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サイバーエージェント曽山哲人氏「営業組織に効くコーチングの真価」

人事ノウハウの有識者として多数のメディアで活躍している、株式会社サイバーエージェントの曽山哲人氏。同社の常務執行役員CHOとして、人事全般を統括しています。

今回、曽山さんと株式会社mento CEOの木村憲仁が『営業組織の作り方』をテーマにオンラインセミナーを開催しました。営業組織のマネージャーはどう成長し、メンバーを育成していけばいいのでしょうか。セミナーの内容を元に、紐といていきます。

「強い営業組織」に共通している3つのポイント

木村:今、営業組織のマネージャーを悩ませているのは「マイクロマネジメント」です。指示命令型のマネジメントでは、メンバーのモチベーションが下がるだけでなくマネージャーの負荷が増え、一方で目標達成にはつながらない。この負のループから抜け出し、強い営業組織を作りたいと考えた時、ポイントはどこにあるでしょうか?

曽山:強い組織には、3つの共通項があります。それは「共通目標、共通言語、共通感情」。1つ目の「共通目標」は組織にとって不可欠なものです。「半年後の組織目標はこれだ!」と明確に打ち出せばメンバーの目線がそろいますし、逆に共通目標がなければ、全員が自分の目標のためだけに動いてしまい、統率を取れなくなるんですね。

2つ目の「共通言語」は、組織としてミッション、ビジョン、バリューを定義したり、自社のカルチャーを作ったりすることで、徐々に浸透していくでしょう。

そして3つ目の「共通感情」は感情を共有する、つまり「共感」のことです。大事なのは、ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も含めて共有すること。非建設的なネガティブさはNGですが、飛躍のバネになるような悔しさや苦しさをシェアして、反骨心を育てることは必要です。

僕もかつてはマイクロマネジメント主体の“激詰め型マネージャー”でしたので(笑)、この難しさはよくわかります。

マネージャーが成長するために必要なこと

木村:メンバーの成長を考える前に、マネージャー自身が成長するには何が必要なのでしょうか。とくに組織の成長期は、マネージャーの育成が追い付かず、未熟なままマネジメント業務を回しているケースもあるようです。

曽山:僕は「質問される経験、現実の直視、決断経験」の3つが必要だと思っています。

質問される経験がなぜ大切かというと、他者から問いかけられることで、自分の考えを言葉にして整理し、客観視できるからです。具体的に考えていなかった課題や定義すらされていなかった概念も、解像度を上げて考えられるようになるのが最大の効果です。まさにコーチングですね。

木村:コーチングを受けて急成長するマネージャーがたくさんいるのも納得です。マネージャーがコーチングを受けるメリットはほかにもたくさんありますよね。例えばメンバーに質問することの意義を理解できるようになりますし、プロコーチとの会話を元にコーチングのノウハウを身につけることもできるでしょう。メンバーとの会話の中で日常的に問いかけを繰り返し、その中で相手の考えや意見を認めることで、メンバーとの関係性の構築にも役立ちます

曽山:2つ目の「現実の直視」は、自分のトップライン(限界)を見極めることです。「俺はデキる!」と思っている人ほどここを見落としがちで(笑)、結果的にマイクロマネジメントに偏ります。

そして3つ目は「決断経験」。何かを決断する経験は、その経緯も含めてすべてが自分の財産です。あえて意識して「熟慮の末の決断」を繰り返しましょう。その経験をどれだけ積んできたかがものをいいます。

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メンバーの主体性を育てるには、まず「抜擢」せよ

木村:次は、メンバーの力を最大限に引き出したい。その際、何がポイントになるでしょうか?

曽山:メンバーの主体性を育てるために必要なのは「意味づけ、抜擢セリフ、信頼残高」の3つ。意味づけは、「この行動が、顧客や組織にどんなプラスを生むか」を明らかにすること。その仕事が持つ意味を理解してこそ、メンバーは自走できます。

抜擢セリフは、仕事を任せるときの決め言葉。抜擢といっても、肩書きを与えることではありません。相手の才能と能力に光を当てて、期待をかけ、自信を持って任せること。「きみならできる。この仕事をよろしく!」と、言葉にして伝えましょう。基本中の基本ですが、意外とやっていないマネージャーが多いのでは?

そして最後に育まれるのが、3つ目の「信頼残高」です。部下との関係性の基礎になるものなので、長期的な視点でコツコツ貯めていきましょう。これらがそろって初めて、メンバーは「私がやりたいです!」と宣言できるようになります。

木村:最近は「やりたいことを聞かれても、とくにない。わからない」という若手が多いようです。

曽山:今の時代は変化が激しくて、少し先のことも見通せません。そんな中で抽象的に質問しても、答えが見当たらないのは当然です。もう少し解像度を上げて、例えば「どういう仕事が楽しい? わくわくする? 何をしている時が幸せ?」と、相手が具体的な出来事を思い出せるような質問に変えてみましょう。

木村:マネージャーに最近多いと言われるのが、メンバーへの指導ができない人。優しすぎて、強く言えないという悩みです。

曽山:“あるある”ですね。原因は大きく分けて2つあり、1つはメンバーに反発されて自分が傷つきたくないから。もう1つは、メンバーのキャリアを真剣に考えていないから。「自分のプライドよりも相手の成長が優先」と心得て、多少の摩擦は覚悟して必要なことは指摘しましょう。

とはいえ、ネガティブなことは言いにくい。そこでオススメしたいのが「紙に書いて渡す作戦」です。まず相手の素晴らしい点を3つ書いて、その後に「期待したいところ」を3つ書いて渡す。ポジティブなことから先に伝えると、相手も率直に受け取りやすくなります。

木村:1つの正解を探すのではなく、メンバーと一緒になって問いを立てて、正解を作り上げていく。そういう感覚で取り組むと、うまくいきやすいのかもしれません。

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