孤独、都市、ユーモアなきなんとか – アパレルは死なへんで

孤独

東洋経済オンラインの「中高年男性が軒並みハマる「孤独」という宗教」を読みました。

記事によると、中高年の間で「孤独」がもてはやされているらしい。連帯感を築いていこうとする世界的な潮流に逆行するこの動きは、昭和世代にありがちな「痩せ我慢精神」に由来している。人の「つながりたい」という本能的な欲求を我慢することは不自然だし、それを他者への強要が引き起こすリスクもある。
無職童貞アラフォーの僕、心当たりがありすぎる。つらみ。

ところで、ある反社会的な業界では「孤独」を「発明」したのは19世紀のロマン主義人士たちというのが定説になっています。当時の社会は資本主義化が加速度的に進行中。いやましに大衆化していく社会へのアンチの態度として、文学者や哲学者によって孤独が発明inventioneされた。
命を狙われる危険があるのでこれ以上話せませんが・・・。

そういう「オレッチは凡人とは違うもんね~!」というウエメセから孤独は生まれたので、同時に既存の枠に収まらない「天才」を意味しました。カール・ラガーフェルド大帝も「孤独は貴族の楽しみやないか~い!」と乾杯しています。

僕がまだヤンチャだった頃、イキり倒して港区の路上で爆睡するという粗相をやらかしてしまったことがあります。ちょうど今頃の秋の時分、低い月がとても綺麗でした(遠い目)。

朝3時過ぎだったと思う、突然ダダダダダダダ・・・!!!!という連続する機械音がして、叩き起こされたんだ。信じられないことにミシンの音だった。深夜の閑静な住宅街(港区)で。
「アレッ!?僕、インドネシアに島流しされてるんだっけ?いやいや!納期絶対無理ですやん!!!!ジョバーッ(失禁)」と得意のPTSDを発症しましたが、ほどなく落ち着き、タクシーでおとなしく帰宅した。
そこがアトリエだったということをthe Soloist.のローンチ後に知った。すごくドラマチックな出来事でしょ?ま、買ったことないんだけどさ。

ファッションは物騒なこと、スキャンダル、ゴシップが大好きで、露悪趣味があるので、孤独も大げさに表現しがち。つまり、よく死にたがる(死ぬとは言ってない)
ソロ下は昔おきもち不良で1年間お休みしたあと、突然" touch me, i am sick "とか言い出すし。変態かよ。ヴィヴィアン女史は" too young to die "って言うTシャツを何十年も売りさばいてるけど、ご本人はまだまだ現役。Rick師匠はあぶく銭のためにこんなことまでやらされてる。代わってあげたい。



死と戯れているわりに、ハイアート、文学、音楽のセカイと比較してデザイナーで自死を選ぶ人数は少ない。夭折も少ない。そういう統計があるわけではないので、勝手にそう思ってるだけなんですけどね。
最近だとKate Spadeが悲しい結末を迎えてしまいましたが、他に思い当たるのはAlexander McQueenくらい。

悲劇の天才タイプが少ないのは、ファッションは意識している or していないに関わらず、社会との「つながり」がある程度は保証されているからなのではないか、と思います。生活必需品で、政治や経済ともドップリだから一定の需要が見込める。

もう少し閉鎖的でハイなセカイに目を向けても、ヒエラルキーとマーケットが確立しているので、突然困窮することは珍しいように思う。
ひとつの美意識に奉仕したいのであれば、Jean-Paul GaultierやVICTOR&ROLFのようにプレタをやめてオートクチュールを選ぶ道もある。Hedi Slimaneのようなワンパターンが得意ならヒット&アウェイ(写真撮影費用を短期間で荒稼ぎしてる説)。Alber ElbazやIsabel Mallantのようにグローバル企業とコラボして、クリエイションのにおいをマスに届けて取り急ぎのおまんまを確保する作戦もある。生存戦略は多岐にわたる。

モードはコレクションに常に一貫性を求めるわけでもないし、アトリエワーク、分業が基本。デザイナー個人の才能が枯渇するという苦難に陥りにくい(ように見える)のも、大きなストッパーになるのかもしれません。

