上田焚火

短編小説をぼちぼち書いていきます。別名義で、漫画原作、童話原作を執筆、出版。短編小説の良さを、みなさんに広めたいです。

『夢見るミミズ』(童話)

(あらすじ)
「蝶々になって飛んでみたい」無謀な夢をもったミミズは、幾多の困難をこえて夢を叶えようとするが…夢にやぶれたすべての人たちに送る、大人のための寓話。

ある所に、一匹のミミズがいました。特別に変わったところのない、どこにでもいる普通のミミズです。

ミミズ君はいつも土の中深くで生活しています。そこは安全で快適ですが、楽しみの少ない場所でした。

ある日、土の中がつまらないと感じたミミズ

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『幸せを探す旅人』(童話)

(あらすじ)
旅人は幸せを探していた。しかし、そう簡単には見つからない。お金があれば、愛する人がいれば、子どもがいれば、不幸な人たちを目にした旅人は、最後に意外なことから、幸せは何かを知ることに…

旅人は、もうすでに四年もの間、様々な国を渡り歩いていました。

 幸せを探していたのです。ですが、どの国どの場所にも幸せを見つけることはできませんでした。 

 そもそも幸せが何であるかも、旅人は知ら

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『イノシシを撃て!』狩猟同行記

友人の狩猟に同行することになった。都会育ちで軟弱な私は、命をいただくことの意味を少しずつだが、理解しようとしていた。

弾丸が池の水面を跳ね上げると、銃声が雪の散らつく重い空にこだました。鳥たちが逃げていく。

耳が痛い。次の瞬間、あたりに一面に広がった火薬の匂いが鼻をつく。懐かしい。子供の頃に遊んだ癇癪玉と同じ匂いだ。

だが、これは遊びではない。本物の散弾銃から放たれたのだ。

こんなとこ

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『タキシードを着た犬』(童話)

ボストンテリアという犬をしっていますか。

ピョコンと立った耳に、はれぼったい眼、潰れたように短い鼻を持ち、体は白と黒で、まるでタキシードを着ているような小柄な犬です。

その店に飼われていた犬もボストンテリアでした。名前をトウフと言います。トウフはその店の若い夫婦が可愛がっている犬です。

お散歩とボール遊びが大好きで、それ以外のときは、ずっと店の片隅でじっとしているどこにでもいる普通の犬でした

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「おお、わが総統!」短編小説

《あらすじ》近未来、その国はO型とA型の人たちによって支配されていた。彼らはB型を憎み、絶滅させようと計画する。ある日、リーダーである総統が、何者かに狙撃される事件が勃発して…(SF.ショートショート)

「どけ、運転を代われ!」

いてもたってもいられなかった。運転手が降りると、私はすぐに後ろの座席から飛び出して、ハンドルを握った。

「長官、病院の場所はこちらになります」

運転手が窓から地図

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「ただ行ってみたくて」ポーランド編 最終話

人はみな、生まれ育った国が一番好きなのだ。それは自分の国を離れた者だけが強く感じる、素敵な皮肉だった。

飛行機に乗れば酔い、枕が変われば、眠れない、食べなれない物を口にすれば、お腹を壊す。そんな軟弱者だが、知らない場所には行ってみたい。冒険などではない、旅と呼ぶのもおこがましい、理由などない、ただ行ってみたいだけだ。

今回は、馴染みの薄いポーランドへ。美人に浮かれ、ビールを飲みまくり、料理

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