心の世界
テオドーロの心の世界⑴
彼はもう一度長い旅に出ようと決心した。
一晩中考えて 今日は部屋を片付け、気晴らしに少し、街まで行ってみた。
広告の化粧品を紹介しているレディが、試供品の香水をくれたみたい。
街中の商店は春の花でいっぱいだった。チューリップはあまりにも可愛い。彼が長い間慕っていた彼女みたいだと思った。
白と黄色の水仙は香りがよくて、うっとりした。
もうすぐ復活祭。今年の復活祭も友達と集まる約束をしたけど、その頃は知らない街にいるだろうと彼は思った。
夕べ 彼女の現状を知らされて、記憶障害になっているから、思い出せない事、考えたくない事、出来れば何もかも忘れたいと思っている事を知った。
明らかに僕の恋は終わった、とテオドーロは悲しんだ。そして、
「固く閉じられた貝を、こじ開けることなんてしたくない。このままそっと、僕は身を引く。その方が僕自身も、彼女も、楽になれる。」
そう言った。
昼食をして
自分の部屋に戻ると、さっきのコスメレディがくれた香水が気になった。箱が小さ過ぎて開け方を間違って香水はこぼれた。
パッと広がった素敵な香りが まるでどこかの国の王女のような、高貴な雰囲気で彼の心を魅了した。何か、優雅なものに包まれて気を失いかけるほど、足元がふらついた。そして、一瞬こう思った。
本当に、今の僕は知らない国の王女様に抱かれてみたい。受け止められて、きっと、その優しい胸で眠りたい…。僕は疲れてしまったみたい、、
でもね この香りは癒しをくれる 優しい…
これからの行き先はまだ未定だけれども、一応、知り合いのいるパリには行く。そこにいる親友はきっと 明るい顔をして、恋人に振られた彼を笑って慰めるだろう。きっと、こんな冗談も付け加えながら。
「逃した電車と女は追うな、次が必ずやって来るから。」
明日からテオドーロはどんな心模様の詩を書くのだろうか、まだ私には分からない。とにかく今夜はもう一度 何も考えずに ゆっくりおやすみよ。
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