ファッション業界は忙しく、どう見てもYKK#580ですね!ありがとうございます!!な、やりがい搾取のセカイだ。
だけど「つながり」という、いのちのセーフティーネットとして同時に機能するので、どうしても死を選択しなければいけないような切羽詰った状況、打ちのめされた心境に陥りにくいジャンルなのだろう。


都市

ファッションが「つながり」と密な関係にあることは、カルチャーとしてのファッションが都市にしか生まれないことからも明らかだ。都市がファッションを必要とし、伝統的な価値観がファッションの評価基準を醸成する。

ヴァルター・ベンヤミンの画期的なモード論は都市研究の過程で生まれた。ヴィム・ベンダースが撮ったヨウジヤマモトのドキュメンタリー映画が『都市とモードのビデオノート』だったのはヴィムの慧眼としか言うほかないし、恋達師匠も地域別に(丸の内、恵比寿、下北沢など)モテファッションをコンサルしていますよね。

都市と評価というところで、WWDに興味深い記事がアップロードされました。
ざっくり要約すると、HediによるCELINEの評価がパリとニューヨークでは異なっている。ニューヨーク勢の評価が軒並み低い。その理由は自由の価値観の違いにある。ニューヨークの自由はLiberty、「後天的に勝ち取るもの」と一般に考えられている。ミニ丈一遍到な提案ばかりのHedi(男性)は女性搾取している、と。
全文は下記からどうぞ。ライターの生身の体験、嗅覚があればこそ、といった文章。日本語で読めるCELINEのレビューではこれが一番好きだな。


パリとニューヨークの都市とファッションの違いについては、南谷えり子氏、井伊あかり氏の『東京・パリ・ニューヨーク ファッション都市論』が丁寧に教えてくれます。非常によい。文庫本で読めます。
2004年出版なので情報が少し古いけど、かつてのモード業界のイケイケドンドン!な空気感が伝わってくる(ガリアーノ様の全盛期)。

僕は今、江戸時代の庶民文化が栄えた地域を生活圏としているのだけど、ここにはかつて呉服屋、市場、落語の寄席、遊郭があった。きっと路上でたくさんのカチコミもあったのだろう。まさに江戸のPIGALLE。群衆、モテ、笑い、服、飯。そういう雑多なストリートで「粋」という美意識と装いが生まれたわけだ。
俗っぽいカルチャーは一箇所に集中して&同時多発的に生まれて発展することがほとんど。「ファッションだけにこだわるやつはダサイっていう主張はやはり正しいよな〜~」と、その辺を遊歩しながら思った次第。


ユーモアなきなんとか

代官山に総本山を置く秘密結社、アルチザン教へ入信するには、証人5人以上の前で「ユーモアなきファッションは死!!」と全裸のまま10回叫ぶ必要があることは知ってるやろ?

ステファン・シュナイダーの金言が人を惹きつけて止まないのは、「死」という蠱惑的な言葉の響き以上に「ファッションにとってユーモアは極めて重要である」という主張の妥当性によってやと、ウチ思ってんねん。
オチもイロモノもないパリコレ、ほんまにパリコレって呼べるん?真打ちのRick、ヨウジ、トム・ブラウンが参加しないパリコレ、みんな楽しいと思う?

けどね、今ね、ファッションの産業的な側面(いわゆるアパレル)にスポットを当てた記事はね、ネガティブで過激なタイトルがめっちゃ増えてん。
雑誌『日経ビジネス』の2016年10月3日号で「買いたい服がない アパレル“散弾銃商法”の終焉」っていう特集が組まれて、関心を集めたのがキッカケだったと思うねんけど。
杉原淳一氏と染原睦美氏はこの特集の後もアパレルへの取材が続けはって、2017年に『誰がアパレルを殺すのか』を出版したんやけど、これもヒットしてん。下記のページでは杉ちゃんによる概略が読めるで。

杉ちゃんと染ちゃんによるアパレル特集や。毒、病、タイタニック・・・。

「アパレル叩きブーム」に便乗したのか分かれへんけど、この頃からやな、他のライターが過激なタイトルの記事を雑誌、WEBにめっちゃ書くようになったんは。尻馬に乗るっちゅーやつやな。
タイトルもせやけど、ウチが前働いてた会社やと100パーコンプラ違反な内容を平気で公開してる人が普通におって(顧客の悪口とか、投融資案件)、正味引いてんけど。もしバレたとして、大丈夫なん??

