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Takanori Nishikawa LIVE TOUR 001 [SINGularity] ライブ構成について

西川貴教が本名名義でアルバムを引っさげて行っている1stライブツアー『Takanori Nishikawa LIVE TOUR 001 [SINGularity]』に参加してきました。

多大なネタバレを含みますので、参加前のかたなどはご注意下さい。

T.M.Revolution、abingdon boys schoolとしてこの20数年音楽活動を続けてきたなかで、「今一度、自分の歌でやれることを追求してみたくなった」ということから改めて本名である「西川貴教」として音楽活動を始めたとのことで、20年以上追いかけている身として「どんなライブやるんやろうか」という気持ちを胸にお台場に向かいました。


ライブ後の率直な感想

誰かがネットで言っていましたが端的にいうと「音楽版ポプテピピック」という、いままで他のミュージシャンも含めたライブで見たことの無い構成になっており「バカなんじゃないのか(誉めてる)」と思ったのでここにまとめようと思った次第です。


ライブ「SINGularity」の構成

今回のライブでは、ステージ後方に全面スクリーンが用意されており、そこにAIのキャラクターが居るというストーリーを軸にアルバムの楽曲の合間に芝居が入るというミュージカル?のような構成になっていました。
アルバムタイトルであるシンギュラリティという「AIが人間を乗り越えてしまうこと」を映像と芝居で補強する形のライブ構成です。

西川貴教=役者

この芝居仕立てのライブは近年ミュージカルなど演技の仕事を良くするようになっていることもあり「西川貴教=役者」の面を使った形と言えるでしょう。

西川貴教=ボーカロイド

音楽のアレンジはバンドサウンドやDJサウンドを織り混ぜつつそれぞれの楽曲のアルバムアレンジを尊重するような形になっており、TMRで良くあった「原曲をいじり倒してもはや別物」というアレンジではない、割りとスタンダードなアレンジで勝負していました。

今回のアルバムには布袋寅泰、UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也、澤野弘之(ガンダムUC)、神前悟(物語シリーズ)、Fear, and Loathing in Las Vegasなどなど、多岐にわたるミュージシャンが参加しており、その音楽の方向性やアレンジも見事にバラバラでいびつな作品になっています。

それは折に触れて本人が発言している「ボーカロイド西川貴教」という本名名義での活動の一つのコンセプトの結果でもあり、「まず始めに曲ありき、その上に声が乗る」という形をとっているからであり、今回のツアーでのアレンジもそのコンセプトを尊重したものとなっていました。

物語のラスト

アルバム曲を一通り演奏し終えたところで物語が終焉に向かいます。ここから先の展開を示唆するような「AIを道具のように使えばいい、対立する必要はない」というセリフなどが語られます。

まさかのアルバム2周め「戦術ポプテピピック」

一旦終わったと思ったところで、オープニング曲であるSINGularityがまた違ったアレンジで演奏され、そこから第2幕が始まりさっきまで歌っていた曲を全く違うアレンジ(EDM系)で演奏する暴挙に出ます。アルバム2周目に突入です。

なんとそれがすこぶる楽しい。客席の興奮はMAXになっていました。

同じアルバムを一つのライブで、全く違うアレンジで2回演奏する。これはAパートとBパート(30分アニメで言うところの15分のタイミングでのCMの前と後)で全く同じ映像を声優を変えて放送した「ポプテピピック」に似た構成となっていました。

今回のライブは「ライブ界のポプテピピック」と呼んで良いでしょう。

ボーカロイド西川貴教からT.M.Revolutionへ

あるとき本人の口から「T.M.Revolutionには音楽性なんてなにもないので、自分が歌ってさえいればT.M.Revolutionたりうるんです」というような発言がありました。

そして今回アルバム2周目の際、声はそのままでアレンジを大きく変容させて演奏していました。これはまさしく「西川貴教の声さえあればT.M.Revolution」の体現であり、一つのライブの中で前半で「ここ数年の西川貴教」を、後半で「この20数年の西川貴教」を拾い上げたかたちになっていました。

今回1stツアーなのでライブで何をやるか悩んでいたような発言がありましたが、最終的にここまでの自らの活動を総括する上で最も比重が大きかったであろうT.M.Revolutionの得意な「変幻自在の音楽性」というスタイルに持ち込んだのは素直にすごいなと思いました。

まとめ

西川貴教名義だから特別なこと(T.M.Revolutionとの違いを出そう)をしようというところから、一周回してT.M.Revolution的な「変幻自在の音楽性」をもってくることで前半の物語終焉時のセリフ「対立する必要はない」を見事に回収しつつ、今後の本人名義の活動でのライブにおける自由度も広がる結果になった気がしました。

イナズマロックフェス2019への出演も決まり、今後本名名義でどのような表現を投げ込んでくるのかが楽しみですね。

それにしても前半と後半で同じ楽曲を別アレンジで演奏するとか「バカなんじゃないのか(誉めてる)」と(笑)。

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