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映画 新聞記者レビュー

内閣情報調査室の若きエリート杉原拓海(松坂桃李)と、架空の東都新聞社会部記者である吉岡エリカ(シム・ウンジョ)が内閣情報調査室の陰謀と戦う映画である。

杉原の上司、神崎は政府が生物兵器の研究機関を大学新設の名目で計画している事を報道機関に告発したことがバレそうになって自殺してしまう。

この真相を国民に伝えられるのか?という本当なら五分で終わる陳腐なストーリー。随所に望月衣塑子記者のニュース解説映像が組み込まれている。


どこが官邸VSなのか分からない。

官邸の陰謀VS正義感溢れる若き新聞記者、って言う構図を作り出したい雰囲気はわかりますが、内閣調査室というものがどんなものか、いまいち説明不足で、内調は暗いところにエリートが詰め込まれており、官邸に不利な情報の粛清をやってる、という実態をセリフや役者の演技だけで表していて、実例やデータ、海外の似たような機関との違いなどの説明が不足しています。

リアリティが決定的に不足しているんですね。

なので説得力がなく、それを補ってるのが「望月衣塑子記者のニュース解説映像」という気持ち悪さ。北朝鮮のプロパガンダニュースみたいだな、と思い、その「望月記者の自意識過剰」がプンプンしてくるんですよね。お金出して見にいかなかくてよかったな、と思いました。

日本語が不自由なヒロイン。

ヒロインはブサイクで日本語が不自由。日本の新聞社で名刺出して片言ならまず不信感もたれるでしょうに。(わかりやすいスパイ?)演技も大雑把で大目開けて口を半開きで危機感を出すという「昭和の演技」。

何を活躍してどうスクープできたのやら。とにかく記者としてリアリティが薄い。


過剰な感情表現についていけない。

「政府の肝いりで新設される大学の研究機関が実は生物兵器を研究する軍事目的で作られている」という羊のイラストが表紙の内部文書がこの女性記者(正確には新聞社のファックス)に送られてきます。

ファックスで内部告発!!という安易な方法にびっくりしますが、この怪文書を信じて裏取りに走る女性記者。しかし、この密告がバレそうになって告発した杉原拓海の上司、神崎氏は飛び降り自殺してしまいます。

そんなに追い詰められていたのか!?とびっくり。自殺するほどのことじゃ...森友問題で自殺した財務省近畿財務局職員の赤木俊夫さんをモデルにしてるのは明白なのですが、赤木さんは決済文書の改ざんを強要され、その当時の上司は次々と転属し、追い詰められていったわけで、この神崎さんは最後までシラを切ればよかったのになぁ、と思いました。だし、どこまでの覚悟で告発したのやら。

この神崎氏の自殺で吉岡エリカ記者は大泣きしますが、神崎氏との交流とか友情とかの描写がないので「なんでこんなに取材先の人のことで泣くんだ?」と「???」連発。

官邸べったり記者でアウト!

伊藤詩織さんと思わしき人物の記者会見映像が映画の中で出てきて、「セカンドレイプ」などの単語が出てきます。

しかし、未だこの伊藤詩織さんの事件は未解決です。刑事・民事共に係争中ですが、官邸の介入があったと視聴者が誤解するような作り。これはアウトです。

映画で伊藤詩織さんは白だと決めつけるのは係争相手の山口敬之さんを黒と決めつけるのと一緒です。こんな私刑行為を報道やジャーナリズムの名の下で行使していいのでしょうか。納得いかないし、不快感が募ります。

私なりに色々調べましたが、伊藤詩織さんの言ってることはほとんど証拠がなく、またご自身の著書『BlackBox』も嘘、または本人が思い込みで書いてある、と思われる箇所が散見されます。山口敬之氏への逮捕状が本当に出て、逮捕寸前で取り消しになったのか、非常に怪しいです。

(一応、私が今参加している伊藤詩織さん裁判ウォッチャーの間では高輪署の刑事が詩織さんの一方的な申告を鵜呑みにして証拠もないのに立件しようとして警視庁の刑事部から止められた、というのが真相なんじゃないか、という流れになっています。)

(手前味噌ですが、よろしければ管理人の書評を読んでみてください。「BlackBox書評・ポンコツ女のメンヘラ日記」 )

望月衣塑子記者は頻繁に伊藤詩織さんを公的なイベントに連れ出していますが、なるほど、自分の主義主張(官邸の闇と戦う私)のためのアクセサリーなんだな、と思いました。

伊藤詩織さんが民事で負けたらどんな友情を見せるのか、私はそこに興味が移りました。

簡単に国家戦略的重要書類を写メできる日本への危機感。

杉原拓海は神崎氏が告発した内部文書を上司の机の引き出しから発見。写メしまくりますが、「ええ?あの、それ引っ掛けならどうするつもりなんや?」と思いました。内調は重要書類の引き出しに鍵かけんのか?こんなに簡単に内部文書持ち出されるって日本は大丈夫なの?と思いました。

日本の報道機関ではなく、韓国とか中国とかの報道機関や政府に持って行かれたらアウトでしょ。

ラストは新聞記者の破滅なのか栄光なのかはっきりせい!

杉原拓海は内調の参事官である上司多田(田中哲司)に吉岡記者へ情報提供している事を見抜かれ、杉原が戻りたがっている外務省への転属を匂わされます。苦悩する杉原。実に簡単でわかりやすい。もしかしたら杉原は外務省へ行きたくてこんな事をしてるんじゃないかと思わせる展開です。何か重要機密を扱う人にしては覚悟が全然ないんですね。持ち出したならそれなりの覚悟がないと。一応は背信行為をしてるんですから、バレたらとんでもないことになるのは分かりきったことでしょうし。

ラスト、杉原が吉岡記者を裏切るような不穏な空気で突然終わります。見てる方は消化不良。

私が杉原の上司なら(この人の演技が印象に残りました!)偽の書類を杉原に持ち出させて吉岡記者を新聞社もろとも破滅に追い込みますが、そうでないなら、吉岡記者は社長賞もののスクープを手にしたことになりますが、どちらか分からないラストでした。

なんか全体的に映画部の拗らせた学生が作ったような素人臭さと、作り手のメッセージが伝わりにくい力不足を感じました。単調でセリフが聞き取り辛く、テーマが伝わってこない。

結局、内調ってなんだろう。で、終わりました。







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