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鏡花風月

今日は「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考(末永幸歩 著)という本を読んだ。

タイトルの通り、「自分なりの答え」を“つくる”能力を育むことが美術の本来の目的だと唱え、ものの見方を培うことの大切さ、探究の大切さを、ワークを交えながらわかりやすく伝えている書籍である。ビジネス書としても人気らしい。まだ読了したわけではないが、読んでいてちょっと思い出すことがあったので、メモがてら書いておこうと思う。

書籍では、小学生の「図工」から中学生で「美術」になった途端、人気が急落し美術嫌いの生徒が増えるのだと指摘する。図工も美術もずっと好きだった私としてはそうなのかと驚く。

このように苦手意識を持たれるのは、技術や知識ばかりを教えていることが元凶だと書籍では指摘する。

これに関しては全く覚えていないのでわからないが、確かに苦手意識からか、「美的感覚がないから、見せるのが恥ずかしい......」と言う同級生が多かったのは覚えている。

そして、自分だけのものの見方や考え方、つまり”アート思考”を身につけることこそが、今行われるべき美術教育であると書籍では説く。

なるほど、なるほど。
となったところで、昔々、企業の公募で集まった小学生の絵を、コンクールのために審査した記憶を思い出した。大学院生の頃だ。

最終審査はまた別の偉い人がやることになっていて、私にはその前の各学年のトップ10を選出してくれというミッションが与えられていた。選出基準は特に決められておらず、「宇治田さんの視点で選んで」と言われていたので、思いっきり自分なりに選んだ。まさにこの書籍のいう、「自分なりの答えづくり」の試練である。

大学院生にもなるとディスカッションの機会も増える。私も「この作品のこの部分に、このような印象を受けて情動が動いた、またはこんなことを考えた」くらいは言えるようにしていた。なので数百点の中から絞り込む時も、選出の基準を明確に持っていた。下記のようなことだったと思う。

・その子なりの視点があるか
・表現しようとしていることが見えてくるか
・画力を超えて伝わってくるものがあるか

みんなわざわざ応募しているだけあって上手だったが、絵がうまくても上記の3つが弱ければ落とした。上手さだけで順位をつけるのは簡単だが、それでいいのかという反骨精神である。上手なら評価されるという価値観は、子どもに持ってほしくなかった。勘所を抑えるのがうまい子は、どうやって描いたら褒められる絵になるかわかっている。それを期待して描いた子には私なんぞに審査されてかわいそうに。そもそも子どもの絵に優劣をつけるってどうなの......とか悶々と考えてしまった。

精神を削りながら、丸一日かけてだだっ広い部屋のなかで1人で審査した。結果を提出する際に、一応「こういう基準で選びました」と伝えたが、わかってくれたのだろうか。翌年呼ばれなかったし、多分伝わってなかったのだろう。

そういった歯痒い経験もあって、この書籍もまだ読み始めの段階ではあるが、子どもも大人もアート思考を身につけようとする動きには共感を覚えた。続きを読むのが楽しみである。

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