そのゴールが終わりではないとしても

「どうか笑顔でゴールできますように。」

去年の箱根駅伝でそう祈った選手がいる。
10年以上応援している東海大学で10区を走った、川端千都(かわばた かずと)選手だ。

ここ2年の東海大学は、「黄金世代」と言われる現3年生たちに注目が集まっていた。もちろん、彼らの活躍は目を引くし素晴らしい。2017年の出雲駅伝では、6区間中5区間をこの黄金世代が走って、結果見事に優勝した。

川端選手はこの時の出雲駅伝には出走していない。2017年、最上級生として彼が最初に登場した駅伝は、11月の全日本大学駅伝。

1位でたすきを受け取るアンカーだった川端選手。1位ではあるが、背後からは当時学生最強と言われた神奈川大学の鈴木健吾選手がひたひたと追ってくる。(そして最終的に追いつかれ、追い越され、東海大は2位で大会を終えた。)

その時に、テレビ中継でアナウンサーが語った内容を聞いていただければ、私がなぜ彼の笑顔を箱根で願ったか、少しわかってもらえるのじゃないかと思う。ぜひ、以下引用を見てもらいたい。

2017年全日本大学駅伝テレビ中継(テレビ朝日)8区実況解説音声から引用

「その川端ですが、渡辺さん(解説の渡辺康幸さん;元・早稲田大学監督、現・住友電工陸上競技部監督)、両角監督に言わせると、全日本を戦う上で最初からアンカーは川端と決めていたんだと。そんなふうにも話していました。東海大学が低迷していた時期、一年生・二年生で主要区間を走らざるを得なかった。本当に苦しい時期をともに乗り越えてきたから、チームを引っ張ってくれたことをずっと後輩たちも見ていたので、川端さんに優勝のゴールテープを切らせたいんだと、後輩たちもきっとそう思っていると思うと両角監督は話していました。」
*音声を聞いての書き起こしで、完全に正確ではないかもしれません。

この解説を聞く前から私は思い出していたことがある。

2014年度、川端選手1年時の箱根駅伝。1年生ながらエースが集う花の2区を走り、区間7位。1年生としては十分に立派な結果を出していた川端選手のことを。

その頃の東海大学は、佐藤悠基選手、村澤明伸選手(いずれも現・日清食品所属)といった圧倒的エースを擁する時代が終わったところだった。ここからどんな戦い方をするのか、ファンとして今とは違うドキドキを感じていた頃だ。

そんな時に、1年生で2区を立派に走りきった川端選手は希望の光のような存在だったと思う。少なくとも私にとっては。

その後も、伊達選手や佐藤選手、村澤選手といった東海大の歴代エースのように強烈な走りはないものの、皆で力を合わせて結果を出していかなければいけない時代に、大きく外さずきっちりと結果を出す川端選手を私はずっと見てきた。

そうして迎えた最後の箱根駅伝。10区、3位でたすきを受け取った川端選手を川崎市役所付近で応援した。日本一時帰国の最終日、見届けたらすぐに成田へ向かわなければならないというギリギリの計画だったけど、とにかく応援したかったのだ。

結果、最後1キロのところで、早稲田大と日体大に抜かされ、順位を落としてしまうことになった最後の箱根駅伝。私の祈りは届かなかった。そして4年生の引退と卒業。

2018年度。
コニカミノルタの所属となった川端選手は、11月の東日本実業団駅伝に5区で登場した。結果は5位。

この時の映像を見ていないので、彼のゴールに笑顔があったかはわからない。でも、この後実業団で彼が見せてくれる走りは、私が最後の箱根駅伝で願っていた姿になる、そんな風に感じさせてくれる結果だった。

日本時間の明日に迫ったニューイヤー駅伝では、彼の走りは見られないとしても、私はずっと川端選手を応援していきたい。今年は「3強」「妥当青学の急先鋒」などと言われるまでになった東海大学だけど、苦しい時代、注目されない時代にしっかりと土台を築いてきた川端選手とその世代の選手たちのことは、毎年駅伝のたびにきっと思い出すだろう。

*書いてみたものの、一方的なファンレターとしてもちょっと暑苦しいのでは…と思って下書きのままにしていたこの記事。このままお蔵入りされようかとも思ったのですが、#熟成下書き というハッシュタグに背中を押されて、ニューイヤー駅伝イブの今日、公開しました。


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Yukari

「走姿顕心」を観戦するということ。

陸上長距離(トラック競技、駅伝、マラソン)の魅力について、主にドラマを見るような感覚で、時々データを交えて、お届けします。
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