国際会計基準(IFRS)でのれんは償却されるようになるんですか?(答え)数年以内にそれは実現されません。

最近知った(今更)しったことですが、googleで検索すること、googlingと英語で言うらしいですね。ドンドン言葉も進化している。OK,Please googling!といっても伝わるということですね。

ところで、そのgoogle先生で

「のれん 償却 IFRS」と打ちますと、

のような記事が引っ掛かったり、

という記事が引っ掛かったりして、「のれん 定期償却」されるんですね!

と学生から質問されます。

で結論から申し上げると、

定期償却の方向で検討されていることは、私の方では確認できませんでした。

いや、もちろん正確にいえば、それも含めて考えられていますが、

では定期償却をすぐにしよう!

という文面はどこにも見当たりません。

信頼のおけるサイトとしてIASplusがあります。ここではIASB(国際会計基準審議会)で出されている、基準改訂や検討状況について書かれていますが、以下のように書かれています。

Date recorded: 18 Jul 2018
Setting objectives for the Board’s follow up work (Agenda paper 18)
Background
Stakeholder feedback to the Board from the Post-implementation review of IFRS 3 Business Combinations and IAS 36 Impairment of assets was that accounting for intangible assets acquired in a business combination and acquired goodwill do not always produce useful financial information and that there is insufficient information to help investors understand the subsequent performance of the acquired business. Consequently, the Board undertook to a research project to investigate the following four areas:

上記、要約すると、企業結合と資産の減損に関する事後レビューからの関係者のフィードバックに基づいて、企業結合とのれんがつねに有用な財務情報の手続きに基づいておらず、投資家の理解を手助けする情報が不足している、という事が書かれています。結論として、審議会は、以下の4つの領域に関する調査を行うリサーチプロジェクトを開始したという書かれています。

Whether there are new conceptual arguments or information which will support the amortisation of goodwill? 

・のれんの償却をサポートする新しい理論的な議論もしくは情報があるかどうか?

Could some identifiable intangible assets acquired in a business combination be included within goodwill?

企業結合時に取得された幾つかの認識できる無形資産が、のれん内に含まれていることがあるか?

 Could information be provided on a timelier basis to users through disclosures without imposing costs that exceed benefits? 

費用対効果の観点から費用を上回ることなしに、適時の基準に基づいて情報が提供されているかどうか?(やや意訳)

Can the application of the requirements of IAS 36 Impairment of assets be improved by simplifying the test of impairment without making it less robust and making the test more effective at timely recognition of goodwill?

IAS36の資産の減損は、のれんの適時の認識についてより効果的な検証を厳格化することなしに簡略化することによって改善されるか?(意訳)


まぁ確かに検討事項に1番目に上がっているので

「のれん定期償却されるんだ!」「日本企業のIFRS適用企業ピンチ!」みたいなこと書くのは分からんでもないですが、

確認するかぎり、新聞記事で書かれているトーンは一切確認できません。

まずリサーチペーパーとして、2019年に第4四半期にディスカッションペーパーが出される予定ですので、皆さんをそこを待ちましょうね。

さらに、そこから基準化されるまでにはザっと5年以上かかるでしょう。

ちなみにIASplusの記事でみると孫引きになっているので、原文も確認しました。

上のページからリサーチプロジェクトの立ち上げに言及したAgenda paper18にアクセスできます。

さらにIASBのプロジェクトページはこちら。


で、どうなるんですか?という質問に答えるために私なりの予想しうる考え方を示しておきましょう。

1. のれんが定期償却に改訂される、という方向性は少なくとも数年以内にはない

(今のボードメンバーである限りない。今のボードメンバーは割と実務家もしくは実務に近いところで働いていた方々で、いわゆる調整型の人たち。前任のトゥイディーさんのように、「純利益廃止」みたない過激な方向性を打ち出すことはない)。

*ただし、償却は会計処理の簡略化のための手段として推奨される可能性があると考えます。

2. 減損テストの厳格化を促す方向性に舵が切られるであろう。

*今まで私が調べた範囲(先行研究)の範囲では、のれんの減損タイミングについての問題は、「企業内の内部統制(ガバナンス)の問題」「監査の問題」「会計基準の問題」に集約されています。この問題のアプローチの仕方として、内部統制の問題である、もしくは監査の問題である、と考え、減損の厳格化を求める方向性に既にあると考えています。

たとえば、GEが巨額減損を出したことはご存知でしょうか?


この件についてSECが調査に入ったりしたりしまして、内部の調査もされた(SECの公式なコメントはありませんが)。

https://www.cfo.com/accounting-accounting-tax/2018/12/ges-big-goodwill-impairment-draws-scrutiny/




SECが財務報告についてどう考えているのか?という分析についてはEYの分析が面白いので、掲載しておきます。


3. のれんの開示情報についてのより詳細な情報が求められる。

今のリサーチプロジェクトの中で、会計処理の簡素化と合わせて開示情報についても言及されている点に着目しないといけないと思います。

IASBのもう一つのプロジェクトである。

Disclosure Initiative—Accounting Policies(開示姿勢-会計方針)が2019年の第三四半期の公開草案が出る予定です。


非財務情報として「のれん」の開示情報を見てみると、減損しなかった場合の根拠というのが明確に書かれているようには思えません(この辺りは、同明確に書かれていないかは、研究の中で示していきます)。と考えると、開示情報の統一化、詳細な情報提供を通じて、利害関係者が判断を行いやすい環境を構築することが必要なのだと思います。不都合な情報は開示することには企業は消極姿勢になりがちですから(またネガティブな予想をすると、投資家がその方向に動いて、本当に実現してしまう、ということも当然、企業は恐れています)。


ということなので、皆さん良く調べていない方の記事を参考にする際には最大の注意を払いましょう。私も気を付けます。




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