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Abuse Supervisor研究から考えるパワーハラスメント

*今回、上記の写真を使わせてもらいました。上下関係(上司、部下)に関するお話です。

Abuse Supervisorに関する研究をちょっとしたきっかけで知ることがありました。

Abuse Supervisorは簡単にいえば、権力を乱用する上司というところでしょうか。Supervisorは、上司というよりは監督者という方が正しいかもしれませんが、どうも、監督者というと、まさに「監督」しているというニュアンスになりますので、英語ってとっても難しい・・・。ここでは暴力的な上司としておきます。

Abuse Supervisorは英語のwikiでも項目があります。

暴力的な上司は、家庭と学校の様な場所においても起こりうることではあるが職場の中で最も多くの研究がある。乱暴な上司は、部下の職場でのネガティブな結果に繋がるものとして実証されている。"職場での暴力は、状況と個人の要因とが合わさっている"こうした研究は、乱暴な上司と様々な職場での出来事との間との間との結びつきについて調査している。

Abusive supervision is most commonly studied in the context of the workplace, although can arise in other areas such as in the household and at school. "Abusive supervision has been investigated as an antecedent to negative subordinate workplace outcome." [weasel ][1][2] "Workplace violence has combination of situational and personal factors". The study that was conducted looked at the link between abusive supervision and different workplace events.[3]

[1]Tepper, B. J. (2000). "Consequences of abusive supervision". Academy of Management Journal. 43 (2): 178–190. doi:10.2307/1556375. JSTOR 1556375.
[2]Hoobler, J. M., Tepper, B. J., & Duffy, M. K. ( 2000). Moderating effects of coworkers' organizational citizenship behavior on relationships between abusive supervision and subordinates' attitudes and psychological distress. Paper presented at the annual meeting of the Southern Management Association, Orlando, FL.
[3]Inness, M; LeBlanc, M; Mireille; Barling, J (2008). "Psychosocial predictors of supervisor-, peer-, subordinate-, and service-provider-targeted aggression". Journal of Applied Psychology. 93 (6): 1401–1411. doi:10.1037/a0012810. PMID 19025256.

英語のwikiは学術的ですね。

ともあれ、簡単に言えば、乱暴な上司は、部下に対してネガティブな成果になるということが明らかにされています。

最近のものではこうした研究結果もあります(これらは全てアカデミックなジャーナルに掲載されたもので、かつ掲載されたジャーナルのレベルも高いものです)。



Chan先生たちの研究(2014)では、従業員の精神的疾患の状況と乱暴な上司との関係性についての因果関係を検証しています。当然のことかもしれませんが、従業員の精神的疾患の状況には乱暴な上司が関わっていることが示されています。またMackey先生たちの研究(2017)では、乱暴な上司研究の先駆者であるTepper先生のモデルが幅広く使われていて、かつ多くの場合適合していることをメタ分析で示しています。他国のデータの研究も含んで、という事なので、アメリカに限らず他国でも乱暴な上司がもたらすマイナスな影響は実証されているといえるでしょう(日本のデータはなかったですが)。

Qin先生たちの研究(2018年)では、乱暴な上司が部下に与える影響ではなく、乱暴な上司の行動に着目し、彼らが短期的なベネフィットで行動していることを示しています。

こうした研究はこの10年の間、経営学の組織論、心理学の分野で幅広く行われていて、結論とすると、乱暴な上司が与える影響はマイナスばかりということがエビデンスで示されています。

何が言いたいかといいますと、乱暴(パワハラ)しても何もメリットありませんよ、ということです。それ以前、乱暴な扱いをすることは人権を侵害しているということは言うまでもありません。

会計学の研究ではないのでは?とツッコミがありそうなので、少し補足です。会計士におけるクライアントとの関係もこうした歪な状況になりえますし、会計士の階層内における上司、部下の関係もそうです。また会社内での不正においてもabuse supervisorが関わるところが大きいのではないか、という仮説を持っています。こうした研究を調べていくことで、よりよい会計制度を考えることに繋げていきます。

組織論、心理学において、この10年飛躍的にabuse supervisor、employee engagement、work engagementに関する研究が発展し、実際に活かされています(正確にはそのように推察しています)。そうした分野の研究を活かさない手はないと思います。


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