上田焚火

短編小説をぼちぼち書いていきます。別名義で、漫画原作、童話原作を執筆、出版。短編小説の…

上田焚火

短編小説をぼちぼち書いていきます。別名義で、漫画原作、童話原作を執筆、出版。短編小説の良さを、みなさんに広めたいです。

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最近の記事

映画館でトイレに行きたくなって

 映画館に行って、面白い映画を観ているときにトイレに行きたくなることほど最悪なことはない。  だから映画が始まる前に必ずトイレに行くことにしている。特にしたくなくてもだ。みんなもそうでしょ。  だけど、その日は上映時間ギリギリに映画館に入ったこともあり、特に気にすることなく座席についてしまった。そしてトイレに行っていないことに気がついたのは、上映開始から三十分が経ったときだった。  そのときは特にもよおしていなかったので大丈夫だと思っていたが、行っていないと思うと気にな

    • 『僕は偶然その曲を耳にする』

       夏になると毎年、どこかできまって耳にする曲がある。自ら聴こうと思っているわけではないんだけど、偶然ふと耳に止まる曲だ。  今年は、今日、うちの奥さんと行ったカフェでクリームソーダを飲んでいたら、偶然その曲がかかった。  ああ、今年も聞けたなぁ、と少し安堵する気持ちでその曲を聞いた。僕にとっては夏の風物詩のようなものだ。  その曲とは『イパネマの娘』のことだ。ボサノバの代表的な曲で、世界で二番目にカバーされた曲だと言われている。(ちなみに一番はビートルズの『イエスタディ

      • 誰かと手をつなぐのって得意ですか?

         突然ですが、みなさんは誰かと手をつなぐのって得意ですか?  いやいや、手をつなぐ、のに得意も不得意もないよ、なんて思っているあなたは、手をつなぐのが得意な人なんだと思う。  僕はたくさんの苦手を持っているが、その中でもベストスリーに入るほど、誰かと手をつなぐのが苦手だ。  理由は簡単。僕の手がほとんどいつも汗でネチャネチャと濡れているからだ。もちろんサラサラなときもあるけど、何かを意識した途端にじわじわと汗で濡れてしまう。  もう気にすれば気にするほどネチャネチャと

        •  物覚えが悪い僕の記憶法

             これもどうでもいい話なんだけど、僕は覚えるのが苦手だ。そのせいで僕は学生時代にさんざん苦い思いをさせられた。  たとえば、英語の単語なんかだと、ページの頭から覚えて、最後の単語にたどり着いた頃には、初めの方のほとんどの単語を忘れているという有様だ。一つ覚えれば一つ忘れるという具合だった。  それでも何とか大学受験で合格できたのは、ある方法を試したからだ。  問題は根本的なところにあった。そもそも覚えられないのは、すぐに忘れてしまうからだ。それならば、初めから覚えな

        映画館でトイレに行きたくなって

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        • エッセイ
          7本
        • チェコ旅行記
          19本
        • 童話
          3本
        • ポーランド旅行記
          20本
        • 短編小説
          13本

        記事

          眠たっていいんじゃないかな

           どうでもいい話なんだけど、昼寝ってどうしてあんなにも気持ちがいいんだろう。  特に真夏の猛烈に暑い午後、外から帰ってきてシャワーを浴び、部屋をエアコンの冷風でキンキンにして、ソファやベッドにゴロンと転がって眠るのは、最高だ。これ以上の幸せはないんじゃないかと思う。  特に忙しくない夏の日には、この昼寝が楽しみで仕方がない。  たまにそんなに寝たら夜眠れないじゃなかと心配になるほど眠ってしまうこともある。だけど僕の体は不思議なもので、夜になり午前0時を過ぎると眠くなる。

          眠たっていいんじゃないかな

          悪魔との取引き

           どうでもいい話なんだけど、僕は物を集めるのが苦手だ。というか物をコレクションする趣味をまったく持っていない。なんでなんだろう。集めることにまったく興味が持てない。  一方、うちの奥さんは集めるのが大好きだ。冷蔵庫にべだべたと貼ってある海外のマグネットは、彼女がせっせと買い集めた物だ。僕も同じ様に一緒に旅行に行っているのに、まったく興味がわかない。  うちの奥さんが集めているのは、マグネットだけじゃない。旅行に行くとその土地の食器を買うのも趣味だし、最近は集めるのをやめて

          悪魔との取引き

          ずっと同じ髪型であきないのか?

           どうでもいい話なんだが、ふと、僕はもう二十年以上同じ髪型をしているのだなぁ、と気がついた。坊主頭だ。  それも自分でやっている。だいたい二週間に一度の割合いで、ひとりバスルームにこもり、真裸になって髪を刈るのだ。  特に神聖な儀式ではないんだけど、なんだか坊主頭にする瞬間は引き締まった気持ちになるからおかしい。  ときに失敗を犯した人が、頭を丸めることによって、償いの気持ちを表すことがあるが、僕はそれを月に二回も行っていることになるからかもしれない。  しかしまぁ、

          ずっと同じ髪型であきないのか?

