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<実証レポート>一緒に笑って、一緒に泣こう!障がいがある方も含めた「みんな」で楽しむエンタメ体験の実証

本記事は、掲題の実証実験に伴走者として参加したひょうごTECH事務局スタッフによるレポートです。

実証事業者:NPO法人ピープルデザイン研究所
フィールド提供者:三木市
課題:一緒に笑って、一緒に泣こう!障がいがある方も含めた「みんな」で楽しむエンタメ体験の実証

プロジェクト概要

三木市では、2015年4月に「三木市共に生きる手話言語条例」を制定し、手話に対する認識と普及に努めており、2019年には読書バリアフリー法が施行され、図書館では自分に合った読書のかたちを選べるように取り組んでおられます。
障害者差別解消法の改正に伴い、2024年4月から事業者による合理的配慮が義務化されます。三木市は2023年に「SDGs未来都市」に選定され、 SDGsの基本的視点である「誰一人取り残さない社会」の観点のもと「誇りを持って暮らせるまち三木」の実現を目指しており、誰もが互いに声を掛け合い人格と個性を尊重しあいながら、共に学び心豊かに共生するまちづくりを進めているところです。
今回は、社会的障壁をなくすことを目的に、誰もが体験を通じて、未来への可能性を感じワクワクした気持ちになれ、「多様性」や「障がいがあること」について理解を深め、心のバリアフリー化のきっかけづくりをしたいという思いから、実証実験に参加されています。
中でも、行政として、障がいのある方が社会の中で直面している「文化・情報面でのバリア」を取り除くことで、障がいがあってもエンタメを楽しめるのではないかと想定し、情報のバリアを排除することを今回の実証実験で検証したいポイントに設定しました。

実証実験のパートナーとなる企業を選定する中で、ダイバーシティ&インクルージョンのまちづくり活動を行っているNPO法人ピープルデザイン研究所と一緒に実証実験に取り組むことになりました。

今回の実証実験では、新しい技術を使って一緒にエンタメコンテンツを楽しむ体験を通して、障がいのない方には、多様な人々との関わりを通じて共感や理解を深める機会を作ることで、心理的な壁を壊し、多様性を尊重する意識を高めてもらい、また、障がいがある方には、どんな楽しみもあきらめず、三木市では心豊かに暮らせることを感じてもらうことを目的として、イベントを実施しました。 

実証実験の詳細

まず9月に、イベントの大枠について協議し、どのようなイベントにするかを話し合った上で、10月には現地を確認。オンライン会議を活用して協議を深めていくことで、イベントの内容を具体的に詰めていきました。

ここで重視したのは、単に展示するのではなく、障がいのある方はもちろん、障がいのない方にも共に楽しんでもらうこと。そして、障がいへの理解を深めてもらうためにも、障がいのある方のためのイベントにしないこと。加えて高齢者や、子どもたち及びその保護者も参加してもらえるイベントとすること。
来場した人がみな楽しく体験してもらうことが大事であるため、色々なコンテンツを企画して実施しました。

当日は、バリアフリー図書の体験会や講義を行う「りんごプロジェクト」の実施、窓ガラスに描いて水で消せるクレヨン「kitpas」を使ったお絵描きイベントのほか、体験会として床に投影したインタラクティブな映像を使って遊びや身体活動ができる「WizeFloorJP」、音を光と振動で感じることができるヘアピン型のデバイス「Ontenna」、手を叩くことで「発電」を体感できる「ClapLight」を使ったアートイベント、小型で折りたためて、どこにでも気軽に持っていける電動カート「Luggie」試乗、手話体験などを行いました。

<体験の概要>

<当日の会場の様子>

<りんごプロジェクトによる読書体験の様子>

<Kitpasを使ったお絵描き体験の様子>

<WizeFloor JPによる床に投影したインタラクティブな映像を使った体験の様子>

<Ontennaによる音をからだで感じる体験の様子>

<ClapLightによる「発電」体験の様子>

<Luggieによる電動カート体験の様子>

<補装具などの展示・紹介>

<手話体験など三木市による展示>

実証実験の結果

KPIとして設定したのは、まずは、「障がいについて理解を深めるための活動の充実」として、より多くの人に理解を深めてもらうという目的から、目標集客数を200名としました。
また、「新しい技術を使って一緒にエンタメコンテンツを楽しむ」という目的から、みんなで「楽しんだ」「満足した」指標として、アンケートの満足度80%を目標としました。

まず、来客としては少なくとも265名の来場(受付)があり、市内外、障がいのある・なし、老若男女問わず参加いただき、多くの人に理解を深めてもらうことができました。
アンケートでは、90%の方に満足いただけ、双方の指標を達成するプロジェクトとなりました。

イベント参加者のアンケートには、「ユニバーサルデザインの考え方を追加した最新の技術や商品に直接接する事ができ、感動を覚えました。さらに多くの方に知って頂きたいと思いました」という声や、「皆さんの優しい気持ちが伝わるイベントでした。このイベントが全国に届いていくことを願っています」、「大変楽しいイベントをありがとうございました」との肯定的な意見が大半でしたが、「一つ一つは魅力的なコンテンツなのにただ遊ぶだけになってしまって、その意義など説明をもっと聞きたかったです」という声や、「もうすこし盛り上がるとよい。もっといろんな福祉グッズをみたい。」との声もあり、多くの方に満足いただけたイベントであった一方、物足りないという意見も一部にはありました。

イベント参加者のアンケートでは、肯定的な意見が大半でしたが、物足りないという意見もいただきました。
<肯定的なご意見>
・ユニバーサルデザインの考え方を追加した最新の技術や商品に直接接する事ができ、感動を覚えました。さらに多くの方に知って頂きたいと思いました
・皆さんの優しい気持ちが伝わるイベントでした。このイベントが全国に届いていくことを願っています
・大変楽しいイベントをありがとうございました

<物足りないというご意見>
・「一つ一つは魅力的なコンテンツなのにただ遊ぶだけになってしまって、その意義など説明をもっと聞きたかったです
・もうすこし盛り上がるとよい。もっといろんな福祉グッズをみたい。

限られた期間・予算・会場の中、精いっぱいのことはできたとは思うものの、まだ改善できる点はあったのかもしれません。

三木市の稲垣さんは、「聴覚だけでなく、様々な障がいをお持ちの方にも参加していただいていて大盛況で良かったと思います」と話しておられました。

今後の展開

非常に前向きな評価の声が多く、次回の開催が望まれる声も多くありました。このようなイベント開催を希望する声は三木市のみならず、多くあると思われます。

今回の経験からテーマを絞り、広く参加できるようなスキームを作れないかと感じています。
例えば、障がい者に役立つ最新技術を使った製品の展示会を開催することで、市民に対しては、障がいがあることへの理解促進につながりますし、自治体や事業者にとっては、自治体間や、事業者間、または自治体と事業者間のネットワーク形成に繋がるのではないかと思っています。

また、参加者数は目標を達成したものの、イベント告知の課題として、より多くの参加者を呼び込めるスキームを作れないかとの思いもあります。今回、三木市内では告知PRができたものの、市外への周知が弱く、近隣市町からの参加が少なかったので、より良い方策を考えていければと思っています。

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