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AI投資のススメ第1回 AI投資の落とし穴

0.前書き

本マガジンは私の過去ブログ「シストレのススメ」「これからのお金の話をしよう」にて掲載したAI投資関連のコラムを再編したものです。
AI投資における重要なポイントは過去ブログの複数の箇所に点在しており前後関係などが分かりづらくなっているため、以下のそれぞれの回に関連する主旨のコラムをピックアップして要点を抜き出す形でパッケージングします。

第1回 AI投資の落とし穴
第2回 AI投資のあるべき姿
第3回 AIモデル構築における留意点
第4回 AI投資・サービスの実例

(各タイトルおよび構成は予告無く変更する場合があります)


1.あの『超高収入な職業』が人工知能出現で失業の危機!?

・表題は2016年5月20日にダイヤモンドオンラインに掲載された記事であり、将来的にAIがファンドマネージャーに取って代わるのでは、といった内容である。

・AI投資の定義を正しく表現すると「株式の超過収益の予測過程において人工知能(つまり機械学習)を利用する投資」である。

・「AIが人間のトレーダーに取って代わるか?」であるが、この質問(というか命題)はかなり見当違いなものであり、「そんなことは有り得ない」と言える。

・AI(機械学習)はデータマイニングにおいて大きな力を発揮するが、それはあくまでも質の高いサーベイという位置付けに留まり、他のクオンツ手法と同じくツールの域を脱することはない。


2.ディープラーニングの罠

※本コラムでのディープラーニングとは、オートエンコーダを深層に重ねたものを指します(参考書籍:「人工知能は人間を超えるか」松尾豊)

・そもそも人工知能とはデータに基づく単なる予測(識別)ツールでしかないが、サイエンスフィクションの影響で過大な妄想が付きまとっている。

・ディープラーニング(積層オートエンコーダ)は単純な次元圧縮技術であり、その過程で予測力が向上することは有りえない。

・ディープラーニングを投資へ応用する場合、入力変数にファンダメンタルなデータは採用すべきでない。これらのデータは既にラベル付けされており、ディープラーニングによる特徴抽出の恩恵は殆ど得ることができない。

・ディープラーニングを投資へ応用する場合、画像認識のようにチャートや板などの生情報をそっくりそのまま入力するしかない。チャートにディープラーニングを適用した場合、AI独自のテクニカル指標が生成される。

・このAI独自のテクニカル指標とはせいぜいトレンドやボラティリティであり、既存のテクニカル指標と何ら変わりはなく予測力は生じない。


3.株式市場におけるアルファ碁とは

※本コラムでのディープラーニングとは、畳み込みニューラルネットワークを指します(参考書籍:「ゼロから作るDeep Learning」斎藤康毅)

・ディープラーニングによるモデルが過剰フィッティングでなくとも、未来のデータに対しては識別精度が大きく劣化する。これは「株式市場は水物であり期間を隔ててモノが変わっている」ためである。

・ディープラーニングのモデル規模を縮小して表現力を落とすと、未来のデータにおける識別精度が向上する。その識別精度は約52%程度であり線形モデルのそれとほぼ同等となる。

・株式市場では時系列での構造変化が発生するため、特定の期間において市場構造を上手く表現することに「意味がない」。

・株式市場におけるアルファ碁(絶対的存在)とはこの構造変化を予測する必要があるが、そこには絶対的な法則は存在せずそれゆえにフレームワークも決めることはできない。


4.おわりに

株式市場などのフィナンシャルデータの予測は不確実性を伴うランダム問題です。これを通常の画像認識のようなただ1つの解を持つ単純問題と同等に扱うことはできません。この扱い方を間違ったために淘汰されていくヘッジファンドも少なくないようです。

次回の第2回では、投資に対してどのようにAIを適用するべきか、その使い所・勘所に触れて行きます。