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暮らしと学問 20  持続可能な開発目標(SDGs)を暮らしの中に取り入れる


(はじめに) 2030年のあるべき姿をもとに、今から何をやっていけばいいのでしょうか? そのアクションプランとなるのがSDGs(持続可能な開発目標)です。その取り組みには一人ひとりの個人の知恵と創意工夫が必要になります。今回は、僕の事例を少し紹介してみます。

小手先の取り組みではなく、それを主眼とすること

 先日から、SDGs(持続可能な開発目標)の勉強を始めています。戦争から平和へ、そして地球環境と共生したライフスタイルへの更新、あるいは人権が尊重される社会創出には、具体的にどのような手を打っていけばよいのでしょうか? それを17の具体的なゴールで示し、2030年までのアクションプランを豊富に盛り込んだのがSDGsというツールになります。

僕のSDGsへの入り口は地域再生でしたが、トレード・オフからトレード・オンへの転換は、地域社会の活性化だけに限定されるものではなく、あらゆる経済活動で必要不可欠なドライバーになりえるものだと期待しています。

 例えば、地球環境に配慮したあり方は、あらゆる企業活動に必須とされる社内変革です。単純な話でいえば、リサイクルやリデュースなどがキーワードとして飛び交っていますよね。

 従来の社会においては、そうした本業とは異なる企業活動は、どちらかと言えば、会社の評判をあげるための「手段」といった感で捉えられていました。しかし、現在必要とされるのは、一企業の営利の補助的役割に留まるものではありません。小手先ではなく、主眼としていかなければならないイノベーションととらえる必要があります。そしてそのことで、持続可能な開発が初めて可能になり、そこから新しいビジネスチャンスも創出されることに刮目する必要があります。

 SDGsは、世界を変え、近代文明が直面している袋小路からの脱出を目的に掲げられている。「誰一人取り残さない」世界を実現し、未来にわたっても人類とその他の生き物が、この狭い惑星の上で暮らせるようにするための目標と活動アジェンダである。
 よって、企業にとっては、既存の取り組みの美化や、コミュニケーションのフレームワークにだけ使っていては、何の意味もなさないのである
(出典)ピーター D.ピーターセン、竹林征雄編『SDGsビジネス戦略』日刊工業新聞社、2019年、260-261頁。


 わたしたちに出来ること

 さて、SDGsの取り組みは、国家や企業という団体にだけ要求されるものではありません。ひとりひとりの生活者が暮らしのなかで、ライフスタイルを見直すことも要求するものですが、具体的にはどのようなアクションが考えられるでしょうか?

 先日の『朝日新聞』(2019年9月1日付)の「声」の欄に「SDGs 我が家でやってます」という投書がありました。

 「国連の持続可能な開発目標『SDGs』は17の目標がある。どれも壮大なお題目で、自分には遠い話と思っている人がいるが、誰でもすぐに実践できることがある」として「私が実践している」ことを紹介していました。 

 私が実践しているのは、12「つくる責任 つかう責任」13「気候変動に具体的な対策を」14「海の豊かさを守ろう」だ。我が家では、米と野菜は自給自足し、化石燃料に頼らない暖房器具(薪ストーブ)を使い、米のとぎ汁や野菜くずはすべて自然に返す。近距離なら車は使わずに徒歩か自転車、長距離移動は公共交通機関を利用している
(出典)「声 SDGs 我が家でやってます」、『朝日新聞』2019年9月1日付。 

 米と野菜の自給自足や薪ストーブは、さすがに住んでいる地域や住宅環境によっては難しいものですが、野菜くずを自然に返したり、なるべく自動車を使わない生活は、ほんの少しだけでも暮らし方を変えてみるだけで実戦可能なものです。

誰もが取り組める目標

 僕は香川県で住んでいますが、そこは、典型的な自動車社会です。

 しかし、通勤ほかあらゆる移動は、ロードバイクで行う生活を3年以上続けています。もちろん遠距離は鉄道やバスを利用します。不便といえば不便です。そして、最初はそのライフスタイルを自動車がデフォルトの香川県民からあざ笑われたものです。

 しかし、慣れとは恐ろしいものですね。

 不便とはいえ、生活には不自由しておりません。ロードバイクで毎月500km程度を走っていますが、健康状態もよくなりました

 「身近にできることを実践することで、我が家はSDGsにわずかでも貢献していると思う」暮らしのあり方は、私たちの暮らしの中に満ちあふれているのではないでしょうか。

 SDGsは、あらゆる課題を広い範囲で取り上げています。それはわたしたちのくらしのなかの一つ一つが、SDGsのゴールと関係しているからです。世界のグローバル化が進んでいる今、わたしたちの生活はあらゆるところで世界とつながっています。
 つまり、SDGsは国連や政府、企業などの組織だけが取り組むのではなく、だれもがすぐに取り組める目標なのです
(出典)国谷裕子監修『国谷裕子と考える SDGsがわかる本』文溪堂、2019年、7頁。

 知恵を出し合い、創意工夫を重ねること、そしてその連鎖反応で課題を解決していく挑戦に、僕はワクワクしています。



氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。