無職の僕が考えたファッションデザイナーになるための思考法

デザイナーのインタビューを読むのは楽しい。Demna GvasaliaとAlessandro Micheleの記事はできるだけピックしてる。Hedi Slimaneはタイトルと冒頭3行だけ読む。それ以降は大体想像できるので滅多に読まない。彼はすでにスタイルであり、言えばハラキリと一緒。それだけで美しい、みたいな。

人と人のつながりによって生み出されたダイナミックな瞬間、コレクションのテーマやスキャンダラスな裏話を見聞するのは単純に面白い。それから、彼らの独特の着眼点から語られるファッションの現在と未来は示唆的で、色々と考えさせられる。

「セカイにはこげなえらかやつがいるっちゃね!」となるアツくなる一方で、それを自分のライフスタイルにインストールすることは難しかったりする。
当たり前のことだけど、そういうオリジナリティはデザイナー個人が長い時間をかけて培ってきたものだ。それに努力と運の結果、彼らが手に入れた恵まれた人間関係や環境は僕のそれとはかけ離れている。朝4時に「納期遅れの意味がわからない。*ね」とLINEしてくるのはやめて欲しい。僕言ったよね?発注早く切ってって言ったよね??ねえ???


僕のような犠牲者は少しでも減らしたい。そんな切なる思いから書きます。デザイナーになったことがないのにデザイナー論シリーズ、パート2。パート1はこちら。



PDCAサイクルは不適説

デザイナーを目指す人は多い。花形だもんね。だけどデザイナーになるために必要なスキルや実際になる方法は誰もよく知らない。
人気のデザイナーのインタビューを読み込んでもクセが強すぎて参考にならない。知り合いの先輩デザイナーに相談したらマウンティングされる。
結局、どうしたらいいのぉぉぉん?!暗中模索ばかり。いつ結果が出るのかわからず不安。そういう経験、ありませんか。

書店のデザインコーナーに行くと、家具や乗り物などのインダストリアルデザイナーやwebデザイナーによるデザイナー論が並んでいる。ファッションデザイナーは不思議ちゃんでいなければいけないので、ハウトゥー本は出さないことになってる。

デザイナーの本をパラ見すると、大抵PDCAというフレームの重要性が書かれている。一応説明しておくと、Plan(計画)→Do(やる)→Check(問題点を探す)→Act(改善実行する)→Plan...の順番で、継続的に取り組むとハッピーになれるよっていう魔法の法則。

PDCAというサイクルは非常に有効だが、弱点もある。それは人間の感性的な要素が含まれていない=考慮されていないのだ。ファッションデザインにとって、人間の感性や感覚に訴えることはとても重要だ。であるならば、このモデルの効果も限定的にしか発揮されないかもしれない。
実際、PDCAは品質管理の精度向上のために生み出された秘技だ。ゼロからイチではなく、イチをジュウに高めて、キープするのが主な目的なんだね。

Planが一番最初に据えられているというのも、2つの点からファッションデザイン向きではないように思う。
まずファッションデザインは応用問題なんだ。世の中の問題は二種類に分けることができる。ひとつは単純問題。これは公式を当てはめれば自動的答えが出るやつで、学生の時受けたテストの問1~問3みたいなやつ。知ってるか/知らないかで正誤が決まる常識チェッカー。ガリアーノがのデザインを見て、「あ、これ1860年代の婦人服を改変してる」って気づくことが出来る能力。

ところがファッションデザインは大人の事情によってデザインの公式(法則)がきちんと定義づけられていない。簡単に言うとすべて問4~問7の応用問題、つまり公式だけではゴールにたどり着けない、総力戦必至の応用問題集となっている。ガリアーノのよさはどこから来たのかを説明できるかどうか。
人間の、よくわからない本能や感情を相手にしながら、精度の高い計画を事前に立案するというのは非常にナンセンスで、これに固執し過ぎると「計画のための計画」になったりする。

もうひとつの理由は、そもそもスピード感の早い業界×いろんな業種の人間が関係している業界なので、計画の前提が適宜更新されていて、計画した時点で見積もった効果を上げにくいから。

計画を立てることはとても重要だ。でも絵に描いた餅でいいんですか?だめだよな。
つまりアパレル寺の崖から投身しながら翼を生やそう。PDCAは同時多発的にやるしかない。



OODAループについて

消費者とマーケットがダイレクトに結ばれる今、消費者心理の重要度が増している。今後も一層増すだろう。そういう状況においてPDCAサイクルの効果の限界が気づかれるようになり、今にわかに注目されているフレームがOODAループだ。Observe(見る)→Orient(わかる)→Decide(決める)→Act(動く)→LOOP(見直す)の頭文字が取られている。

