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#58 起業、即海外展開?!ホテル・オフィスビルなど不動産企画、若い起業家支援…株式会社フルコミッション・山崎明信さん #BOSSTALK(廣岡俊光)

 起業家の支援に力を注ぐ、不動産企画・開発ベンチャーの株式会社フルコミッション。2011年に創業して以降、札幌やメキシコでゲストハウスを運営するとともに、古いオフィスビルを改装し、新興企業が集まる拠点も提供しています。

 代表取締役の山崎明信さんにスタートアップ育成のポイントを聞きました。



■起業の原点…学生時代に感じた「格差」

――出身は? どんな学生時代を過ごしましたか?

 生まれは新潟県。転勤族だったので、山梨県、三重県、長野県と転々としていました。高校3年生の時に、帯広市の高校に転校しました。

 転校生だったので、面白い人でいようという気持ちで過ごしてました。札幌の大学を卒業し、東京で就職。3年間不動産のディベロッパーとして働き、その後独立しました。

アメリカンフットボールに打ち込んだ大学時代

――ディベロッパーではどのような仕事を?

 総合ディベロッパーだったので、分譲マンションを企画して建てて売ったり、ビルをコンバージョン(用途変更)してシェアオフィスにしたり、シェアハウスを住宅にしたり、いろいろなことを経験しました。

――「起業したい」という思い自体はずっと抱えていたんですか?

 当時、両親が埼玉に住んでいたので、そこを拠点に就職活動をしていたので、札幌と東京の仲間、それぞれの就職活動を両方を見ることができたんです。

 東京の学生は、大学1年生からインターンを経験している。働くとはどういうことか、どういうことに興味関心があるのか、1~2年かけて考えていました。情報も選択肢も広いですし。

 一方で、札幌の大学生は12月ごろに就職活動をスタートして、4月に面接が始まる。3~4か月しかない。3~4か月 vs 2年。悔しかったですね。地域格差を少しでも埋めれたらと学生時代に思いました。それが「起業したい!」という思いが芽生えた原点ですね。


■起業後即、海外進出のワケ

――起業するきっかけは?

 一人暮らしをしながら、オフィスを借りて仕事をしていたんですが、東京は家賃がすごく高くて。起業したばかりで、全然売り上げもなかったのでかなりきつかったんです。

 生活費を抑えるために、一軒家を仲間5人とシェアハウスを始めたんですが、それがすごく良い経験でした。それぞれが起業家で、コミュニティーがあり、それぞれが人との繋がりを持っていました。

 そこから仕事をもらえたりもしたので、「シェアハウスってすごいな」と思いました。この価値観を広げたかった。当時、都内では少しずつシェアハウスが増えていましたが、札幌にはありませんでした。起業して札幌でシェアハウス事業をスタートさせました。

――事業をどう拡げていきましたか?

 多店舗展開しました。ただ、シェアハウスは住宅なので、短期滞在や宿泊はできなかったんです。短期滞在したいという人も増えてきたので、宿泊施設としてゲストハウスを広げました。

――海外にも展開していったそうですね?

 はい。海外にも拠点を増やしました。ゲストハウスを経営し始めた時、外国籍の社員もいたんです。なので、彼らが自分の国に帰国するタイミングで、彼らの国でゲストハウスを運営し始めました。

――どこで始めたんですか?

 初めはアフリカのタンザニア

 次にベトナム

 そしてメキシコ

――展開が早すぎませんか?

 僕もびっくりしてます(笑)。人との繋がりの中で、チャレンジしてみようとやり始めたような感じですね。新型コロナ感染拡大のタイミングでかなり打撃を受けたので、現在はメキシコだけ残っています。

――海外に進出したことで、学んだのはどんなことですか?

 日本にいると「働ける環境を作ってくれてありがとう」と言われる機会はあまりありません。でも海外のスタッフから「これで離婚できます!」と言われたことがありました。

 結婚生活を続けていたけれど、自分で稼げるようになり、自力で子どもを教育できるぐらい稼げるようになったから、離婚しましたと。

 仕事がない人に仕事をつくる機会ことは、本当に有意義なこと。海外に出てあらためて実感しました。『働きたい人に、働ける環境を作ること』。やりがいの1つですね。


■厳しいコロナ渦経て“不動産企画”に活路

――いま、事業の中で力を入れていることはどんなことですか?

 宿泊事業です。新型コロナの影響を受けて、かなり売り上げが減少しました。撤退する所は撤退して、その時にいろいろな事業に挑戦しました。

 外部からも社内に入って10個ぐらい事業を展開した中で、『不動産企画事業』がうまくいきました。私自身が不動産を経験してきたこともあり、一戸建てやマンションを取得して、リノベーション、リフォームして売っています。

 最近では、シェアオフィスもしています。中古のビル一棟をコンバージョンして、起業家やベンチャー企業向けに利用してもらうようなスペースを作りました。

 『コンバージョン』。あまり馴染みない言葉かもしれないですね。建物は建てたときにあらかじめ用途が決められているのですが、その用途を途中で変えることをコンバージョンと言います。

――コンバージョンしたくなる物件、札幌市にはたくさんありますか?

 ありますね。時代の流れや移り変わりとともに使われなくなってきた空きビルや、空き住宅は一定数あります。それを今のニーズに合わせたものに作り替えていくことは、いつの時代もあることだと思います。


■目の前のミッション「起業家を増やす」

 世界への展開は一旦ストップしています。北海道と東京の差を埋めるために、まずは起業家をたくさん増やすことが重要なんじゃないかと思っています。

 起業家が増えるとインターンが増える。そうすると、札幌の学生が東京の学生に負けないぐらい、活躍のフィールドが広がると考えています。

 いま25歳以下の起業家が格安で進めるシェアハウスもやっていて、プロジェクトを通して企業カルチャーに貢献できたらいいなと考えています。

――将来に向けて描いているビジョン、今後の事業展開は?

 まずは足元を固めるためにも、北海道で起業家支援のいちばんを目指したいと思っています。しっかり事業を成長させ、起業家が活躍できるような環境に投資したいです。

――就職・起業という点で若者に向けてメッセージをお願いします。

 いろんな考え方がありますが、一度外に出てみても良いのではないでしょうか。北海道で生まれ育って大学も北海道で・・・という人は、東京や海外に出て吸収することが大事なのではないかと思います。

 札幌は東京に比べるとプレイヤーが少ないので、上場企業とお仕事させていただく機会もあります。東京の会社では、少人数の会社でそういうお仕事ってなかなかできません。

 そういう意味でも、地方には大きな仕事を任せてもらえるチャンスが転がっていると思います。


■ 取材後記

 起業のそもそもの原点となった思いに驚かされました。「東京と札幌の学生の、就職格差をどうにかしたい」・・・学生当時に抱いた課題感をいまも胸に秘めて、ビジネスを展開されている山崎さん。少し前を行く大人たちが信頼できる背中を見せることは、その後につづく若き起業家たちに大きな勇気を与えることでしょう。


<これまでの放送>

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#56【株式会社 夏目】代表取締役 大坂智樹さん

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#53 【札樽観光株式会社】代表取締役 杉目茂雄さん

#52 【株式会社Gear8】代表取締役 水野晶仁さん