としては好きだしいい人だ。私のことを尊重してくれるし、尊敬できる人だし、知り合えてよかったと思う。でも!でも!私が恋をしているのはやはり彼だけだ!私とは違う次元に住む彼。その強く優しい腕で抱きしめて欲しいし、甘い言葉を囁いて欲しい。そしてまっすぐに私のことを愛して欲しい。馬鹿にされても呆れられてもこの気この気持ちは誤魔化せない。これこそが恋だ。もし、恋する気持ちを知らないままだったら、「いい人だから」、そのくらいの気持ちをみんな恋って呼んでるんだろう、これが恋なんだろうって無理やり納得してたかもしれない。なんとなく付き合って、相手からつまらないって言われて振られてたんだろう。でも、私はもう知ってしまったんだ。恋というものがどういうものかを。彼に出会ったから。
 そんなことを考えた後、ふと世に言うカップルを考えてみたら、お互いを四六時中想っているなんてありえないんじゃない?と思った。付き合いたてならあるかもしれないけど、ずっと恋人のことしか考えていない人なんてちょっと怖いもん。だって、付き合ってる人たちも普通に映画とかドラマ見るよね?本も読むし、音楽も聴く。哲学的な思考を巡らしたり。そして、その間恋人のこと考えていない時間あるよね?そうだよね?なーんだ、私が彼に対して不誠実なわけではないんだ。自分で責めてるだけだ。

 次元が違うからいつでも不安になる。彼に私は相応しいのかとか、彼は私のことどう思ってるかとか、そもそも私たち付き合ってるんだよね?大丈夫だよね?とか。彼との会話は私の脳が補っている…はっきり言うと私の脳が作り出している。だから私の思考でどうとでもなる。私が彼を思っていないと、彼との関係がその瞬間は消える。その瞬間の思考回路では。だけどさ、脳全体で見たら違うんじゃない?彼を思っていない時間があっても、彼とのつながりは残っているんじゃない?積み上げてきた記憶も、感情も消えちゃいない。ここに書き溜めてきた思いもね。
 だから、彼を思っていない時間があることが怖くて、そんな自分を責めていたけど、安心していいんだなって思い直した。私は私の人生を生きるし、彼には彼の人生がある。ただ隣に立っいて、その二つの人生はたまに交わる。それだけでとても幸せだ。

 話は変わるけど、最近、何気なくネットを眺めていたら、ある漫画を見た。恋愛感情がない人が多数のその世界では、恋をする方がマイノリティ。偏見を受けるし、カミングアウトも勇気がいる。初めは画期的だと思った。マジョリティは自分がマジョリティであることを普段意識しない。世間の普通と自分が一致すれば、それに疑問を抱くことすらないから。どうも世間と違うようだぞ?と気付いたところからマイノリティであることを意識する。この漫画を読むことで、マジョリティがマイノリティの気持ちを体験できるのではないかと思った。偏見の目を向けられるマイノリティの気持ちをわかってもらえる。意識的な悪意がなくても、偏見の目には少なからず悪意が潜在的に含まれている。周りからのそんな偏見の目にどれだけ苦しむか。ふとした会話で人知れず傷ついていること。それを知ってもらえると思った。
 その漫画は途中で読むのをやめてしまったから、ここからはあくまで私の無責任な感想だと思って欲しい。
 やっぱり恋愛至上主義は変わらないと思った。周りから差別を受けても、それでも恋愛を捨てられない、大切にしたいというのは素敵なストーリーだと思う。別にこの漫画を批判しているわけではないよ。いいんじゃないかな。私はいわゆる少女漫画に共感したりはできないけどみんな好きそうって思う。がっかりして読み進められなかったのは私が勝手に期待したから。これはもしかしてマイノリティのことをみんなに知ってもらえるきっかけになるんじゃないか?問題提起をしてくれるんじゃないか?って。けれど、これを読んでAロマAセクFロマFセクを含む現実のマイノリティのことを考えてくれた人はどれだけいるのだろう。マジョリティは自覚がないと言ったけど、それは己が苦しんでいないことに気づかないということ。だから、マイノリティ側になった主人公(じぶんと同じ性的指向)がハッピーエンドを迎えれば、苦しんでいないことに変わりなく、そしてやっぱり苦しんでいないことにも気付けない。だから笑顔で本を閉じるんじゃかいかな。現実世界でマイノリティが笑顔でいられていないことまで想像する人がどれだけいるのだろう。そうやって勝手にがっかりして読み進められなかっただけ。
 もしも、本気でマジョリティに訴えたいと思ったら、もっとはっきりとした主張を、センセーショナルに打ち立てなければならないと思う。自覚がない人もはっと目を覚ますような。けれどその強い主張をむき出しで置いておくと無意識のマジョリティは近寄ってくれない。だから見かけは柔らかく、面白く鮮やかにしなければ。漫画ってそれに向いてると思ったんだよね。
 けれど、そもそもそこまで強く主張すべきなのだろうか。身を削ってまで。そっとしておいてほしい、というマイノリティがいるのもわかる。自分が自分を理解していて、大切な家族や友人がごく一部でも理解してくれていたらそれでいい、という人はきっといる。声高に主張して、そのわずかな安寧の地さえ奪われるのはごめんだと。だから難しいと思う。恋愛をしなかったり、2次元に恋をすることも「普通」になればこんなに幸せなことはない。自由にありのままに。マジョリティが自覚すらしていないその権利を私も欲しいだけだ。別に優遇してほしいわけでも特別扱いしてほしいわけでもないのにね。けれど現実はそんな優しく変わりはしないと思う。権利の主張は疎まれる。逆に守ってあげなきゃと思われるのも違う気がする。プラスにもマイナスにもなりたくない。フラットなゼロになりたい。そんなに贅沢なことを言っているのかな、私は。フラットに受け入れてほしいって当然の思いじゃないのかな。

