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ディテールの価値(1)

いろんな美術館や建築、プロダクトに触れると、デザイナーや建築家の本気が垣間見える時があります。

今日は先日訪れたミホミュージアムのディテールを。

写真は先日訪れたミホミュージアムの天井と通路。滋賀県の山の上にある開放的なミホミュージアムは六角形(三角形)を基本とし美術館全体を構成で、多面体のイメージのためか連続性があり自由度の高い空間でした。

通路の片側は大きな窓で山の上から紅葉した景色を眺めれるようになっていましたが、その通路の脇にある換気口には絶妙なディテールを施されていました。

ただ換気口が見えないようにするだけであれば、もっと簡単な仕上げ方があるかと思います。

壁側の大理石を垂直におろし、壁側と床の大理石を少し隙間を開け、床面の大理石で換気口を被せるようにすれば、簡単に隠れるかとは思うのですが、建築家のイオ・ミン・ペイはそれをせずに、この換気口へアールを付けて仕上げました。

イオ・ミン・ペイはルーブル美術館のガラスのピラミッドで有名ですが、調べてみると、このミホミュージアムに使用されている大理石はフランス産のマニドラという大理石でルーブル美術館のレセプションホールと同じ大理石でした。

フランスで採れた大理石をはるか遠い島国の山奥まで持ってくるということ自体すでにプロとしての徹底具合を感じます。

さらにイオ・ミン・ペイはその大理石でないと作り出せないと思ったからこそ日本に運び込み、その大理石を信頼し、ふんだん美術館に使い、さらに細部まで徹底してミホミュージアムを作り上げたのだろう…と想像します。

コスト面やレスポンスだけで消去法的に日本にある石を使うのではなく、その場、その建築に空間にあった素材への追及や求めるものへの徹底具合を強く感じます。(色や質感、風合いや加工のしやすさなど)


建築家は決してディテールを見て欲しいから、そのようなデザインにはしてないはずです。あくまで空間がより良くなるためにはどうするかを考え、施したのではないかと。

detailは「細部」という意味もありますが、「(重要でない)枝葉」という意味もあるようです。ふむふむ、となる。

見えているようで見えてない枝葉の集合、それはディテールの集合体。それが集まって大きな木になっていくのは、1つの空間、建築へと育つことと同じなのではないかと、多くの建築家やデザイナーの仕事を見て僕は感じます。

建築家にとっては特別ではなく空間づくりの上では普通のことかもしれないですが、僕みたいにその徹底されたディテール(だれも見ない枝葉)を見て、心がグッとなるこの感覚を多くの人に分かち合っていきたいなと思います。

今日はそんなディテールの話の第一回。

#建築
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#デザイン

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