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チェコ旅行記

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記事一覧

『旅はうまくいかない』⑲

『旅はうまくいかない』⑲

チェコ編⑲「旅の最後に」

遅延もなく無事にモスクワに到着した。おまけに乗り継ぎのカウンターには誰も並んでいる人がいなかった。

コピーされたバウチャーを出すとすぐに成田までの航空券を発券してくれた。そして次に向かうパスポートコントロールも並んでいるのは数人で、十分も待たずに通過できた。もちろん荷物検査も待つことはない。

「えっ、これで終わりなの?」と妻が言った。

これが悪名高きモスクワでのト

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『旅はうまくいかない』⑱

『旅はうまくいかない』⑱

チェコ編⑱「旅はまだまだ終わらない」

ショッピングモールに大人のおもちゃ屋さんがあった話をすると、P君は声を上げて笑った。

時刻は午後八時をまわっていた。ホテルの地下にあるレストランで僕らは食事をとっていた。三人は同じようにカツレツを注文していた。他にサラダやビールまでついている豪華なものだ。

よく考えると、これまでのチェコ旅行で一番のご馳走だった。これらはすべてアエロフロートからのおごりだ

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『旅はうまくいかない』⑰

『旅はうまくいかない』⑰

チェコ編⑰「さらにもう一泊」

「え、チェコのプロ野球でプレーしてたの?」と僕は思わず聞き返してしまった。

「そうなんです。野球をやってた、と大学の友人に言ったら、できる場所があるって連れていかれた所が、プロ野球だったんです。一ヶ月間練習に出ていたんですが、まったく気がつかなくて、試合の球場にあるスポンサーの広告を見て、何か変だな、とそれで『もしかして、これってプロなの?』って」

僕らはP君の

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『旅はうまくいかない』⑯

『旅はうまくいかない』⑯

チェコ編⑯「またまたトラブル!そして思わぬ出会い」

列の先頭にいるインド人の家族は、かれこれ十五分ほど空港のカウンターにへばりついていた。

せっかく三時間ほど前に空港へ来ているというのに、この分だとどんどん時間がなくなっていく。

カンターの男性はひたすら何かを説明しているが、インド人は首を横に振るばかりだ。

「なにやってんだよ」と僕もイライラしてくる。

ここプラハからモスクワまでの二時間

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『旅はうまくいかない』⑮

『旅はうまくいかない』⑮

チェコ編⑮「予定のない一日」

ゆっくりと朝食を済ませると、さて今日は何をするか、ということになった。昨晩遅くミクロフからプラハに帰ってきた。ミクロフには一泊しただけだったが、プラハに帰ってくると、ほっとするものがあった。まだ日本に帰ってきたわけではないのに。

これが旅行内小旅行のいいところだった。拠点を置いて小旅行をすることによって、戻ってくるという感情がわくのだ。つい五日前にプラハにやって来

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『旅はうまくいかない』⑭

『旅はうまくいかない』⑭

チェコ編⑭「やっぱりまたトラブル」

とにかく暑いのだ。ホテルを午前十一時に追い出せれたが、特に行く場所もなかった。エアコンの効いているカフェを探したが、そんなものはこの町にはない。さてどうするかなぁ。困ったことになった。列車の時間まで四時間以上ある。

どこかでビールでも飲もうか、とも思ったが、ちょうどタイミング悪くどの店も席がいっぱいだった。おまけに店の室内は暑い。そして外のテラスはもっと暑か

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『旅はうまくいかない』⑬

『旅はうまくいかない』⑬

チェコ編⑬「何もないを楽しむ」

どのくらい眠ってしまったのだろう。部屋に戻りシャワーを浴びたあと、ベッドに転がっているうちに眠ってしまっていた。昼間は暑いと感じていた部屋だったが、扇風機を回せばそれほどでもなかった。

小さな窓から見える空はまだ明るかったが、時計を見ると午後八時をまわっている。顔を出してみると、昼間の暑さはそんなにも感じない。むしろ気持ちいい風が吹いているくらいだ。