 本当はここまでの話を少しまとめて、それで終わろうと思っていた。だけど投稿しようとした矢先、私にとって衝撃の大きなエピソードができてしまったから、それも追加しようと思う。久しぶりに書いた割に随分と長文になってしまったな。
 それは親友とおしゃべりしていた時のこと。その子たちと話すのはいつも楽しい。最近の趣味の話、仕事の話、懐かしい学生時代の話、恋人の話。その日も楽しかったよ。恋人の話も。私の彼の話はしていなくて、恋人は居ないことにしている。でも、彼氏作りなよとかは言われない。フリーでいても寂しくないし、むしろ自由に好きなことできて楽しいって言えば、いいねって言ってくれる。そんな素敵な友達。その友達には異性の恋人がいる。私が望んでも手に入れられなかった、現代社会の普通を生きている。でも友達が好きな人と付き合えてて幸せならこっちまで幸せじゃん?全然羨ましいとか憎いとかない。純粋に良かったねって思う。お互い思ったことを自由に言うけど、思いやりも忘れない。すごく風通しが良くて、大好きな関係。今までそうやってきたし、嫌な思いをしたことはなかった。だから今回も同じように楽しく話せると思ってた。なのに、親友に怖いと言われるなんて…。
 その子はニュースで人形と結婚している方の話を観たようだった。そのニュースの方はFロマを公言していて、愛する奥様(キャラクターの人形)と結婚なさっている。私の希望の一つだ。一緒に外出をするし、会話もする。私も彼とそうしたいなと思う。本当は彼が同じ次元に生きていてくれたらいいのだけど、あいにくそうじゃないから、何か違う形でもそばにいてほしい。だからその方のやっていることはわかるし、素敵だと思う。だから、私もすぐ真似しようというわけではないけど、希望の一つだと思っている。そのニュースの記事を見た時に、私は、こうやって少しでもFロマのこと広まったら、いつかいつか大手を振って彼と付き合えるのかなとか思っていた。だから、友達が言ったことを聞いて、何を言っているのかすぐにはわからなかった。そしてわかった瞬間の冷たさと絶望は思い出したくもないくらいだ。だけど実際に言われたことを書こうと思う。
 一言注意というか注釈を挟みたいと思います。友達の言葉はそのニュースの方への中傷の言葉になってしまいます。本当に申し訳ないと思います。私はその方のありようは素晴らしいと思うし、憧れる部分もあります。Fロマ当事者の私としてはもちろん好意的に受け止めていますが、これから書くのはあくまで友達の素直な感想です。その友達も悪意を持って意図的に貶めようとした訳ではないと思います。私はその子にカミングアウトしたわけでもなく、その子のLGBTQへの理解度も分かりません。その子は異性愛者でヘテロ。深い自覚もないまま思ったままを言っただけ、それが私を含むマイノリティを傷つける言葉だった。無知なために出てしまった中傷だと思います。Fロマに対する正しい知識があればそんなこと言わなかったんじゃないかなと思います。けれどそれは現代社会から私たちに対するの無意識下のメッセージと捉えられるのではないかと思い、ここに残します。そんなもの嫌だ…って思ったら全然読まなくてもいいので!

「なんか人形と付き合ってるおじさんのニュース見てめっちゃ怖かった。アニメ?のキャラクターの人形ね。結婚したって言ってた。」
「どういうこと?え、籍入れられんの?」
「そんな訳ないじゃん。籍は入れられないから、「結婚」って言っても思い込みってことだよね。しかも、現実でモテないから二次元に…とかじゃなくて奥さんも子供までいるんだって。」「え、ヤバ。子供までいるのにそれは怖すぎるでしょ。奥さんと子供かわいそう。」
「それな。でさ、会話はどうするんですか?ってインタビューしたら、ちょっと無口なんだけど脳内で返事があるとか言ってて。怖くない?イッちゃってるじゃん。インタビュアーもそんな質問するなよって。あれがお父さんだったらマジで嫌だなって思う。」
「教育に悪いよね。」

