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OLA革命-自分度の広げ方 15「住宅におけるコモンとは」

大矢氏の「伴年晶の建築」観

 伴さんが作り上げる建築や空間は、2年くらいかけて住まい手と一緒に構築していきますが、その作り上げていくプロセス自体が「コモン」です。
 完成した建築物は、建築基準法上、例えば建ぺい率が60%だったら、伴さんが設計しようが、大手不動産業者が建てようが、60%は60%です。
 では残った40%のうち、実質共用部として活きている空間が仮に25%程度だとした場合、伴さんが設計したから素晴らしいのかというと、モノとしての空間にそれほど大きな差異があるわけではありません。
 ですが、マンションとコーポラティブハウスの決定的な差は、この作り上げていくプロセスです。
 超高層マンションが、そのスケールメリットとしての共用空間=スカイラウンジやスポーツジム、豪華なエントランスホール等を作ったりしていますが、それは供給側の論理であって、需要側=住まい手が作り上げた空間ではないので、うまく使っているなぁと感じたことはありません。これから10年、20年と住み続けていく過程で、それらの空間が、役に立つ空間として「コモン」化していくのであればいいなぁとは思っています。人のつながりが内在していなかったら、コモンスペースにはほとんど価値がないです。
 また、10~20世帯の集合住宅と500世帯ある集合住宅では、そのコモンの作られ方も違ってくると思います。
 色々話が飛びましたが、伴さんのつくる建築は、その作り上げていくプロセス自体が「コモン」であり、そこに大きな価値を感じています。

個々の家を豊かにすることがコモンにつながる

 コモンはハードな空間ではなく、ソフトしかないんです。コーポラティブハウス自体は、「私がイメージする立派な家を作って欲しい」ということがあっても、「立派なコモンをつくってほしい」ということを求めている人はいません。一番後回しなのが「コモン」なんです。自慢できる立派な家を作ることで、その共用部分=コモンもきれいにしたい、使いやすくしたいということが出てくると考えています。
 永く住めることが、人のつながりを生んで、愛着のある空間=コモンになっていくと考えると、建築家の使命は、永く居続けたい住宅を設計することであって、逆説的ですが、建築家が直接コモンを作ることはできないのかもしれない、とも思うわけです。

コモンという仕掛けを作った事例

 そういう意味では特異な例になるのですが、これまで計画した長屋型の木造コーポラティブでは、参加者全員が乳児・幼児を抱えていて、その場合は、子どもが目の届く空間で自由に遊べる場所=コモンが、共通のテーマになりえていました。
 また、長屋型もそうですが、伴さんの設計した、千里での戸建てコーポラティブハウス(土地を共有化して団地化しつつ、住宅自体はマンション型ではなく、戸建てになっている)は、戸建てという住空間の満足性を活かしつつ、残りの部分の共用部をコモン化できている稀なケースではないかと思っています。
(音声配信なのと個人住宅なので図面がお見せできないのは残念ですが)
興味のある方はUCOまでお問い合わせください。


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