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暮らしと学問 10 鬱陶しい梅雨どきに、「雨ブレーク」してみました。

(はじめに)梅雨が苦手という方は多いと思います。しかし、その事実から逃げることはできません。だとすれば、一面的な理解を取り除き、そもそも多様である世界を発見する必要があるのではないかと考えてみました。


観測史上もっとも遅い讃岐の梅雨入り


 ロードバイクで通勤していますので、梅雨時がもっとも大変な季節です。今年の6月は例年とは打って変わって好天に恵まれましたが、梅雨時なのに五月晴れという不思議な状況でしたが、讃岐もようやく梅雨入りしました。

 今年の梅雨入りは、6月26日とのことで、気象庁によると「昭和26年に気象台が梅雨入りの発表を始めて以来、最も遅い梅雨入り」だそうです。

 梅雨どきに限らず、雨が苦手という人は筆者以外にも多くいると考えます。自転車通勤ですと、濡れるのがイヤという話ですが、この季節のどんよりとした梅雨空と一種独特のジメジメ感は、人間という存在に対する圧迫感のように感じられるものです。

 しかし、そうはいっても、この生活世界から抜け出すことはできませんので、なにか楽しむきっかけというものを見つけ出していきたいものです。

コーヒーブレークと雨ブレーク

 先日、『朝日新聞』(2019年6月20日付大阪本社朝刊)の「声」の欄に「コーヒーには雨がお似合い」との投書がありました。

 小さなコーヒー店を営んでいる方からの簡牘で、お店の入り口からは、「法蓮格子をはめた古い邸宅のたたずまい」が見えるそうで、「そこにしとしとと雨が降ると、何とも言えない風情がかもしだされます」とのことです。

 雨の日は、人通りも少なくなり、普段でも少ない客足が雨の日はさらに減るそうです。

 しかし「雨もまた楽し」の心境だとか。曰く、

 嫌われがちな雨ですが、一息入れるには「コーヒーブレーク」と「雨ブレーク」、どちらもゆったりといい時間です。

 雨で人足が少ないからこそ、たとえば、喫茶店に入れば、貸し切り状態で、優雅な「コーヒーブレーク」と「雨ブレーク」を楽しむことができるのかも知れません。

考え方を変えるのではなく、世界が多様であるということ

 たかだが「雨ブレーク」なんて、物事は考え方次第と言われそうですが、筆者はそう単純な情緒論では片付けることができないと考えています。

 梅雨や雨に対して否定的なイメージや理解を抱くのは筆者だけではありませんから、考え方を変えるだけで、物事の多様さを理解することは可能です。しかし、考え方を変える以前に、世界そのものは多様性に満ちあふれていたことに留意すべきではないでしょうか。考え方を変える以前に、私たちがその事実を見落としていたというのが正確です。

 先日、梅雨の少雨からの帰宅途中、久しぶりの雨露に彩りを取り戻した紫陽花の前で、自転車を止めてみました。青々としたその葉に目をやると、蜘蛛の巣に水滴が集まっていました。田舎で生活をしていますと、蜘蛛の巣というのが実は厄介です。例えば、建物から出入りするだけで、巧まずも、蜘蛛の巣が顔をかすめてしまうということがよくあるからです。

 しかし、紫陽花に張られた蜘蛛の巣は、雨露を吸い、まるで芸術作品の如きで、思わぬ発見、あるいは筆者自身の「雨ブレーク」になりました

 暮らしのこと、地域のこと、あるいは、世界について、「たいていのことはなんとなく理解している」と常々思っていましたが、それは浅はかな理解( δόξα)ではないでしょうか。

 発見を英語で言えば、discoverになります。この言葉は、dis(取り除く)cover(覆い)から合成されたもので、覆いを取り除くが原意になります。私たちの暮らしは、覆いに張りめぐらされているのがその実相です。


二・〇一二
論理においては何ひとつ偶然ではない。あるものがある事態のうちに現れうるならば、その事態の可能性はすでにそのものにおいて先取りされていなければならない。
(出典)ウィトゲンシュタイン(野矢茂樹訳)『論理哲学論考』岩波文庫、2003年、14頁。


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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。

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氏家 法雄 ujike.norio

組織神学/宗教学、神学者、書評家。知識人の切れ端、物書きの端くれ、独立研究者。吉野作造研究では第一人者。無教会主義の無名のキリスト者。日本のE・ホッファーみたいなもんですかね。現在ウェブメディアSTARTING POINT( https://stapo.info/ )に寄稿ちう

暮らしと学問

もともと学者をやっていたのですが、思い切って象牙の塔を飛び出してみました。社会の中で発見したり、考えたことを綴っていきたいと思います。毎週月曜日か日曜日に更新しています。 最近気になるのは、暮らしと学問の不毛の対立です。それをどのように切り結べばよいのか--。考えてみたい...
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