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BTC自動売買は儲かるのか ~BTC自動売買に影響を与えた10の出来事~

UKIです。
みなさん三連休はいかがお過ごしでしょうか。最近noteを更新していなかったので、今回は気軽に読めるライトな記事を書いてみました(専門的な記事を書けという声が聞こえますがご容赦ください)。

BTC自動売買について

BTC自動売買のシステムはトレーディングbot(または単にbot)と呼ばれることが多いです。FXでいうEA(Expert Adviser)と同じですね。
EAではローソク足のテクニカル指標をベースとするストラテジーが多いのですが、BTCのトレーディングは株式取引と同じような板取引であるため最良気配近傍に指値をおいてスプレッド利益を狙うmmbot(market make bot )というものが人気を集めました(当然、EAのようなテクニカルbotも多数存在します)。

筆者は2017年の終わり頃からBTC自動売買に着手しました。本記事では筆者が経験してきた「BTC自動売買に影響を与えた出来事」を振り返り、現在のBTC自動売買の難易度がどうなっているか簡単にまとめたいと思います(以下BTC自動売買はbotと書きます)。

出来事1 botの黎明期について

私が参戦する以前の話ですが、国内大手取引所bitFlyerではヨーロピアンさん(@sen_axis)や秘密結社ふがふがさん(@hugahuga_bit)等の著名なトレーダーのbotがその出来高の殆どを占めていました。FXでブローカーが顧客の注文を呑むように、bitFlyerでは個人が稼働しているbotがその役割を担っていたのです。黎明期においてbotの競合は少なく、まさしくブルーオーシャンであったと推察されます。

「今、いっしょにサロンをやっている『田中』も同じようなプログラムを回していたので、2人でビットフライヤーの出来高の7、8割を占めることもありました」
たった2人でビットフライヤーの出来高の80%近くを占めるなんて、今だと考えられない……。しかし、ほんの2年前の話なのだ。
(記事より抜粋)

出来事2 Akagami氏によるプロモーション

2017年11月、トレーダーのAkagami氏(現カップヌードル氏)(@akagami_v2)がBTCトレードの自動スキャルbotチャレンジとして、およそ1ヶ月にわたり自身のbot損益を公開しました。Akagami氏のチャレンジは原資1万円に対する獲得利益が+55万円(1ヶ月の利回り+5500%)であり、その資金効率の高さが目を引きました。同時にチャレンジ終了時にロジックを公開しており、これをベースとしてbot競争に拍車が掛かりました。私が参戦したきっかけでもあります。

出来事3 での人のジャスティス

2018年1月、bitFlyerの取引高ランキングで上位に君臨していたでの人(@de_no_hito)がbotによる日次損益が100万円を超えることを公開します。での人は自身のbotを「ジャスティスbot」と命名しており、bot製作者の中で日次100万円を達成することを「ジャスティス」と呼び、これを1つの目標とする風潮が広がりました。
この出来事で重要なことは、「bitFyerの取引高ランカーは確かに存在し、その利益は莫大なものである」という事実が周知されたことです。

出来事4 マーケットメイク理論の浸透

2018年2月、筆者がブログにて「マーケットメイク戦略の理論」を公開します。マーケットメイクなど高頻度取引に関する理論や分析は株式投資の分野で先行研究が進んでおり、体系だった理論をbotに応用する流れが出来上がりました。

出来事5 botコミュニティの台頭

2017年以降、botに関する大きなコミュニティが形成されるようになります。コミュニティ内では初心者をサポートし、検証ツールやAPIインターフェースを整備し、ロジックに関する議論や提供が行われました。筆者の知る限り、当時の三大コミュニティは、btcfxbot(くーるぜろ氏設立)、MANAコミュニティ(モイ氏設立)、AKAGAMI LOUNGE(akagami氏設立)であったと思います。
なお現在でも各地にアングラなコミュニティが存在しています(笑)。

出来事6 天下一bot会の開催

2018年6月、トレーディングbotの成績を競う天下一bot会(第一回)がセビル氏(@Seville1985)主催のもとで開催されました。様々なタイプのbotが参戦しましたが、上位に食い込んだのはやはり高頻度で微小な利益と取引高を稼ぐタイプのものでした。この大会の優勝者はらっちょ氏(@rc_uni0907)でその利回りは2週間で10000%超となりました。
なおこの頃、筆者が高利回りを達成するためのbot構築の考え方についてnoteを公開しています。大会とnoteの影響によってbot開発競争がさらに過酷なステージへ移行していきます。

