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『このテープ持ってないですか?』『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』からみる、ウィキペディアとモキュメンタリーの相性が悪いこと

2022年12月27日から29日にかけて、『テレビ放送開始69年! このテープもってないですか?』という番組が、BSテレ東で放送されました。この番組はいわゆるモキュメンタリーです。

モキュメンタリーとはドキュメンタリーに見せかけたフィクション作品のことです。有名なところでは『タローマン』や『放送禁止』などがあり、この番組のプロデューサーもかつて『Aマッソのがんばれ奥様ッソ』というモキュメンタリーを手掛けています。

例えば『このテープ持ってないですか?』ならドキュメンタリーを装ったホラーです。「テレビ局の倉庫にすらない貴重な過去の番組を、視聴者から募集して放送する」というテイでやっています。過去の貴重な深夜番組のテープが、みごと発見されました……というテイで始まります。その番組内容が回を追うごとに少しずつ狂ってゆく……というテイになります。しまいには現在テープを見ている人にも狂気が伝播した…というテイで、番組が終わります。

その深夜番組の名前は『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』といいます。ここでようやくウィキペディアの話が始まりますよ。

坂谷一郎のミッドナイトパラダイス

[[坂谷一郎のミッドナイトパラダイス]]という記事が、ウィキペディアに建てられたのです。これは私の推測なのですが、おそらく、この番組は本当にあったのだということを示すために、記事を立てたのかもしれません。モキュメンタリーはまず、ドキュメンタリーであると装わなけれならないからです。

立てられたのは2022年12月27日 (火) 14:40(UTC)です。そして結局その記事は
2022年12月27日 (火) 15:33(UTC)に削除されました。どうしてこんなに詳しくわかるかというと、すべて記録に残っているからです。

ウィキペディアにおいては、記事が立てられたことはもちろん、削除されたことまで、ほぼ全て記録が残っているのです。具体的にはこちらです。

12月27日 (火) 14:40(UTC)は日本時間に直すと23:40分なので、初回放送の直後に立項されたことになります。ではなぜ1時間もしないうちに削除されてしまったのでしょうか。

WP:CSD#全般8 初版投稿者による依頼または白紙化と書いてあります。ウィキペディアでは、自分の立てた記事が削除されるよう、自分で依頼することができるのです。ちょうどキングストン弁のようなもので、問題があるときや削除した方がいい時は「自沈」できるわけです。

では一体何が問題だったのでしょうか。

ウィキペディアとモキュメンタリー

これも私の推測ですが、おそらく間違いないと思います。[[坂谷一郎のミッドナイトパラダイス]]という記事の問題は、出典が存在しないことです。

まずモキュメンタリーなので、番組が実在しません。『このテープ持ってないですか?』という番組そのものも、12月27日が初回放送なので出典は不足しています。よしんばあったとしても、やはりモキュメンタリーなので、『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』に触れることはできません。ネタバレになってしまいます。

どうやっても出典をつけることができないのです。Wikipedia:削除の方針のケースE「本文が検証可能性を満たさない」に当てはまってしまうのです。

もしも自ら即時削除を申請しなかった場合、通常の削除依頼に回されたことでしょう。通常削除依頼は一週間以上かかります。すると、テレビ放送が終わって、年を越して、三が日の終わりにようやくケリが付く、という事態に陥ります。確かにそれは避けたいでしょう。

現段階ではウィキペディアにあった記事は削除されたため、もう特に問題はありません。ただ、ニコニコ大百科にも同様の記事があり、そちらではいまだに議論が続いているようです。私はニコ百は門外漢であり、方針やシステムがロクにわかりません。ニコ百については何も言えません。見た目が格好良い。

まとめ

1:モキュメンタリーとウィキペディアの相性はとても悪いと言わざるを得ません。モキュメンタリーは、「これは本当にあったできごとなのだ!」ということを装わねばなりません。だからといってウィキペディアに記事を作ろうにも、出典がありません。そんなできごとはないからです。

2:ウィキペディアで何か手違いがあっても、ある程度なら取り返しがつきます。「まずい記事を立ててしまった!」と思っても、キングストン弁があります。「まずい内容を書いてしまった!」と思っても、削除依頼を出せば消すことができるかもしれないのです。

1月9日追記:キングストン弁は自沈を目的とした弁ではないそうです。あくまで転用とのことです。ウィキペディアに出典付きでかいてありました。

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