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『ビール・ストリートの恋人たち』彼らの愛はどこまでも美しい…たとえ醜い街の中にあっても。 公開中

70年代のNY。互いへの愛しさがあふれる、静謐で美しいラブストーリーであり、家族愛の物語。

と見せかけて、

描いていることはとても真摯で、大切なメッセージです。

原題:If Beale Street Could Talk ★★★★★

バリー・ジェンキンス監督が『ムーンライト』と同時期に脚本を執筆し、同作の後にようやく着手できるようになったという『ビール・ストリートの恋人たち』。

レジーナ・キングがアカデミー賞助演女優賞を初受賞。作品賞にはノミネートされませんでしたが(撮影賞にも)、もう、どうしてよ? と思うくらい素敵な色彩美と、塀が隔てる若き恋人たちをずっと見ていたくなるというアンビバレントにおいて、根強く、醜い差別を浮き彫りにします。


『私はあなたのニグロではない』のジェームズ・ボールドウィンの原作小説を映画化。

思いがけなく親になる若い恋人たち、ティッシュ(キキ・レイン)とファニー(ステファン・ジェームス)。しかし、ファニーは無実の罪で拘置所におります。彼にレイプされたという虚偽の証言によって。

2人の家族や親友(ブライアン・タイリー・ヘンリー!)、弁護士(『ラ・ラ・ランド』フィン・ウィットロック)、差別主義の警官(エド・スクライン)など、そのミニマムな関係を通して大きな醜い歴史と、地続きの今を映し出します。

『ムーンライト』同様、彼らの肌をとても美しく見せるジェームズ・ラクストンによる映像と、ニコラス・ブリテルによるジャジーな音楽、
ティシュのファションに代表されるように淡いブルー、黄色、ベージュ、そしてレジーナママのはっきりとしたグリーンといった色彩のその合間合間に、差別の色濃さを容赦のないモノクロ映像で落とし込んでいくのです。

その意味では『ROMA/ローマ』や『万引き家族』とも近しいのかも。
ジェンキンス監督がツイッターにあげた是枝監督とのツーショットなどをエンドロールで思い出したりしました。

こちらはアルフォンソ・キュアロン監督やスパイク・リー監督、ラミくんらと。


また、フラッシュバックで幸せな2人のときを見せるのですが、それが驚くほどに自然で、嫌味がないのです。

キキ・レインとステファン・ジェームスも良いし、レジーナママには泣かされます。

そして今回もウォン・カーウァイに影響を受けているシーンが見受けられます。

私、バリー・ジェンキンス、好きですね。大好きです。



こういうのは穿った見方といいますが、たくさん抱えてるプランBはより狙える『バイス』に力入れすぎてたんじゃないの…なんてね。




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