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宙からの琴の調を聞きたくて [#0 アドマイヤベガの血を継ぐ牝系を訪ねよう]

はじめに

このシリーズは競馬記者をやっているわけでも競馬に関する本を執筆しているわけでもない、ただの一端のオタクが生み出した駄文なので独自の解釈や間違った見解をしている場合があります。もしそういった箇所を書き連ねているようであれば指摘していただけるとありがたいです。

一目惚れだった、ウマ娘のアドマイヤベガ

2021年2月24日に始まったゲーム「ウマ娘プリティーダービー」。
そのブームに乗ずる形で私も「ウマ娘」を始めた。

まだ右も左も分からなかった頃、とりあえず始めてみたアグネスタキオンの育成。そのさなか、共通イベントである「追加の自主トレ」にて、あるウマ娘が登場した。

その容姿や声は言わずもがな、かつて天文部部長を務めるまでの天体好きだった僕にとってその名前も一目惚れだった。

アドマイヤベガ

プレイアブルキャラクターとして登場する(さらに沼に堕ちる)のはサービス開始から約1年後(2022年2月16日)の話だが、好きになったものはとにかく調べあげないと気が済まない私は、実馬のアドマイヤベガや競馬の世界のことも掘り下げていったいった。

牝馬二冠馬ベガに日本競馬の革命児サンデーサイレンスを配した血統背景、「ROAD TO THE TOP」でも描かれたようにテイエムオペラオー、ナリタトップロードらと共に3強と呼ばれる実力。その中で勝ち取ったダービーの栄光。

もちろんその裏にあった、彼の苦難や悲嘆も知った。

双子での受胎が判明した時は基本的に片方を潰さなくてはならないこと、「沈黙の日曜日」の翌週に行われた新馬戦(鞍上は武豊騎手)で降着処分を受けたこと、大事な1冠目となる皐月賞は体調不良で実力を発揮できなかったこと、最悪の上を行く最悪の展開が待ち構えた菊花賞、繋靭帯炎により3強のうち最初の引退を余儀なくされたこと……

でも、それ以上にショックな、受け止め難い事実があった。

直に届かぬ琴の調

競馬は「血」の繁栄と淘汰が絶え間なく繰り返される世界である。

そんなことを理解し始めたころ、僕はアドマイヤベガの直系は残っていないのだろうかと調べてみることにした。

はじめに重賞勝ちの産駒を探してみる。例外はあるものの、未来に血を残すためには優秀な成績を残すことが暗黙の前提条件として求められるのがこの世界だからだ。

2005年中山大障害勝ち馬、テイエムドラゴン
2006年桜花賞勝ち馬、キストゥヘヴン
2008年マイルCS勝ち馬、ブルーメンブラット
2010年中山GJ勝ち馬、メルシーモンサン

GⅠ馬はこの4頭、他にも中山金杯連覇を果たしたアドマイヤフジや小倉重賞を得意(ニホンピロレガーロ、サンライズベガ、オースミスパーク)とするなど、多彩な方面で活躍を示す産駒が見つかった。重賞勝ちこそなかったものの、2着5回3着6回と上位の実力を示し続けたトウショウシロッコの存在も忘れてはならないだろう。

だが、思っていたほど数が少ないように思えた。
そしてその感覚は正しかった。

残された世代数は、4。

2004年10月29日、アドマイヤベガは疝痛に倒れたのちに胃破裂を起こし、宙のターフへと翔けてしまったのだ。

今の私たちが、数々の名馬を送り届けているドゥラメンテの早逝の悲しみに暮れたように、多彩な重賞勝ち馬を輩出することになるアドマイヤベガの早逝も当時のファンにとっては悲しまれる出来事であっただろう。

桜花賞勝ち馬となる競走馬が冠した「キストゥヘヴン(天国へのキスの意)」という名前からも、その思いは汲み取れる。

そして結論を言えば、アドマイヤベガの後継種牡馬は存在しなかった。

それでも僕は琴の調を聞きたくて

「血統表でアドマイヤベガの名を見続ける」という夢を叶えるには、既に繁殖入りを果たしている牝馬たちが子を産み、その子がまた無事に種牡馬/繁殖入りするほかない状況にある。

だが幸い、先述したブルーメンブラットやキストゥヘヴンの2頭のGⅠ牝馬が誕生したことや交配相手に恵まれたこともあってか、競馬新聞の馬柱をくまなく探すと意外と母父欄に「アドマイヤベガ」の名が刻まれている。

また、母父にアドマイヤベガの血を持つ牝馬が繁殖入りして、サンデーサイレンスの3×4、いわゆる「奇跡の血量」と呼ばれるクロスも組みやすい状況下にある。

現状、このクロスを持ったアドマイヤベガの血を継ぐ馬で重賞勝ちを果たしているのは1頭のみ、それも悲運なことに夢の大舞台にて虹の橋を駆けることになってしまったが、今後も名馬が生まれる可能性にも期待できよう。

そこで、アドマイヤベガの血を繋ぐ牝系についてもっとみんなに知ってもらいたいと思い立って始めるのがこの「宙からの琴の調を聞きたくて」シリーズだ。まだまだ私自身の血統に関する知識は浅いかもしれないが、この記事を通じて少しでも興味・関心を抱いてくれる一助となれば幸いである。

今回は序論的な立場なので紹介は次回から。
#1は2024年のNHKマイルカップにて一花咲かせんと駆けた、彼に繋がるお話を。

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