あるべきKPI(目標)とは

経営を推進していくためには、目標(つまりKPI)を設定し、現状の進捗率と着地見込みとその根拠を定期的に確認することが重要です。そして仮に着地見込みが目標に対して乖離している場合は改善プランを作成しすぐに実行する。このようなことを定期的に回すことが重要なのですが、多くの企業は月次ベースで回されているかもしれません。月次ベースの場合、数字が芳しくないときの改善プランの実行が遅れるため、現場レベルではできれば毎週か、少なくとも隔週で回すのがお勧めです。もちろん中期計画の進捗などは年に1回の更新で良いと思いますが、年度予算の進捗についてはできれば四半期予算に分解し、四半期予算に対して隔週ベースで着地見込みを確認するのがスピード感をもって対応できるサイクルだと思います。

しかし、一方でそもそもどのような項目をKPIとして設定すべきかわからないという人もいるかと思います。会社の最終の目標はあくまでも会社全体の財務内容を良くすることですので、会社全体の財務指標から逆算して因数分解して設定していく必要があります。

個人的に非常に有効だと考えているのが、ROEです。ROEはReturn on Equityの略で、自己資本利益率を意味します。単純な計算式は、ROE=営業利益÷自己資本です。ただしROEはさらに以下の通り営業利益率、売上高総資産回転率、財務レバレッジに分解することができます。

ROEのいいところは、P/L観点、B/S観点の両方が包含されている点です。営業利益率で売上と利益をカバーすることができ、総資産回転率で売上債権回転率、在庫回転率、支払債務回転率、固定資産回転率までカバーすることができます。財務レバレッジは、財務の安全性の観点と会社の事業拡大のために必要十分な投資が行われているかの指標となります。財務レバレッジは総資産における自己資本の割合ですので、高ければ高いほど総資産の多くを借入などの他人資本で賄っていることを意味します。したがって、高ければ高いほど積極的に事業を拡大しようとしている証左ではありますが、逆に財務の安全性は脆弱になります。ただし、だからと言って低ければいいというわけではありません。財務レバレッジが低い場合には、積極的に投資をして事業拡大をしていないことを意味します。財務レバレッジの適正値は、200%~300%が適正ですので、この範囲を目指すのが良いかと思います。ROEであえて不足している観点を申し上げますと、それは借入余力です。借入余力の計算は、債務償還年数を良い指標だと思いますが、こちらの深掘りは、別途「投資余力・借入余力の算定方法https://uk-consultant.com/blog8/」をご参照ください。

営業利益率、総資産回転率、財務レバレッジはさらに以下の通り深掘りして因数分解していくことができます。

KPIを決めた後は、実際に各KPIの推進担当を決める必要があります。上記は一例ですが、売上や利益は営業部、人件費は人事部、原価関連については生産部等々関連する部署にKPIを設定するのがいいと思います。営業に売上目標を配賦するのと同様にコーポレートサイド側にも同じくKPIを設定することが重要です。

また、各部で推進状況・着地見込みを月次ベースで報告いただき、各部からの報告資料は経営企画部などが事務局として最終的にまとめて経営層向けに会社全体の状況を報告するようにします。その際は経営向け報告会議を設定し、各推進部署から報告させるようにします。会議資料についてはなかなか作り慣れていない関係で当初はぎこちない資料や会議になってしまうかもしれませんが、最初の6ヶ月間程度は資料や会議の質よりもまずは会議そのものを定着化・習慣化することを優先しましょう。初めから完璧な会議や資料を求めがちかもしれませんが、そうすると会議自体が定着しなくなる恐れがありますので、質については徐々に高めていくよう心がけるのが良いと思います。

その他留意すべきは、まず中期計画と連動するようにすることです。中期計画、年度予算、KPIなど全てが個別のプランニングなってしまうと十分な推進ができなくなってしまいます。したがって、KPIを設定する際には、中期計画をもとに単年度の予算に落とし込む。この予算目標値とKPIをイコールの関係にする。そうすると、各担当者は目の前の目標を推進すればいいということになり、それが最終的には中期計画の実現につながります。

以上の通り、そもそもどういったKPIを誰に課せばいいかわからない場合はご参考いただければと思います。

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