私は「頑張ろう」とよく言う子どもだった。

でも学生のとき付き合っていたしょぼい年上の彼氏に『頑張るって、"我を張る"とも言うし、あんまりいい言葉じゃないと思うけど』と言われて以来、長く使うのをやめていた。今思えばそんなしょぼい彼氏の言うことに影響されることはなかったはずだけど。

30代になって、高校時代を一緒に濃く過ごした友人が非常にシビアな癌におかされたと知った。娘のいたずらで偶然にも彼に電話していたようで、折り返してくれて少し話した。

私は

『もう十分頑張っている人に対して頑張れって言うのは違うと思う、けど、頑張ろう。私も頑張るから』

と言った。

そしたら彼は

『俺は"頑張る"って言葉好きだから、使っていこうぜ。俺らあのとき頑張ろうって言い合ってやってきたじゃん？』

とこたえた。

高校、大学を卒業してからはほとんど会わなかった。それでも、社会人になっても”彼らも頑張っているから私も頑張ろう”と思うような存在だった。

私には今、頑張れる体も心もある。頑張ろう。