12時50分

ご飯を食べるにはまず、自分の部屋から出ないといけない。部屋を出て廊下を少し歩いて左手にあるキッチンに入り、冷蔵庫を開けるまでに、リビングにいる母親に声をかけられるかもしれない。それが少し嫌で億劫になっている。部屋から出たくない。出たら、何かしら話さないといけなくなるかもしれない。いや、そもそも母親よりも早く起きてご飯を食べて、さっさと家を出てしまえばよかったものの、あいにく朝から生理痛がひどく立ち上がれなかったのだ。待て待て、これは言い訳でしかない。確かに頭もお腹も絞られるような酷い痛みではあった。だから起き上がれなかったのも多少はわかる。でも、なんとか這いつくばってでもキッチンに行って何か白米や冷凍食品をレンジでチンするくらいはできたのではないか。はあ。なんだか嫌になる。これが憂鬱なんだろうか。

時計はまもなくお昼の13時を迎えようとしている。何か食べたいなあ。窓から見える今日の空はあいにくの曇り。けれどそこまで雨は含んでいないようで、薄ら灰色の隣の家の壁と同化しているように見える。日曜日だから車の音やバイクの音がぶんぶんとうるさい。まだ、鳥たちが元気に発声している方がマシだ。おや、道路の方が静かになった。まさか、私の小言が聞こえてしまったのだろうか。

ドアの向こうからはキッチンの近くにいる母親が何やら仕事をしているらしく、ペンをかちゃかちゃする音、ファスナー付きのファイルから封筒か何かを出す音、紙面の擦れる音も聞こえる。たまに聞こえるたんたかたんたかというのは、おそらく電卓だろうか。私は数字を見るのが苦手だ。しかし母親はそういうわけにもいくまい。家計簿を作ったり、仕事でも沢山計算のいることをしている。そういう意味では大変尊敬している。何故数字と向き合えるんだろうか。不思議でもある。

この文章もそろそろ終わりにしよう。続きを書こうにも腹が減ってはなんとやら、そろそろ限界が近い。さて、キッチンに行くまでにリビングにいる母親に声をかけられるかもしれない。それが少し嫌なのだが、はて、どうしたものか。

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