僕らは貴

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『旅はうまくいかない』⑫

『旅はうまくいかない』⑫

チェコ編⑫「チェコの田舎町ミクロフは素敵なところだった。すぐに僕らは気に入ってしまう」

その三十分は夢の時間だった。

列車は大草原の中をひたすら走っていく。僕は立ち上がって、窓の外の景色を眺めた。

目の前には一面の緑が広がっていた。これがモラヴィアの草原なのだろう。日本の観光客の中には、プラハから専用のドラバーを雇って見にくるほどの景色だ。

ただ地元の人にとっては、見慣れた平凡な景色なのだ

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『旅はうまくいかない』⑪

『旅はうまくいかない』⑪

チェコ編⑪「都会のプラハを離れて、田舎町のミクロフへ。列車の旅はいいものだ」

小さなバッグに一泊分の荷物だけを入れてホテルを出た。

建物の間に見える空は澄み渡っていた。今日もいい天気だ。

プラハに来てからずっといい。僕には金運も恋愛運も仕事運もなかったが、昔からお天気運だけはあった。

「あなたと旅行すると必ず晴れるよね」といつも妻が言ってくれる。

彼女は自他共に認める雨女だった。僕と出

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『旅はうまくいかない』⑩

『旅はうまくいかない』⑩

チェコ編⑩「ついに念願の混浴サウナへ。チェコ美人と遭遇」

「ドブリーデン!」とチェコ語で挨拶されると、僕はドキッとしてしまった。何しろ目の前の女性はまっ裸だったからだ。僕はそのときプラハのサウナにいた。

「ああ、あの、ドブリーデン!」と僕は目のやり場に困りながら、かろうじて言った。

チェコのサウナが混浴だと聞いてやってきたのだが、これほどまでにあっけらかんとしているとは思わなかった。

午後

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『旅はうまくいかない』⑨

『旅はうまくいかない』⑨

チェコ編⑨「旅を上手になる必要はない。いつまでも初心者の方が、旅は楽しい」

午後三時過ぎに僕らはホテルに戻ってきた。部屋でしばらく休もうと考えていたのだ。もちろんベッドメイクは午後五時まで終了しないことはわかっている。ならば、ベッドメイクが来るまでの間、部屋でゆっくりしていればいいだけのことだ。

いつ来るのか分からないので、落ち着かないことは落ち着かないのだが、ここはチェコだ、そんなことを気に

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『旅はうまくいかない』⑧

『旅はうまくいかない』⑧

チェコ編⑧「それなら、もう一杯ビールを!」

飛行機に乗れば酔い、枕が変われば、眠れない、食べなれない物を口にすれば、お腹を壊す。そんな軟弱者だが、

知らない場所には行ってみたい。 今回はチェコのプラハと田舎町ミクロフへ。チェコビールを飲みまくり、混浴サウナにドギマギし、熱波のヨーロッパにヘキエキする。旅はうまくいかない方が面白い。チェコ八日間の旅。

ほどほどにプラハ城を見学して、観光客が増

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『旅はうまくいかない⑦』

『旅はうまくいかない⑦』

チェコの旅⑦「ミュシャのステンドグラスよりも美しいもの」

飛行機に乗れば酔い、枕が変われば、眠れない、食べなれない物を口にすれば、お腹を壊す。そんな軟弱者だが、知らない場所には行ってみたい。

今回はチェコのプラハと田舎町ミクロフへ。チェコビールを飲みまくり、混浴サウナにドギマギし、熱波のヨーロッパにヘキエキする。旅はうまくいかない方が面白い。チェコ八日間の旅。

どうしても切符が買えなかっ

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『旅はうまくいかない』⑥

『旅はうまくいかない』⑥

チェコ編⑥「チェコの生肉は最高だった」

飛行機に乗れば酔い、枕が変われば、眠れない、食べなれない物を口にすれば、お腹を壊す。そんな軟弱者だが、知らない場所には行ってみたい。

今回はチェコのプラハと田舎町ミクロフへ。チェコビールを飲みまくり、混浴サウナにドギマギし、熱波のヨーロッパにヘキエキする。旅はうまくいかない方が面白い。チェコ七日間の旅。

「どうしてベッドメイクが終わってないわけ」と

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