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わからないけど、惚れてた

箕面。今回大阪で一人暮らしするにあたって、どうしても行きたかった場所である。1人で大阪に行って祖父と1週間過ごしてから今年で10年。祖父が
元気だった時は毎朝のラジオ体操後に箕面まで散歩していたという。10年前、祖父に連れて行ってもらった箕面。何故か今、行ってみないといけない気がずっとしていた。大阪1人暮らしを始めて27日目、午後が空いていたので箕面に向かった。
バイト後に向かった為、電車内で寝てしまい盛大に乗り過ごしてしまったが無事箕面に着いた時、駅の記憶が全くなかったことが残念。起こしてくださったクリーム色の服を着たオジサンありがとうございます。このまま宝塚へ各駅で向かうところでした。
まずは当時の記憶を頼りに箕面、その時の道を脳内に再現しつつ歩いていく。へー、紅葉天ぷらなんて売ってんだ、全く記憶になかったな、そして完売、知らん情報を、多すぎる。箕面ビール、ピルスナー。バイト先で扱ってるから馴染みしかない。大江戸温泉物語。やっと記憶が合致する。この前で「ここはな、よく言ってたんだけどな、日帰りが少し前に出来なくなったからもう全然いけてないんだ」なんて祖父が言っていた。10年経てば日帰りコースが復活していた、来たかったよ、そのまま足は滝へ向かう。道中には昆虫博物館がある。当時シロアリの特集をやっていて、写真で見たシロアリが思ってたより可愛くて当時の自分の好きな昆虫ランキング1位に躍り出たことを思い出す。まだ時間は15:00すぎ。入館したかったが、まさかの休館日。シロアリに会いたかった。シロアリは木を齧り家を蝕むことまで今度はしっかり知りたかった。未だに実家にシロアリの木を齧ってるポストカードあるんだぜ、誰に送ればいいんだよ、んなもん。そして昆虫館の目の前で25歳ぐらい男性4人がグリコをしている。羨ましい人生だ。
何個かある別れ道、恐らくこちらだろうと進んでゆく。橋渡ったよな、この辺で。猿、さる、サルいて欲しいと周りを観察する。どんどん山道を登っていくと明らかに記憶と違う急な斜面。あるところで柵がなくなった。目の前にあるのは明らかな獣道。ここまできたら登るしかないよな、10歩ぐらい進んだら柵がまたこんにちは。にしても、この山道急である。周りも人、誰1人もいない。もっと軽やかに滝っていけなかっけ?こんな高い階段、人生のぼりたくないよ、なんて違うと思いながらも進んでいく。そして頂上、でたのは道路だった。箕面だから適当に歩けば帰れると思っているので焦りはしないが、ひたすらに「ここどこだよ」と言ってその辺歩き回った。先程まで足を上げ下げしていたから子鹿のように震えている。試しに標識に従い近くの展望台まで降ってみる。本当に獣道だった。

特に思ったこともない

ただ何も思わなかった。まぶしい、ただそれだけ。望海展望台みたいな名前だったから海が見えると思っていた、そんな訳はもちろんなかった。スズメバチの巣とかもなかった、そのまま降る。
適当に降る、いっこいっこの階段がおおきくて。手を広げて飛ばないと降りたくない。そんなことを10分は続けただろうか、昆虫博物館まで戻る。この間40分。グリコの人たちもいるわけが無い。どこで道を間違えたのだろうか、目の前にはここを地元だと主張されても明らかに場所が離れすぎな気もする高校名を背負った野球部達が走っている。とりあえず着いて行ってみる、きっと滝があるんじゃないかと。作戦は功を奏し、露店は全部しまっている滝へ着くことができた。10年前、自分と祖父が見た最後の猿もいない。居るのはカップル、野球部、高齢者、オレ。カップルがツーショ撮っているから、写らないように写真を撮る。

なんとも。

なんとも情緒も記憶にも残りそうにない。明らかに脳内に残るのは山登りだろうし。そして17:00から大江戸温泉物語、日帰り夜割が始まるので、適当な時間までここで過ごす。本来はこの時間を昆虫館に使う予定だった。営業時間について調べなかった自分が悪い。周りのカップルの会話が痛い。平日でもこんないるんすね。まぁ、どうとでもなれ。とりあえず下山。よく分かってなかったが、かなり滝と温泉まで距離があったらしい。何も考えずに歩きすぎていた。40分もあるのかぇ。猿だったらどれぐらいかかるのだろうか。

初めて大江戸温泉物語の敷地内に足を踏み入れる、なんて厳かなんでしょう。エレベーターのボタンは2つ。ものすごい速度で上へ、そして橋を渡り、デカい自動ドアへ。古いゲーム機、あぁ、この感じね。少し熱海が恋しくなる性。日帰り受付場所へ、かなりの初心者ムーブを醸しつつ入場していく。縁日エリア、ご飯エリア、ゲームエリア。ひとまず風呂じゃ風呂。


風呂上がり、牛乳の値段¥180に驚き、買えずにゲームエリアに向かってみる。知ってるゲームはないかなと。

ふふふ

あったぜ、あった、ぷよぷよ。人生で初めてぷよぷよをしてみる。想像よりは上手く行っていた気がする。そしてどうやら二階には卓球スペースがあるらしい。向かう。カップルだらけ。そうだ、自分一人で来ていたんだった、なんか祖父ときたつもりになっていた。ひとまず一人でボールで遊ぶ。なんて虚無なんでしょう、そして温泉て誰かと来るものなのね、とも思う。

タイマーなんて使わない

視線が痛い。そそくさと下へ降りる。そしてご飯の誘惑。ここ最近は1日100円を食費にしていたので外食なんて夢よりも夢、興味すら薄れていたところだ。悩みに悩む。ここでお金を使っていいものか?ここまで節約してきたのにここで止めていいものか?しかし温泉1人リア充になりたい、気がついたらお会計1200円。タイマーを待つ、そして座敷に1人。


やはり
これが青春というやつだろう

幸せだ、とカウンター向かいでケチャップを出しながら1人、思う。これが自分が自分への聖地巡礼である。ちゃんも揚げたてポテトとサーモンチーズとレモンスカッシュ。勿論飲めないがきっと酒って飲んだら美味しいんだろうか。気づけば1人、泣きそうになっている。
テレビではバイト先がたまたま紹介されている。内容がうっすいこと、うっすいこと。見たくなかった、現実すぎる。多分今こそ、シロアリのポストカード使って誰かに送るべきだし、齧られすぎてさ。時刻は20:00を回り流石に帰ることにする。明日もバイト。現実じゃ。


何とか家に着くと、この前買ったチョコレートが無くなっている。犯人とするならば遊びにきた父親だろう。世の流行り、チョコレートを買うのは甘いという遠回りのお告げだろうか?ひとまず連絡をとってみる。チョコレートの入っていた紙袋とチョコがない。他に飴を入れていた、飴だけは直に置いてある。食ったろ。なけなしのところ金よ、どこへ行った。

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