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最年長とリーダー

 indigoがやばい。BTSを知る前からmonoをマイリスしていた私にとってindigoは絶対やばいのが来るだろうと予想はしてたけど、それを上回るほどにやばかった。ナムさん、あなたは本当にすごい人だよ。度肝抜かれたよ。

……で、ナムさんのindigoを聴いてたら巡り巡って「ジンくん、生まれてきてくれてありがとう」という結論に達した。私がジンペンだからか?ちょうどジンくんの誕生日だから?

 とにかくなぜそんなことになったのか、順を追って説明していきたいと思う。

違いすぎる2人

 ソロ活動を通して特に思う。ジンくんとナムさんってタイプが本当に真逆。それを言ったら全メンバー違うんだけど、もっとぶっちゃけると、一番仲良くなるのが大変だったラインじゃないだろうか。2人とも妙に大人だから表立って対立するタイプでもなかっただろうし、「うわぁ、こいつとは合わないわ」って他人行儀のままでいた可能性もあっただろう。そうしてたら今のバンタンは存在しなかった。

 実際は2人で仲良くライブ配信したり、番組中にマニアックなネタで2人だけツボってたり、ガチで言い合いになってジミンに苦笑されてたり、お互いがお互いをリスペクトしつつ、遠慮も感じられない関係でとても理想的。以前もちょっと書いたことあるけど、もし自分がジンくんの近くに居られるんだとしたら、ナムさんとジンくんのような関係になりたいなぁと思う。

悩める文学少年

 ナムさんは頭脳派と言いつつかなりの感覚派だ。感情論が多くて、まさにアーティスト気質。典型的な文学少年。以前ART BASEL主催のPodcastで「そもそもラッパーになろうと思ったのは詩人になりたかったら」と話していた。それまで私の中でラップは相手を口撃するイメージが強くて詩と結びついていなかったけど、確かにラッパーって詩人の進化形だよね。

 彼は「愛とは何か」「人間とは何か」など、結論なんぞ到底出るはずのないものについて延々と考えるのが好きだ。また「こうあるべき」とか「どこを目指すべき」といった目標や夢を大切にしていると思う。だから自己啓発にも熱心だし、社会問題や自分が社会に与える影響にも敏感だし、休みの日も常に何かをしなければいけないという強迫観念に駆られがちだ。

 そんな悩めるナムさんは今、うってつけの番組でMCをしている。その中でも個人的に興味深かった一部をご紹介。

「知っていても役に立たない神秘的な人間雑学辞典」

 バンタンの楽曲、134340が冥王星をテーマにしているというエピソードで、冥王星が惑星から除外されて心が痛かったと話すナムさん。「惑星は(感情がないんだから)どう呼ばれようが気にしないのでは」と返す科学者勢。「実際の惑星がどうという話でなく、これまで学校でそう習ってきた記憶がある私たちの気持ちの問題だ」と口を挟む作家。「ヒューマニズムとアンチヒューマニズム(いわゆる文系と理系みたいな)の違いだね」という話に。

 惑星はそんなこと気にしないwww それ、私も少し思ってたよw でもこういう感受性の豊かさが素晴らしい作品を産むんだろう。まさか冥王星のネタであんな切ない歌詞を連想できるなんて普通思わないよ。

 MBTIではE(外向的)と出ており、コミュニケーション能力に長けていてエネルギッシュに外に出かけるけど、彼のソロ曲は内向的で、自分の心のうちを曝け出す日記のようなものが多い。確かに、よく外出するから外向的とは限らないよな。自然を満喫したり美術館巡りをするのは改めて自分と向き合うためのように思う。

 アルバムの最初を飾るYunは韓国の画家、ユン・ヒョングン氏の肉声で始まり、「芸術をする前に人間であれ」をテーマにしている。でも結局「人間らしい生き方って?」「良い人間って具体的にどういう人?」と堂々巡りになり、これからも理想と現実の差に絶望し続けるだろう。でもその葛藤が彼の創作の糧になっている。indigoはそういったあらゆる負の感情が見事な作品に昇華されているからすごい。

 改めてWild flowerを聴いてみよう。ああ、神曲だわ…。

 一方で、今回のアルバム、人によってはあの会食動画みたいに、これまでのことを全否定されてるようで寂しく思う人もいるかもしれないなとも思った。でもナムさんって普段から後ろ向きな発言をしがちだけど、結局悩むこと自体好きなんだと思う(といっても悩むフリをしているわけでもなく、本気で辛いんだろうから厄介なんだけど)。

 私が大好きな Seoulに ♪ 愛と憎しみが同じ言葉ならば I love you, Seoul, I hate you, Seoul ♪ という歌詞があるけど、まさにそれ。アミのこともグループとしてやっていくことも多分大好きで大嫌いなんじゃないだろうか。彼の葛藤は今後軽減はされても解決はしないだろう。解決を本気で願ってるだろうけど、答えが出たらきっと本人が困るだろう。アーティストにとって満たされることは何よりも怖いことだから。

 ちょっと話が横道に逸れるけど、私の友人で鬱屈とした素晴らしい文章を書き、人物写真を撮るフォトライターがいた。でも恋人ができて満たされて、以前のような作品が作れなくなったと言っていた。結局彼女は結婚して田舎に引っ越して農業をやっている。彼女は幸せそうなので友人としては嬉しいけど、ファンとしては少し寂しくも思った。

