自律性を促進するための枠組み:内在化を支援する(3)他者との関係性

自律性を促進するためには、理由付け、承認、選択の3要素が必要になります。やや繰り返しになっているかもしれませんが、ここには他者の要素が入っていることを忘れてはいけません。

第三者が与える影響というのは大きなものがあります。

オリンピック選手に憧れて、一生懸命、競技に取り組んだとしても必要なのはそれを支えるコーチであったり、サポーターでしょう。

勉強もしかり、です。

大学受験を頑張ろう、と思ったとしても一人でやれることは限界ががあります。塾の先生、高校の先生、家庭教師、もしくは一生に頑張る友達・・・そうした関係性が大事になってきます。

もちろん、中には、「一人で全てやった」という人もいるかもしれません。ただ、私の周りの人たちはやはり何らかの形で周りに支えられていたということを実感されている方が多いです。

内在化に必要な、理由付け、承認、選択の3要素のうち、2要素は、多くの場合、他者から与えられるものになります。自分のやっていること、やろうとしていることを、承認(認めてもらう)、そして選択の余地があること、という事が「消化する」という意味での内在化を進め、結果として自律性を促進することになるでしょう。

具体的に考えてみますと、将来、芸術家を目指すために「東京藝術大学に行きたい」という生徒がいたとします。その選択の理由付けは、芸術を通して表現したい自分の世界があるか々を幸せにしたいから、ということだとします。

それを承認、認めてもらうプロセスが重要になります。親が反対している、芸術家なんてとんでもない、と言われた時点で、やっていることが否定されていることになります。この承認のプロセスは他者から与えてもらうことも可能でしょう。例えば自分が慕っている先生、友人などです。

この場合の選択のフェーズは割と単純です。すでに東京藝術大学に行くということを選択している訳ですから、そこを阻害するものはありません。ただし、勇気をもって「辞める」という選択肢もあるということも分かっておく必要があるかもしれません。自分でやると決めたから、後でこの道が間違えていると(自分が向いていないと)気付いたとしても、その道を続けていくというのは不毛です。ここで必要なのは、やはり取り巻く人々でしょう。「辞めて別の道にいってもよい」という選択肢を用意してあげられるかどうかが重要になってくるでしょう。

こうして考えていくと、自分本位では生きていくことには限界がある、ということが分かってきます。ややパラドキシカルな話ですが、「自律するためには、他者との関係性が大事になってくる、他の人の支援が必要になる」ということです。自己中心的で自己愛的で、かつ反抗的になってしまい、他人を思いやる感情に乏しい方は、それは単なる独善的な人間なのであって、自律的な人間ではない、ということです。

もちろん、世の中には、独善的な人で、支配的な形で成り上がっていった人もいます。そのような形、いわゆる統制的で、他者への攻撃性が強く、それをエネルギーにしている人もいるのも事実です。そうした人は、そうしたキャラクターになることをある意味選択したともいえますが、その人が、自律的といえるかどうか、については異論があるところでしょう。このことはまた稿を改めて考えていきます。

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