アパレルの原価率と在庫問題

敬愛するZOZOの前澤社長がtwitterを一時休業宣言。率直に言ってショックだ。個人的にはイケハヤ氏、はあちゅう氏と並ぶtwitter三大聖人なので・・・。供養代わりに少し書こう。

今回のザックリとした流れは、前澤社長がtwitterで衣料品の低い原価率と常態化している値下げについてのアンケートを実施→所感をトゥイート→案の定炎上→休業宣言。
所感ではアパレル業界が抱える過剰在庫、過剰値引き、廃棄ロスといった問題提起と解決案を提示していた。



何のためのアンケート?

連投されたアンケートは一部誤解を招くとしてすでに削除されているが、誤解というか結果的にZOZO社、前澤社長の信用をただ毀損しただけ。よく考えなくても色々な角度からやべーってことは明白であり、一体あのアンケートの本意はなんだったのだろう。
何がアカンかったのか、整理してみるやで。

・ビジネスマナーの問題
他社の原価率を暴露するってファッションに限らずビジネス的にNGでしょ。

・雑な設定
衣料品の原価率は20%-30%ってのは事実なんだけど、紳士服と婦人服、日本産と中国産とミャンマー産、コートとニット…で全然違うんだよね。前提が雑すぎて論外。
それに原価10%のバッファーって発想自体、有り得ない。一企業のMDが仕入高を10%オーバーしたら役員の前で焼き土下座か便器舐めさせられるよ。「プラットホーマーがなんで物作りを語ってるの?」と失笑される格好のネタ。課題設定が雑だったために、前澤社長が意図しなかったノイジーな反応が多数寄せられることになったのではないか。

・原価算入されない価値の無視
製品原価=材料費+加工賃+運賃(+保険、通関)のみ。デザイン代、作図代、サンプル作成代、店頭での温かいサービス、ホームページのサーバー代………などなど、カタチとして見えにくい費用を削減すれば原価率は高くなる。
だけど、それは同時に「≒カルチャアとしてのファッションに価値がない」って意味にも取れてしまう。ファッションが好きで業界に身を置く人には受け入れられない発想だろう。彼らにとってファッションは単なるモノではない。だから原価率20%-30%は低くはないと考えている。

・情報の非対称性
速攻突っ込まれてたようにZOZOの販売手数料は35%と言われてる(契約時期、会社規模により差はある)。国内で手数料35%取るのは伊勢丹新宿とうめだ阪急のメインフロア位。つまりクソ高い。
手数料が下がれば、原価率を上げられる。ZOZO以前、流通業の中心が百貨店の時代からずーっと言われてきた。ZOZO社の主要ビジネスであるリスクを負わない消化仕入の適正な手数料をまず明かすべきだよね。
なおZOZO社の名誉のために書いておくが、消化仕入で手数料40%という条件のセレクトショップはごく普通にある。それと比較するとZOZO社の契約条件は良心的です。アクセス数はそこらのセレクトショップの比じゃない訳で。

・業界全体への悪影響
ZOZOに出店してるUNITED TOKYOやしまむらなど、企業努力によって原価率30%超で販売してる企業にとってはただただ迷惑。30%以下のメーカーのメンツは丸潰れ。
しかもユーザーを業界非難へと誘導するようにアンケート形式で提起するって。なんだか斬新。
「そんな胡散臭いものを買うのは止めて、ネトゲに課金しよ」ってなりかねなくない?
前澤社長は自分の影響力の大きさについて少し鈍感なのかもな。でも鈍感力はいい男の証だから、これはもう仕方ないことだ。

・おまいう…?
ZOZOがシェア拡大する前からメーカーがセールを連発してたのは事実。タイムセールとか、2個買ったら1個オマケとか…。だから言いたい。値下げしたことのない人間だけ、クソリプを投げなさい。
でもクーポン乱発、アリガトウしてる企業のエライ人がそれ言っちゃうの?ZOZOSUITの不振で在庫めちゃ増えてますよね??って普通は疑問に思うんじゃないかなぁ。

・ガバナンスがやべー
以上のように、ちょっと様子のおかしい内容が、何の統制もなく世界に発信される組織であることが露呈してしまった。
その他の事業もトップダウンで一気に明後日の方向に進むリスクがあるってこと。
ところで流通業とは信用業ではないだろうか。「あたし頑張ったけどダメだったの…次は絶対うまくやるから捨てないで……」というおきもち気質が改めて露見してしまったのが、長期的には一番の痛手かもしれない。