          『小さな旅』

           どうでもいい話なんだけど、八月の末に一泊旅行を予定している。  僕ら夫婦は、もう限界だったのだ。普段なら三ヶ月に一度の割合いで海外旅行をしている。それが知っての通りコロナの影響でどこにも行けないからだ。  どこかへ行きたい、という思いは、まるでネズミ捕りのトリモチのように僕の頭の中にべっちゃりとひっついて剥がれない。  もちろんこんな時期に旅行をすることが、良いことだとは僕だって思わない。もちろん奥さんも。  そこで、近場でいいからどこか一泊でもできればいいんじゃな

          『小さな旅』

          「このやり場のない気持ちをどこに向けたらいいのか?」

          昨日、うちの近所の唐揚げ屋さんの前で、店員さんと客の男が揉み合いの喧嘩になっている場面に遭遇した。 しばらく静観していたのだが、客の男が店員に暴力を振るい始めたので、さすがに見過ごすことが出来ず、止めに入った。 そして、警察にすぐに通報するように店へ促すことにした。 喧嘩が始まったのは、店員が男に店のラストオーダーは終了していることを伝えた瞬間からだった。 ご飯を食べられなかった男は、午後八時というあまりにもはやい閉店時間に怒りを表したらしい。

          「このやり場のない気持ちをどこに向けたらいいのか?」

          『旅はうまくいかない』⑲

          チェコ編⑲「旅の最後に」 遅延もなく無事にモスクワに到着した。おまけに乗り継ぎのカウンターには誰も並んでいる人がいなかった。 コピーされたバウチャーを出すとすぐに成田までの航空券を発券してくれた。そして次に向かうパスポートコントロールも並んでいるのは数人で、十分も待たずに通過できた。もちろん荷物検査も待つことはない。 「えっ、これで終わりなの?」と妻が言った。 これが悪名高きモスクワでのトランジットなのだろうか。話に聞いていたのとはまったく違った。並びもしなかったし、

          『旅はうまくいかない』⑲

          『旅はうまくいかない』⑱

          チェコ編⑱「旅はまだまだ終わらない」 ショッピングモールに大人のおもちゃ屋さんがあった話をすると、P君は声を上げて笑った。 時刻は午後八時をまわっていた。ホテルの地下にあるレストランで僕らは食事をとっていた。三人は同じようにカツレツを注文していた。他にサラダやビールまでついている豪華なものだ。 よく考えると、これまでのチェコ旅行で一番のご馳走だった。これらはすべてアエロフロートからのおごりだ。これなら遅延も悪くなかった。 「僕が眠っている間にそんな所に行ってたんですね

          『旅はうまくいかない』⑱

          『旅はうまくいかない』⑰

          チェコ編⑰「さらにもう一泊」 「え、チェコのプロ野球でプレーしてたの?」と僕は思わず聞き返してしまった。 「そうなんです。野球をやってた、と大学の友人に言ったら、できる場所があるって連れていかれた所が、プロ野球だったんです。一ヶ月間練習に出ていたんですが、まったく気がつかなくて、試合の球場にあるスポンサーの広告を見て、何か変だな、とそれで『もしかして、これってプロなの?』って」 僕らはP君の話に大笑いした。飛行機が遅延したおかげで知り合ったP君は、日本体育大学の四年生で

          『旅はうまくいかない』⑰

          『旅はうまくいかない』⑯

          チェコ編⑯「またまたトラブル!そして思わぬ出会い」 列の先頭にいるインド人の家族は、かれこれ十五分ほど空港のカウンターにへばりついていた。 せっかく三時間ほど前に空港へ来ているというのに、この分だとどんどん時間がなくなっていく。 カンターの男性はひたすら何かを説明しているが、インド人は首を横に振るばかりだ。 「なにやってんだよ」と僕もイライラしてくる。 ここプラハからモスクワまでの二時間半ばかりの飛行機だ。何をそんなに揉めることがあるのだろうか。まったく理解できなか

          『旅はうまくいかない』⑯

          『旅はうまくいかない』⑮

          チェコ編⑮「予定のない一日」 ゆっくりと朝食を済ませると、さて今日は何をするか、ということになった。昨晩遅くミクロフからプラハに帰ってきた。ミクロフには一泊しただけだったが、プラハに帰ってくると、ほっとするものがあった。まだ日本に帰ってきたわけではないのに。 これが旅行内小旅行のいいところだった。拠点を置いて小旅行をすることによって、戻ってくるという感情がわくのだ。つい五日前にプラハにやって来たばかりだと言うにの、なんだか景色が懐かしく感じるほどだ。 明日の午後には飛行

          『旅はうまくいかない』⑮

          『旅はうまくいかない』⑭

          チェコ編⑭「やっぱりまたトラブル」 とにかく暑いのだ。ホテルを午前十一時に追い出せれたが、特に行く場所もなかった。エアコンの効いているカフェを探したが、そんなものはこの町にはない。さてどうするかなぁ。困ったことになった。列車の時間まで四時間以上ある。 どこかでビールでも飲もうか、とも思ったが、ちょうどタイミング悪くどの店も席がいっぱいだった。おまけに店の室内は暑い。そして外のテラスはもっと暑かった。 僕らはどこか涼める場所はないかと、あてもなくさまよい歩いた。そしてやっ

          『旅はうまくいかない』⑭

          『旅はうまくいかない』⑬

          チェコ編⑬「何もないを楽しむ」 どのくらい眠ってしまったのだろう。部屋に戻りシャワーを浴びたあと、ベッドに転がっているうちに眠ってしまっていた。昼間は暑いと感じていた部屋だったが、扇風機を回せばそれほどでもなかった。 小さな窓から見える空はまだ明るかったが、時計を見ると午後八時をまわっている。顔を出してみると、昼間の暑さはそんなにも感じない。むしろ気持ちいい風が吹いているくらいだ。 僕らは貴重品だけを持って、ホテルを出ることにした。ふと見ると、下り坂になっている西側の通

          『旅はうまくいかない』⑬