出来事7 バックテスタの高度化

仮想通貨botにはFXのMetaTraderのようなバックテストツールがないため、bot製作者はbotを実際に稼働しながら改良を行うトライ&エラー方式の開発が主流でした。Nagi氏(@Nagi7692)が開発したChartCreator(Pythonでチャート描画するツール)ではバックテストや取引履歴を可視化することでき、分析の質が大きく向上することになりました。また、約定遅延やロットの影響を考慮した検証も進み、高度なバックテスタはbot製作者にとってなくてはならないものになります。
以下はmagito氏(@regolith1223)の事例です。

出来事8 非公式APIを巡る議論

bitFlyerには公式に提供されているAPIの他に、一般のブラウザからの注文を処理するAPIも存在します(非公式API、裏API、WebAPIなどと呼ばれています)。bitFlyerは価格の急変時に注文が非常に通りにくくなるのですが、公式APIよりも非公式APIのほうが注文処理が優遇される、という現象が確認されていました(あくまでも実証的な知見です)。この非公式APIの使用の是非は時折議論が勃発するのですが、これをnoteで無料で公開した方が叩かれる事案に発展しました(非公式APIの使用に関して、現在ではbitFlyerの禁止事項に明記されています)。
bot構築ではロジックの優劣も重要ですが、いかに速く情報を取得し注文を通すか、といった問題にも直面します。このためバックドアや非公開の取引所仕様(トレーディングエンジンの内部仕様、相対業者であれば価格参照先の情報、etc)など、他者が知らない情報や手段を持つことが非常に優位となります。

出来事9 端数bot

出来事8と近しい内容ですが、取引所仕様の欠陥を突いて利益を得るbotが現れました。bitFlyerの端数切捨ての仕様を利用して稼ぐbotです。このような手法はいわば合法的な取引所ハッキングと呼ぶべき事案だと思います。以下の記事はスナフキン氏(@snufkin0866)の端数botに関する解説です。
端数botの情報が拡散されて以降、いかに早くnoteで端数botを売って稼ぐかというbot販売競争に発展しました。

bitflyerの証拠金の端数処理(小数点以下の損益の処理)はround関数によってなされています.(中略)つまり同じ額の利益と損失を得るのに,狭い幅で利益を得て,損切りは広い幅を許容することができるのです.
(記事より抜粋)

出来事10 レバレッジ規制の導入

2019年4月、bitFlyerの証拠金取引にレバレッジ上限4倍の規制が施行されました。これを機にbitFlyerの出来高は縮小し、苛烈したbot競争と相まってbotの難易度は極端に難しくなり今現在に致ります。


最後に BTC自動売買は儲かるのか

ようやく本題に至りました。上記の出来事から現在のBTC自動売買の置かれた状況についてお察し頂けたと思います。現在でも利益を出せるBTC自動売買の手法は限られていて、

(1)スイングbot
いわゆるトレンドフォロー。テクニカル指標やチャートを元に中長期のトレンドに従って売買を行う。複数のトレンドフォロー戦略を組み合わせて使うことが望ましい。ただし最大ドローダウンが大きく必然的に低レバ運用となるため資金効率が悪い。また低勝率であるため損益に一喜一憂してしまう初心者には不向きな手法。

(2)裁定取引bot
現物と先物間や取引所間の価格の鞘を抜くbot。未だに収益機会は残されている。トレーディングの頻度は一瞬の鞘を抜く高速のものから四半期ホールドになるような長いものまで様々である。高速であるほど椅子取りゲームとなって難易度が高くなる。
BitMEXの四半期先物の鞘取りは高速性が要求されず、10%台の利回りが期待できる(ただしカウンターパーティーリスクは存在する)。

(3)ファンディングレート拾い
BitMEXをはじめとする一部の取引所は所定の時間にファンディングコストを付与・徴収しており、これを拾い集める手法。ファンディングをもらうために構築したポジションをヘッジするため、低コストでポジション構築できる他取引所も同時に利用する。最近では手数料無料期間であったTAOTAOがヘッジ取引所としての役割を担っていた(現在は手数料無料期間は終了)。

(4)高頻度bot(主にbitFlyer)
弛まぬ努力が必要であるが、現在も日次損益をプラスで推移させることが可能。ただしプログラミングやトレードの経験が浅い方が、noteなどで販売されているbotで利益が出せると考えるのは絶対にやめたほうがよい。

皆さんも周知の面白くない結論になってしまいましたね。本記事はBTC自動売買に興味を持っている多数の方に読んで頂きたいと思います。本記事で挙げた以外に「こんな出来事があるよ」という方がいれば教えて頂けると嬉しいです。
お付き合い頂きありがとうございました。