転職活動編②~選ばれる・選ぶ立場で臨んだ面接試験~

筆記試験ラッシュを終え、面接を控えた頃には、暦の上ではようやく秋が訪れていたところですが、あの夏は例年にないほどの酷暑であった事を記憶しています。

面接を迎える前に、それまでずっと取得できなかった夏季休暇を取得し、実家のある田舎に帰省していました。

今、振り返ってみると、それまで怒涛の日々を過ごしていた私にとって、その時まで抱えた心の荷物をゆっくりと下ろせる日は無かったと思います。
恐らく私単独で帰省していた場合は、親からの質問責め(仕事はどうだ、子どもの予定はどうなんだ)に遭っていたと思うのですが、タイミング良く今回は配偶者との帰省が叶ったため、親は私の今の仕事に言及する事もありませんでした。

朝はちゅんちゅんと小鳥のさえずりしか聞こえないような静かな環境の中で、畑の農作物を収穫したり、何もない海岸でぼんやり過ごしたりと、
ほんの僅かな時間ではありますが、慌ただしい日々から解放されていました。
今思えば、現職や選考中のストレスで疲弊していた私にとって、心と身体を休ませるためにも、あの時間は必要な時間であったと思います。

都会に戻ってからは、本格的に面接対策を始めるべきところでしたが、正直なところ、私は面接対策らしい対策はしていません。
ただし、大変ありがたい事なのですが、ちょうどこの頃はX上で知り合った方々とのオフ会の機会がグッと増えた時期でもありました。
(私の居住地の近くに来る機会のある方にはこちらからこっそりお声がけさせていただくこともありましたし、その逆もありました)
変な話、このオフ会が私にとっての一番の面接対策となりました。

「どうして転職しようと思ったの?」
「今、かぼすさんが受けようとしている組織、どこに魅力を感じたの?」
「この仕事に対して、かぼすさんってどう考えてる?」

・・・こういったオフ会上ではよくあるような何気ないやりとりが、そのまま面接の場でも問われた事があります。

立場も年齢も所属も違う、現実世界では初対面の方の前で、自分自身の考えをアウトプットすること。
忖度無しの率直な意見をいただいたり、相手の考えに触れたりするたびに、自分の価値観や考え方がどんどん研ぎ澄まされていく感覚を実感しました。

とは言え、カジュアルな受け答えが許されるオフ会とは違い、選考の場である面接は、やはり独特の張り詰めた雰囲気にのまれてしまったので、一番最初に受けた民間企業の面接は緊張のあまり、満足な受け答えもできませんでした。

「残業はできますか?」
という面接官からの質問にも、
「・・・はい、頑張ります!」
・・・といった根拠のない自信で押し切っていました。
いやぁ、何をもっての「大丈夫」なんでしょうね。
現職では残業時間(と人間関係)でつぶれたくせに、と自虐的にもなってしまいますが・・・^^;

面接を重ねた今なら、
「現職では月に○時間ほど残業しており、繁忙期は●時間ほど残業をしております。もちろん業務上必要である残業であれば対応可能ですが、身体は資本ですし、残業代も会社の貴重なお金が原資ですので、できるだけ減らしていけるよう、普段から効率化とチームワークをを意識して業務に取り組んでまいります。」
・・・なんて言葉がすらすらと言えると思います。

また、後日談となりますが、こんなぼろぼろの受け答えでも、最終面接まで通過し、合格をいただくことができましたが、結果的には辞退してしまいました。

こちらもその場ですぐに聞く事ができれば良かったのですが、具体的な月平均の残業時間数も提示されないまま「大丈夫」と首を縦に振ってよかったのかという葛藤もあったのですが、(そもそも残業ゼロの組織はないとはいえ、こういった質問をされるという事は)残業が前提の職場環境なのか、という印象を持ったためです。

面接の場で学んだ事があります。
自分は「選んでいただく」立場だという事は当然の事ですが、同時にこちら側も「選ぶ」立場でもあるという事を自覚し、曖昧ではなく毅然とした態度で面接に臨む事が、結果的に人として信頼されるのだという事を学びました。

もちろん、面接官の方に対して「私が選ぶんだからね!」・・・と、高圧的な程度をとってはいけないのは言うまでもない事です。
ただ転職活動は、「内定を取る」事が目的のゲームではありません。
「自分がより幸せになるため」の選択肢を増やす手段の一つでしかないのです。

自分ができる事(どのくらいの水準でできるのか、逆にどの水準からはできなくなるのか)と、自分の業務に対するマインドや思いは正直に伝えるよう心がけました。
背のびして飾りまくった自分自身よりも、等身大の自分を選んでいただけるのであれば、入職した後も幸せになれるのではないか。そんなかすかな期待を胸に秘め、面接をどんどん受験していきました。

結果的に、私の場合は大変ありがたい事に、受けた面接試験は全て最終選考まで通過する事ができました。
しかし、いざ複数内定をいただいてみると、今まで経験した事のない苦悩が私を襲いました。

どの面接も圧迫といった感じは全く無く、この組織で是非一緒に働かせていただきたい!と心の底から思えるほど素敵な方々ばかりでしたので、内定辞退の電話連絡の時には心臓がつぶれるのではないかと思えるほど心が苦しかったのを覚えています。

「自分がより幸せになるため」の手段を手に入れるためにはどうしたら良いか。3日3晩、悩みに悩みぬきました。
そして、最終的に、とある組織の内定承諾書にペンを入れる事を決意しました。

・・・と同時にそれは、現職との決別を意味します。

この時の私は夢にも思いませんでした。
まさか、転職活動において一番私を苦しめるのが、筆記試験でも面接でもなく、現職との退職交渉だという事を・・・

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