在庫と原価に関する問題提起と解決策

アンケートに続くツイートを整理すると…

① 過剰在庫は問題
② 在庫を減らすため値引き販売
③ それでも販売できなかったものは廃棄処分
④ 見積外費用が発生する結果、原価率が20%-30%で高止まりしている

①の問題設定に反論する人はいないと思う。
②値引きと③廃棄は事実。特に後者は社会問題として近年関心を集めている。

だけど、それだけが④低い原価率の要因じゃない繰り返しになるけど、リスクはメーカー負担で、原価より手数料が高いんだもん。原価率を高くするには生産側と販売側(と広告側)双方の協力が不可欠。そして、そもそも原価率が低いかどうかは別の議論。

原価率とプロパー消化率のアップという問題の解決案は模範解答。
販売計画の精度向上&誤差修正(AIによる需要予測、ダイナミックプライシング)、物流最適化によるコスト削減。
そして超短納期のオンデマンド生産システム、1億総オーダーメイド化………アレッ?オーダメイド事業はクオリティが致命的で、安価なファッションで満足する顧客層には需要が少なく、ハロウィン向け衣装としてばら撒き完結したっていうオチだったのでは…?

これは霊感ですけど、作る技術が進化しても作る物はそのままだから、効率化に限界がある。
同じく高原価率&ベーシックアイテムで戦うユニクロが(海外進出もしておりZOZOよりイレギュラー体型の顧客数は多いだろう)、オーダーメイド事業を全面的にやらないのは相応の理由がある、と考えるのが自然ではなかろーか。てかめんどくせーし、採算あわねーよ。



オーダーメイドとCSR

最後に廃棄問題の解決策として、積極的なリサイクルの仕組み、資源の再利用が提示されたが、理想とする総オーダーメイド化と矛盾するのではないか。

オーダー品のリサイズは難しそうだから、全く同じ体型の人と物々交換する、あるいは丈詰め、表面装飾、オーバーダイ…ニュアンスを変えて楽しむくらいしか工夫の余地がなさげ。

オーダーメイドという価値を必要としない、純粋に衣料としてリサイクルすることは可能。発展後進国にはそのニーズがある。
ただ生活スタイル、宗教、気候の問題もあるし、寄付品の流入によって地元の繊維産業が崩壊した事例もあるので…。
やり切るには相当な覚悟というか、時間と金とSCMの構築以上に根回しが必要になりそう。



資源として再利用する難しさ

加工品のままリサイクルが難しいなら、バラして再利用すればいい。だけどこっちはマジでハードルが高い。法律、地方自治体の条例によって細かく規定されている。廃棄事業者は自治体の認可制。

衣類をリサイクルするには、布くず、紙くず、資源ごみ…に分類する必要がある。更に布くずは組成によって仕分けが必要。

各部品を完全に分解しなければならない。ドットボタンや金属ハトメをどう外すのか?熱接着の芯地やシームテープをどう剥がすのか?今の技術では対応出来ず、残念ながら焼却処分の方が環境に優しい。
過剰在庫というか、過剰生産を控えるのが重要で、そういう意味では計画と生産が同期したオンライン&オーダメイドには可能性が多分あると思う。知らんけど。



実現可能で持続可能なオーダメイド

原材料の在庫を極力持たず、加工は最短、加工品としてのリサイクルの可能性、分解&資源リサイクルのしやすさ……すべてを兼ね揃えた衣類が実は日本にはある。さすがだぜ僕達の日本。そう、フンドシだね。

生地とブランドネームとケアラベルさえあれば、裁断、縫製からアソートまで一時間もかからないだろう。直線裁ち&縫いだから、熟練工員じゃなくても生産可能。リサイズも簡単、おじいちゃんのフンドシを孫の涎掛けにリメイクすることも出来ちゃうんだぜ。

唯一にして最大の障壁は、フンドシをどう普及させるかである。もはや絶滅危惧衣類。お祭りやDVDで上原亜衣が履いてたのを見かける程度。
歴史を振り返れば、慣習の更新より新しい慣習を作り出す方が遥かにイージーだ。ということで、手っ取り早い理想の実現方法は、愛と平和のユートピアを月に建国して正装・制服としてオーダーフンドシを指定する。this is ベストソリューション。

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三代目えぞ家☆ちゃも吉

場末のファッション漫談師

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