あなたの提案書は誰が読んでいるのか

デザイン提案書を書いたことはありますか?お客様へデザインのコンセプトやその背景を伝えるためのものです。会社の業態によっては全く書く必要がなかったり、ディレクターが取りまとめて書くといった場合もあるかもしれません。僕はこの提案書の類を比較的よく書く機会があったのですが、昔この提案書で大きな失敗をしてしまいました。今日はそんな話を紹介します。

ずいぶん昔、多分5年以上は前の話になります。当時、自動車に関連するインフラ系大型SIシステムの開発プロジェクトにUIデザイナーの一人として参画していました。日本の半分のエリアを管轄する4つの基幹システムを刷新、統合するという無茶なコンセプトで、毎週のごとくプロジェクトチームとお客様の担当チームが10人対10人で丸一日会議をして仕様を決めていくといった、当時の自分にとってはメチャクチャなスケールの仕事だったと記憶しています。

その中で僕は、UIデザイナーとしてデザイン、画面仕様の策定、実装方法の検討やモックアップの開発など様々な仕事を担当していました。画面をデザインする際には、他のシステムを調査し、使用する色や文字のサイズ、フォントの種類などから丁寧に検討します。検討した内容はデザインメンバー全員でデザイン提案書として分かりやすいように端的な表現を用いてパワーポイントにまとめました。そして、ついに毎週の定例会でデザイン案を提案する時がきたのですが、事件はその時に起こったのです。

この提案書は分かりやすいけども使えない

片道、新幹線で2時間かけて定例会へ行き、デザインパートの持ち時間をフルに使って我々の提案がいかに見やすさや使いやすさに配慮しているか、今後どのようなプロセスでデザインパートを進めていくか、もう一人のメンバーと熱心にお客様にプレゼンテーションを行いました。しかし提案の内容は概ね好評でしたが、お客様のリーダーから驚くような返答が帰ってきたのです。

「この提案書はとてもわかりやすかった。お話しされた内容も理解できるし賛成だ。しかし、私は今あなた達が話した内容を私の上司にしなければならない。私は今の様に話せないのでこの資料では使えない。作り直して欲しい」

この回答には驚きすぎて言葉が出ませんでした。それまでも何度かデザインの提案はありましたが、たいていの場合その場で提案内容に合意をいただけていたので、この様な展開は初めてです。何より驚いたのが意思決定のプロセスにおいて、必ず全ての提案事項を持ち帰りお客様の上長や関連する部署全員に回覧をしてから合意形成がなされるという点でした。そして僕たちが提案書を作っていた際、この点は全くの盲点でもありました。

当時は提案書の読みやすさや体裁を優先し、不足しているところはプレゼン中に口頭でフォローを入れることを前提に提案書を作っていたのです。良く言うとシンプルな提案書、悪く言うとキーワードだけで中身はスカスカな訳です。そうなると、回覧などでその場にいなかった人がこの提案書を初めて見ると何が何だか分かりません。僕たちは意思決定のプロセス、誰がこの提案書を読むのかをすっかり勘違いをして全く場違いな提案書を作っていたのです。

プロジェクトが大きいほど提案書は一人歩きする

この時の失敗から得た教訓は大きく2点。

「意思決定のプロセスや誰がこの提案書を読む可能性があるかを事前に把握した上で提案書作成につとめる」
「後から見返した際にも提案プレゼン時の内容と違いが出ない様に、必要な情報は全て提案書にも記載する」

デザインコンセプトの提案などになると、どうしても抽象的だったりプレゼンの勢いで乗っ切るみたいなことがままありがちではあるのですが、UIデザインの様に上流での決定事項がその後の工程に大きく影響する様な分野の場合、コンセプトの背景や経緯など必要な情報は全て文字にして残しておくことが懸命です。また、プロジェクトが大きければ大きいほど提案書はあらゆる人に読まれることがあります。提案書が一人歩きした際にプレゼンテーションなしでも内容が正しく伝わる様、記載する内容は十分に注意する必要があります。

あなたの提案書は誰が読んでいますか?

もしあなたが駆け出しのデザイナーだったら、提案書を書くスキルなんていらないと思っているかもしれません。しかし、より多くの人を巻き込んだプロジェクトでは必ず非デザイナーにあなたの思いや考えを伝えなければならない時がやってきます。デザイナーに限らない話ですが、自分の考えを提案書として適切にまとめるスキルはこれからますます重要になってきます。そして、この提案書は誰に読まれるか、提案後にどこに行くのかを十分考慮しながら作成することがとても重要だということです。

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竹内 裕和

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