 かくいう私も以前はクリエイターと言えるジャンルにいたけど、すっかり創作意欲がなくなってしまった1人だ。思えばバンタンにハマる前はもっと世の理不尽さや人間の愚かさを憂い、作品に込めようとしてた気がするけど、なんだか今は達観してしまって、全く関係ない仕事に就き、こうしてたまにNoteで誰かに文章を読んでもらうだけで満足してしまっている。私自身は産みの苦しみから解放されたけど、本当にそれでいいのかは正直今でも模索中だ。

 つまり、アーティストとして生きることは悩み続けなければならないことでもあると思う。そうしてとことんアートを追求した結果、闇落ちする人も少なくない。自ら命を断つ人さえいる。まさに映画のBlack Swanの世界。ニーチェのこれですね。

“Beware that, when fighting monsters, you yourself do not become a monster… for when you gaze long into the abyss. The abyss gazes also into you.”
怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。

 indigoを聴いて、やっぱり私は初めはナムさんの芸術性に惹かれてARMYになったんだなと再認識した一方で、もしナムさんがリーダー且つ最年長だったら、このグループは早々に解散していたなとも思った。(彼をディスってるつもりはないよ!) こん詰めすぎてメンバーの誰かが潰れていただろうし、今のような尊いわちゃわちゃもなくて、ここまでの人気にはならなかっただろう。

 そこからバンタンの最年長、ジンくんに繋がるんです。

悩みたくない合理主義者

 ジンくんについてはこれまでも長々書いてきているので端折るけど、改めてナムさんと比較すると面白い。

 彼はその場のノリと感覚で生きてるように見せておいて論理的で合理的な人だ。MBTIではI(内向的)と出ており、「友達が少ない」「人付き合いが苦手」と言ってる割に人脈作りは上手く、ハマってるゲームも多くがネトゲやソシャゲのようだから実質人とよく交流しているようなものだと思う(余談だが、北欧では引きこもってネットをしている方がコミュニケーション能力が高くて見聞が広く、国外の友達も多いから陽キャ扱いという話を聞いて面白いなと思ったことがある)。

 ジンくんのソロ曲、Awakeは自分のことではあるけど、他の人たちと同じ場所へ行きたいという気持ちが入っているように思う。Epiphanyでまずは人のことより自分のことだと気付き、Abyssで自分と向き合うことを選んだけど、結局Tonight、Moon、The Astraunautのように他者に向けた手紙のような歌が多い。つまり常に他者(主にアミ)の存在が大きい。

 こっちもやっぱり神曲だわ…。

 彼は答えの出ない問題を延々と考えることを好まない。「将来の夢を絶対に持たなきゃダメですか?」とか言う。休みの日は普段頑張ったご褒美に、どれだけ自分が自堕落に過ごせるかを重要視している。

 比較すればするほど違う。どちらが良いか、正しいかという話ではなく、こんなに真逆の2人が最年長とリーダーだからこそBTSはバランスが取れたグループになったんだなと改めて思った。2人の性格を考えると、ジンくんが最年長じゃなかったら、ナムさんがリーダーじゃなかったら、それぞれもっと主張を控えていたはずだ。そしたらグループはこんな素敵な色合いにはならなかっただろう。パンPDは結成した時にここまで意図していたのかなぁ。

やっぱりあなたもBTSに必要なんです

 私が純粋に楽曲から好きになったのはナムさんのSeoul、ユンギのShadow、Black Swanを始めとしたMOTS7、そして花様年華の一連だ。だから感性はナムさんやユンギの方に近いと思う。だからこそ、彼らのように身を削って創作をするタイプがいかにジンくんの考え方や存在に救われてるかを勝手に感じ取って、勝手に胸が締め付けられる。口ではよく「困ったヒョンだ」って言うけど、2人ともジンニョン大好きなのが伝わってくるもんね。まったく、尊いぜ……。

 他メンとジンニョンについてもいつか同じくらいの熱量で語りたいけど、今日はここまでにしておこう。

……というわけで。

 最後に、ジンくんに「生まれてきてくれてありがとう。BTSになる道を選んでくれてありがとう。お誕生日おめでとうございます」と伝えたい(ようやくかよ)。

 あと、「『すごいのは僕じゃなくて弟たちです』とか『BTSはRMさんを中心に回っています』とか言ってるけど、あなたも十分すごいからね?? 見方によってはあなたを中心にグループが回っているからね??? ちゃんと自覚してよね?!」とも言いたい(笑)

 だから色々無理をしてもらって申し訳ないなと思いつつ、釜山コンサートに7人揃って出てくれたことに本当に感謝しています。ジンくんが希望通りに暖かい時期に兵役に行ってしまい、6人でコンサートをすることになっていたらファンだけでなく他のメンバーも凄く辛かったと思う。皆のために素敵な思い出を作ってくれて本当にありがとう。

 今年は更に色々と新しい経験をする一年になると思うけど、たくさんの人があなたの味方です。どんな時もそれを忘れないでくださいね。また近いうち、元気な笑顔を見れるのを楽しみにしています!


【追加】この記事公開後にナムさんとユンギが酒を飲み交わす素敵動画が公開されたので、後で見返す用にここにも貼っておきます。ちょうどここで考えてたことと通じる部分もあって感無量…。

ナムさん、思ったより元気そうでよかった。彼は創作で吐き出したら前に進めるタイプなんですね。これから30代も楽しんでいってほしい。

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