見出し画像

あんときのデジカメ 讃岐の向日葵を撮影しながら、感覚のズレを考えてみました with Nikon COOLPIX S01

(はじめに)夏の花の代表といえば向日葵。その盛りは実は8月ではなく7月なのではないかと考えながら撮影してみました。讃岐の向日葵をスケッチするのは2012年製のNikon COOLPIX S01。「COOLPIX史上最小最軽量」をカメラを使いながらカメラで撮影する意義もちょっと考えてみました。


向日葵の盛りとは一体いつでしょうか?

 夏の花の代表といえば、やはり「向日葵」になります。讃岐へ戻ってから毎年撮影しておりますが、その盛りは7月で、8月になるとだいぶくたびれてきているような感を抱いております。もちろん、それは印象批判にしか過ぎないのですが、ちょうど紫陽花が6月よりも5月の終わりこそ美しいのと同じようなものです。

 その原因は、地球温暖化に伴う気候変動に由来するのか、あるいは、私たちの日常感覚とその実際がちょっとズレているのかわかりかねますが、後者の場合だと、実は、盛りの真っ最中の自体というのは、ちょっと早めに進行しているという消息を物語っているのかも知れません。

 それは何かといえば、ちょうど夏のおわりを告げるひぐらしが、実は7月の終わりぐらいから鳴き始めるようなものです。先日も帰宅時の夕刻、ひぐらしの鳴き声に驚いたものですが、季節の移り変わりというものは、その日からバタリと変わるのではなく、盛りへの助走がじわじわと始まるなかで、そしてその始まりこそ実は盛りのように見える、そんな感覚を最近懐き、それが実は変化なのではないかなどど推察している次第です。

 人間の具体的な有り様とは「生(vie)」であり、その現実存在とは「運動」であると喝破したのはフランスの思想家パスカルです。「運動の概念は時間の概念」とともに与えられるものですから、盛りのズレという問題は、私たちの憶測あるいは先入見と現実動体のあり様のズレをも物語っているのかも知れません。だとすれば、私たち人間は、自身の生や自然、あるいは暮らしについて何ら詳細な観察が出来ていないということをも物語っているのではないでしょうか? と言ってしまうとちょっと大袈裟ですかね。

 人間の具体的なる存在性の概念は「生」(vie)である。私はすでに現実的存在が運動せる存在であることを見た。生とはこの運動の具体的概念である。「我々の本性は運動にある、全き急速は死である」(129)。運動の概念は時間の概念とともに与えられねばならぬ。生とは実に時間性に係って解せられた現実的存在の存在性の概念である
(出典)三木清『パスカルにおける人間の研究』岩波文庫、1980年、22-23頁。

 人間の、あるいは人間が関わる世界への探究について最も大切なことは、繊細の心で事物を観察することだとパスカルは指摘しましたが、ズレについてもうひとつ紹介すると、日焼けするのは、7月や8月といった夏の盛りよりも、5月や6月、9月や10月の方が多く、その時期こそ紫外線の盛りだそうですね。


 「COOLPIX史上最小最軽量」

 今回、讃岐の向日葵の様子をスケッチするに使用したのは、2012年製のNikon COOLPIX S01というエントリークラスのコンパクトデジタルカメラです。近所のUSEDストアで偶然見かけ、「こんなに小さいデジタルカメラがあるのかー!」と驚き、その後、ネットオークションで手に入れたものです。「COOLPIX史上最小最軽量」で、「驚くほど小さく、軽く、美しい。大人のための超小型プレミアムコンパクト」とのフレコミです。

 たしかに小さいカメラです。大きさは約77×51.2mm(幅×高さ)というサイズで、iPhoneより小さいBlackberryよりも小さいサイズです。重量は100g以下で、持っていてもほとんど重量を感じず、こんなカメラがあるのかい!って思わず壁に投げつけそうにはなりませんでした。確かにトイデジタルカメラの類いで、USBのメモリースティックタイプの極小カメラは存在しますが、それらはあくまでも「まあ、とにかく写る」というシロモノ。片やS01は、オート撮影オンリーながら(露出補正等はできる)、基本的には「まぎれもない」カメラであり、その凝縮さには脱帽です。

 では、簡単にスペックを紹介します。撮像素子に1/2.9型CCDセンサー、レンズは35mmフィルムカメラ判換算で29-87mm相当の3倍ズーム。マクロ撮影は広角端で5cmと、どこにでも転がっている「ふつー」のコンパクトデジタルカメラです。液晶はタッチパネル式で、タッチUIが採用されており、撮影設定の操作はスマホチックでストレスなく使用できます。

 ただし筐体を小さくした都合上、バッテリー、メモリースロットの類もすべて内蔵式になります。 


徹底的なシンプルスペックながら「ニッコール」

 では、実写した感触としてはどうでしょうか。徹底的なシンプルスペックのため、ISO設定含めて基本的にオート撮影になってしまいます。暗くなると自動的にISO感度があがるのでノイズが増しますし、フラッシュ設定のONOFFも電源落とすと全て設定がデフォルトに戻るなど、「おれは、自分で設定して撮影したいんじゃー!」と叫びたくなるのも事実なのですが、それでも「おまかせ」で撮影すると、まあ、それはそれで「いいんじゃね」という程度にニッコールレンズはよく写りますね。

 スマートフォンのカメラ機能が格段に向上したため、デジタルカメラの売上がガクンと落ちていると聞きます。たしかに、スマホで撮影するとHDRでなんとなくよく写ります。しかし、カメラという機械を使って、風景を切り取るという純粋な意味、そして光学ズームという利器が、S01をスマホで代替できない「カメラ」の「カメラ」らしさ、そして機械で撮影するという意味を伝えているような「雑感」をファーストインプレッションとして抱きました。

 たしかに「注文」をつけようと思えばいくらでもS01につけることは不可能ではありません。しかし「限界」をもつ「道具」をどのように使いこなすのは「人間」の側の問題ですよね。使っているとそういうことを考えさせられました。

で……。とにかく、このカメラで撮影していると「なに、それカメラなの?」式に注目の的になります。 

「おもちゃじゃないよ、カメラです」

ガジェットとしてひとつはもっていてもいい、そして所有欲を奮い起こしてくれるアイテムです。



ということで撮影データ。オート撮影、ISO1オート、露出補正なし、ホワイトバランスオート。画像は10Mで保存。撮影は7月27日~8月5日。撮影場所は香川県善通寺市、三豊市、仲多度郡多度津町。


この記事が参加している募集

買ってよかったもの

氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。