話戻すけど、タイトルが過激な記事のほとんどが、杉ちゃんの見取り図を下敷きにしてんねん。でもね、ウチが納得できるようなものはなかってん。
前提となる見取り図(グローバルSPA VS 国内アパレルメーカー)をちょっといじったもの、問題点の一部を切り取って膨らませたもの、打開策としてすでに提案されている内容をdisりながら繰り返すもの・・・。
曖昧な定義と必要以上に難解なカタカナ語のオンパレードやねん。出たわねって感じや。

あんまりこういうこと書きたないねんけど、一個だけ書かせて!先謝るわ、ごめんな!飴ちゃんあげるわ!!
あんな、インダストリーって何やねん!正味わからへん。っていうか芸大出身の友達は現代アートはインダストリーって言ってはったよ??
そら、ZARAちゃんと比べたらあれやけど、Hediのサンローラン、昨対でめっちゃ儲かってたやろ???プレタポルテは完全にマーケット+インダストリーのセカイやろ?何が言いたいのか、論旨が見えてこーへん。

アパレル門外漢の杉ちゃんは「外注OEM+薄利多売による成長鈍化はアパレル産業に限ったことではないんやで〜」(成熟した資本主義社会の必然的帰結)ってちゃんと言ってはる。食品も、家電も事実そうなってるしな。
せやから、アパレル事情通が(それを隠して?)「アパレルガーーー!」って大声出すんはちょっと違和感あるな。アンタらも業界人やろ、何とかしたらええやんって思うやんフツー。

ウチみたいな無職だけどファッションに関心がある人間でも、ネガティブなタイトルばっかりやから「興味あるけどしんどいなぁ~・・・」ってなんねん。
普通の人の気持ち考えてみ?罵詈雑言のクリーンナップを見たら「お前、虎党か!」ゆーて、即ページ戻ると思うわ。アンタがまずオプジーボ飲みや。すぐ死のうとしたり、殺そうとするのやめようや!なっ!?

ウチの周りはファッションを心から楽しむ人ばっかりやから、なんでそういう記事がウケるのか分かれへん・・・けど、まー、あんまり言ってもしゃーないしな!
とりあえず、ステちゃんの「ユーモアを大事にしはりや」っていうメッセージの重み、やっぱちゃうな〜〜!っていう話やねん。ステちゃんはほんますごいわ、ファッション界の小津安二郎って感じやな。

ウチもファッション漫談師を名乗ってるしな、これからもユーモアと品は大事にしていきたいねん。みんなも笑えないファッション記事読むの、いい加減飽きたやろ?それ読んで「服買おかー!」ってならんやろ?買わなあかんねん。

「ちゃものオススメ服買ったよ」っていう報告をこの前もらってん。正気じゃない額をぶっこんでて嬉しかったわ〜〜。「Wellcome to the hell」(cv. 山本耀司)って心の中でつぶやいたわ。
これからも「ええものはええ!」っていっぱい褒めて、ちょっと滑ってるやつはいじり倒して、ハッピーなファッションライフを送りたいわ。みんなにお届けしたいわ。

人口は減ってる、可処分所得は減ってる、マーケットは成熟してるし、SNSで承認欲求はタダで即座に満たされる。前途多難なことはまぎれもない事実やねん。
でもな、アパレルは死なへんで!ウチが守るさかいな!!!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

26

三代目えぞ家☆ちゃも吉

場末のファッション漫談師

note編集部のおすすめ記事

様々なジャンルでnote編集部がおすすめしている記事をまとめていきます。
1つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。