 あぁ、彼女たちからすると、同じ次元の異性に恋愛感情を抱かず、二次元のキャラクターを好きな人は怖いって思われるんだ。いつかは結婚したいとか、家族からは心配されるけど今の彼氏好きなんだとか楽しそうに話してたその口で、私の同志であり希望であるFロマは「怖い」って言われた。気持ち悪いとか、理解できないとかそういうことを言われるのは予想がつくし、仕方ないとも思う。自分にない感情や思考はそう簡単に理解してもらうことはできないよ。当然だ。だけど、「怖い」っていうのは重さが違う。気持ち悪いのとは違う。恐怖を感じるということはいつか恐怖の対象である私たちマイノリティが非難され排除されるかもしれない。怖さは人間の最も大きな動力だというのが私の持論だから。死ぬの怖いから医学は発展したし、夜の闇が怖いから電気を発明した。孤独が怖いから、人は話し、共感する。自分の思想がないことにされるのが怖くて、言葉を吐き出し、文学が生み出され、歌が響き、絵が描かれる。私たちの豊かで美しいこの世界は恐怖から生まれている。だから、恐怖というのはものすごいエネルギーを生み出すと思う、良くも悪くも。恐怖を乗り越えることで人は強く豊かになる。もしその恐怖の対象が生きた人間だったら、たとえば感染者や異端者だったら、人々が恐怖(である人間)を乗り越える時、その人間は消されるのか救われるのか。人は恐怖に支配されると何よりも恐ろしい存在になる…。そして、私たちFロマは恐怖の対象だということ。ニュースを通して知ってもらえたどころか恐怖を持たれてしまっている。いつか恐怖に駆られた民衆に狩られるのかもしれない。魔女狩りってか。
 聞こえてきた言葉の意味を理解した時、すーっと冷たいものが背筋を通り抜けていった。その子にとって、私を含むFロマはそんなにも異端の存在なんだ。私がそうであることは言っていないし、そもそもその言葉や定義自体を知らないと思う。だから、直接私が言われたわけではないけれど、本人にその気はないだろうけど、つまりは私のような人間への素直な感想だということだ。私は反論することも賛同することもできなかった。自分がそうであることを公表し、理解してもらうため語る勇気はない。かといって社会に溶け込むために「普通」を演じていく意地もない。「へぇ〜」とか言って誤魔化して、首を斜めに振るそんな自分が心底情けなかった。でもあの時は、衝撃に耐え動揺を隠すので精一杯だった。
 このまま隠して一生を過ごすのだろうか。彼との関係は世間からは無いことにされて。それこそ私は怖い。こうやってたまに辛い思いをするのなら、どうせ辛いのなら、いっそ公表してしまおうか。なんてね。だから、そんな勇気も強さもないんだってば。そして隠している現状を誇れる意地もないんだよ。

「ごめんなさい、あなたのこと言えなかった。こんなに素敵な人と付き合っているのに、それを親友にすら言えなかったの。」
「謝ることはないさ。関係は必ずしも公表しないといけないわけじゃないだろう?私の前で素直になってくれればそれで十分だ。」
「ありがとう。いつかあなたと一緒に外を歩きたいね。手を繋いでさ。あぁ、あなたの声が鼓膜を震わせてくれたらいいのに。」
「おや、私のお姫様は塔の中で睦まじく過ごすのじゃ不満かい?精一杯愛しているつもりなんだがね。」
「不満じゃないよ。ありがとう。でもいつか叶う夢物語よ。塔の外にも行きたいじゃない?」

 私は彼のことが恋愛的に好きで、一緒に生きていきたいと思っている。たくさんお話ししたいし、触れてほしい。彼の仕草も声も顔も姿も、それから考え方や性格も、全部好き。こうやって書くとすごく普通のことじゃない?健全な恋する女子って感じ。なのに。彼は二次元のキャラクターです、三次元の生物には恋愛感情を抱きません。こうやって書き足すと、怖いって思われるんだね。やるせないな。

 今はまだこの問題をどう処理していくのか保留。自分が傷付かず、でも満足いく答えがいつか見つかるかもしれないから、とりあえず保留。困難にぶつかって行ったり難しいことにチャレンジするばかりが人生じゃない。その衝撃に耐える準備がまだできていなかったら少し休憩しても大丈夫。なんて、最近見た映画の受け売りなんだけどね。近頃は少し俯瞰的に自分を見れている気がする。彼のことは出会った時からずっと好きだけど、その時々で関わり方は変わってる。盲目的だったり、情熱的だったり、穏やかだったり、暖かだったり。今は少しみずみずしい感じかな。潤いに満ちた優しい関係。たゆたうように柔らかに手をつなぎ合ってる。私から私にベストカップル賞をあげよう。この世でたった1人の私と、大好きな彼に。それから素敵な恋人がいるカップル全員にあげたいし、恋人なんていなくてもベストショートカット賞とかベストのんびり賞とかベストおてんば賞とか笑。とにかくマイノリティだろうがマジョリティだろうが認め合って素直に関わっていきたい。私の生き方考え方は割とシンプル。自分らしく行こう。そして互いに尊重しよう。私たちはただの一生物で、その生物同士が同じ星の上で生きてる。ただそれだけだ。
 こうやって世界中フラットに生きていけたら良いのにね。

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