あんときのデジカメ 夏への扉 with Ricoh Caplio R3
(はじめに)梅雨があけ「夏への扉」(ハインライン)が開きました。お馴染みの寄り道コース(さぬき浜街道 津島ノ宮駅→多度津町)を、2005年製リコー Caplio R3でスケッチしてみました。瀬戸内海は夏真っ盛りです。夏の暑さは苦手ですが、夏には不思議なワクワク感がありますね。
夏への扉
『月は無慈悲な女王』や『異星への客』『宇宙の戦士』など、ハードなSF作品で知られる作家がロバート・A・ハインライン(1907年-1988年)で、筆者も随分読み直したものです。そのハインラインの作品群のなかで、異色な一冊が『夏への扉』で、タイムトラベルを素材に、ロマンティックなSFものになっています。主人公のダンは技術者で、愛猫はピート。ピートは冬になると家中の扉を開けてくれとせがむのですが、それは、扉のうちのひとつが明るい「夏への扉」として接続されていると信じているからです。
冬に読むとその描写が妙にリアリスティックなのですが、ちょうど筆者の暮らす讃岐が梅雨明けしたこともあり、『夏への扉』をひもとき、そしてその扉を開いてみました。
彼は、その人間用のドアの少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。これは、彼がこの欲求を起こす都度、ぼくが十一箇所のドアを一つずつ彼について回って、彼が納得するまでドアをあけておき、さらに次のドアを試みるという巡礼の旅を続けなければならぬことを意味する。<中略>だが彼は、どんなにこれを繰り返そうと、夏への扉を探すのを、決して諦めようとはしなかった。
(出典)ロバート・A・ハインライン(福島正実訳)『夏への扉』ハヤカワ文庫、2010年、9頁。
瀬戸内海の碧い海と、夏らしい淡い青空
梅雨明けから2-3日した夜勤明けのその日、寄り道の定番コースとなった香川県三豊市から香川県仲多度郡多度津町へと通じるさぬき浜街道をロードバイクで走ってみました。
瀬戸内海の碧い海と、夏らしい淡い青空は、まるで「夏への扉」のようです。
作家の村上春樹さんは、「僕は夏大好き少年・おじさん(という表現を最近わりあい自嘲的な意味あいで使用することが多い)なので、夏が終わるとかなり哀しい」と「夏の終わり」というエッセイで綴っています。
筆者は夏はどちらかといえば嫌いというよりも「苦手」というの正直なところですが、それでも次のような春樹さんの指摘には頷いてしまいます。
夏が終わるとかなり哀しい。夏なんてまた来年も来るんだからと自らにいきかせても、海の家がたたまれたり、赤とんぼが空を舞ったり、海岸にウェットスーツ姿のサーファーが増えたりするのを目にすると、良いことなんてみんなもう終わってしまったんだという気がしてならない。こういう発想としては子供と殆ど同じである。
(出典)村上春樹「夏の終わり」、村上春樹・安西水丸「村上朝日堂の逆襲』新潮文庫、平成元年、123頁。
筆者の場合、夏の暑さが苦手なのですが、確かに海の家がなくなったり等など「夏が終わる」ことの「哀しさ」は強く実感します。思うに、それは「夏休み」が終わるということへの「哀しさ」に由来するのではないだろうかと考えています。
繰り返しになりますが筆者は夏の暑さが苦手です。
しかし、夏の終わりとは反対に夏休みの始まりに伴う「わくわく感」は今でも強く感じています。そして、その減退は今でも哀しく感じてしまいます。夏の始まりと終わりは非常に対照的ですね。
ともあれ、子どもたちは、夏への扉が開き、夏休み真っ盛りですよね。うらやましいのは筆者ひとりではないでしょう。
必要とされる機能がすべて凝縮されている最強のコンパクトデジタルカメラ
さて、今回、開かれた「夏への扉」へと案内してくれる筆者の「ピート」は、2005年に発売されたリコーのCaplio R3です。リコーを代表する名シリーズの1つで、所謂高級機ではありませんが、普及機あるいはエントリークラスのコンパクトデジタルカメラとは一線を画するカメラになります。
当時のコンデジが苦手として1cmマクロ撮影や広角(35mmフィルムカメラ換算で28mm)に特化したレンズが特徴で、アマチュアよりもハイアマチュアやプロに比較的好まれたカメラではないかと思います。
では、簡単にスペックを紹介します。撮像素子は有効画素513万画素1/2.5型原色CCDと標準的なもので、リコーでは初となるCCDシフト方式の手ブレ補正機構を搭載されています。手ブレ対応の走りのようなものです。レンズは、35mmフィルムカメラ換算で28-200mmの光学7倍ズームで、これが非常に使いやすいです。
ちなみに、手元にある2005年のコンデジには、発売日順にPENTAX Optio S5Z、コニカミノルタ DiMAGE X1、SONY DSC-T5、Fujifilm FinePix F11と4台ありますが、正直に言いますとこのリコーのR3はどのカメラよりも優れていると思います。
さて、リコーです。
レンズ交換のできない、いわゆる総金属製の「(レンジファインダー式の)コンパクトカメラ」やM42マウント式の一眼レフカメラのほか、優れた描写のGRレンズなど、Ricohというブランドは、あらためてその銘機を振り返ると、銀塩カメラ時代から続く「息の長い」カメラメーカーと評することができるのではないでしょうか。コニカやミノルタがカメラ事業から撤退するなか、ニコン、キャノン、そしてリコーのみがその橋頭堡を守っていることには驚くほかありません。
本機は、広角、望遠、そして1cmマクロ撮影など必要とされる機能がすべて凝縮されている最強のコンパクトデジタルカメラですね。
↑ 光学広角端28mmで撮影(A)。
↑ (A)を光学望遠端200mm,で撮影(7倍ズーム)。
ということで撮影データ。プログラム撮影、ISO100、露出補正なし、ホワイトバランスオート。画像は2592x1944(Fine)で保存。撮影は7月27日。撮影場所は香川県三豊市、仲多度郡多度津町。
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。