PDCAと比べて感覚、嗅覚...が重要視されている。まず顧客を見ろと。顧客のツボを理解しろと。わかったら即たたき台を策定しろと。
イケイケドンドンな時はいいんだけど、ファッションのような成熟&停滞産業ではこれと言ったネタがなくなるので、重箱の隅をつつくような計画誤差がフォーカスされて、リソースが無駄遣いされるということがよくある。何のための計画やねん。

行動コンマンドが2回出てこない、というのもより実践的でいい。さっき書いたとおり、1回目の行動と2回目の改善行動との間の時間差が生み出す影響、誤差は小さくないから。一回限りで最大限収穫するっていう気構えが大切。

このきわめて合理的でスピーディーなモデルは、アメリカのジョン・ボイド大佐が朝鮮戦争時で得た戦果の研究から生み出されたものだ。なるほどとしか言いようがない。
ファッション産業は戦場や。寝たら死ぬで。寝ながら突き進むんやで。



ルールがないことを逆手にとる

OODAループを思考法のベースとしながら、ファッションデザイナーとして成功するには「ルールを逆手に取る思考」ことがキーになる。

ぜひ振り返ってみて欲しいのだけど、デザインのクオリティに関する的確なコメントをどこかで見聞きしたことはありますか?
縫製の良し悪しじゃないですよ(技術論、単純問題)。たとえばどれくらいエレガントであるか?それは何から生み出されているのか?他のデザイナーがつくるエレガントと何が違うのか?
そういった事柄について、納得できるコメントを見かけたことはありますか。

きっとないと思います。何故ならルールがないからです。名誉のために名前は秘すけど、B化服装学院主催の某コンペの審査員コメントをたとえば見て欲しい。オール上沼恵美子状態だから。
それが悪いって言いたいんじゃない。基準が厳密じゃないから、印象的になるしかない。

これはピンチでもあり、チャンスでもある。基準が曖昧=こちら側が基準を設定できる余地があるってことだからだ。ハッタリをかますチャンスがあるってことだ。
ハッタリをかます簡単な方法は、とにかく量。量をアピールしよう。圧倒的な量は優れた少数を圧倒する。別名ドン・キホーテ作戦。どこから来た子かわからないけど、並行輸入のブランド香水が沢山並ぶとブランド香水にしか見えなくなる。

とにかく出し続けることで「あたいはこういう女よ」というブランド力っていうか、わかりやすいサインに自然となる。ファッションは基本的にストリートファイト、思わせたモノ勝ちである。

また日本は「とにかく頑張ってるだけで内申点が上がる」という謎システムで運営されているので、たくさん出せばその質に関係なくボーナスが加点されます。ふざけんなよ、と思う反面、とりあえずやれば評価されるので、ロケットスタートは切りやすい。

目の前にある服、そのデザインだけで評価しづらいので、肩書き指向は強くなる。あなたが学生ならコンペにはガンガン出よう。大手に入社した人、独立した人の多くは何かしらのコンペ受賞歴がある。
富裕層生まれなら海外の学校に行こう。海外コンペに参加しよう。日本人は洋モノがすきだ。逆輸入デザイナーは大体なんとかなってる。富裕層じゃないなら、今すぐ亡命しよう。第二のデムナになろう。


量を出し続けるというのは非常に困難だ。だからいろいろなものを見よう(Observe)。徹底的に見よう。バリエーションを増やして、自分のフィルターでろ過して、面白いものを組み合わせるんだ。漠然といっぱい見るのはダメ。目でみえるサインの背後にある本質をつかみ取るんだ(Orient)。


おまけ

最後。時間は守ろう。
デザイナー(+パタンナーのソフトチーム)の後に控えてる生産管理(ハードチーム)は準備でクオリティの8割が決定すると一般的に言われている。あるいは最初にミソがつくと、最後までクソがつくと言われている(くさい)。

設定納期に間に合わない、納期ギリギリでデザインを変えるとか絶対にやめてくれよな。今出来なかった悔しさは次のシーズンに活かそう?ねっ!!!

受け手からすればわがままでしかない変更による再調整は担当者に余計な負担を強いる。引き継ぐ側のモチベーションの低下に繋がる。そして準備が不十分な結果、クオリティが低下するリスクが余計に発生する。

もうひとつは人間の心象に関する効果なんだけど、デザイナーの9割は時間が守れないので、時間を守るだけですげー評価される。どの仕事もそうだが、チームワークで成立しているので、愛されパワーは重要だ。

「降りてこないからデザイン出しできない」ってのもわかるよ。わかる。でも早く降ろしてくれ!プロでしょ、頼みますよ!!泣きたいのはこっちだから!!!!!

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三代目えぞ家☆ちゃも吉

場末のファッション漫談師

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