よるのうきわ

鉛筆でコピー用紙に絵を描きます

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最近の記事

フィールドアスレチックと父子

先日、息子と一緒にフィールドアスレチックに行ってきた。 丸太や縄などを張り巡らせた櫓が山の中にいくつもこしらえられていて、よじ登ったり飛び越えたりして楽しむ、スーパーマリオっぽい遊びだ。思ったよりも危険で気を抜くと大怪我をする。程よく整備された中で怖さと楽しさを楽しむ、たいへんテンションの上がるところである。 幼い頃行ったそれはもう本当に、半狂乱になる程楽しいところだった。あの頃の楽しさを我が子にも体験してもらいたい。 赴いたのは奈良は生駒山にある施設。規模が大きく、整

    • ドライブとYouTube

      先日、大阪から長崎までの長距離運転を敢行した。 家族を乗せて中国地方や九州の観光地をめぐった後、最終日には家族を車から新幹線に載せ替え、あとはたった一人で黙々とドライブを楽しむ。そういう旅だ。 高速道路は使わずに国道や県道を通って16時間以上。いくつか休憩を挟んだものの、行き帰りで約1500km。復路はほとんど休みも取らずぶっ続けの運転だった。 マイカー旅行は交通費がだいぶ節約できる。浮いた費用はその分、宿や食費に回すことが出来る。そういう理由で奥さんを説得したわけだけ

      • 「テーフタク」の謎

        僕の頭の中に何十年も保管されている、意味不明の呪文のような言葉がある。それは「テーフタク」という、カタカナで表記する短い言葉である。 意味は全くわからないし、どこで知ったのかも覚えていない。ただ、幼い頃からずっと頭の片隅に残っていて、その呪文を思うたび実家の埃臭さを嗅ぐような錯覚が起こる。僕にとってテーフタクとは不気味な郷愁を誘う言葉だった。 そして、テーフタクの仲間としては「ケイサンショウサ」がいる。急に仲間と言われても戸惑うだろうけど、そういう事になっている。 取り

        • 天国っぽくもある共同浴場の話

          台湾は北投に、天国みたいな感じの屋外公衆浴場がある。 といっても、至れり尽くせりの高級温泉とかそういうところではなく、むしろやや不便ですらある。だがすこしだけ天国めいたものを感じる、そんなところだった。 北投駅を降り、20分ほど歩くと温泉宿が並ぶ坂道にたどり着く。台湾では有名な温泉地だ。 その坂道の中腹あたりに、北投温泉親水公園露天温泉という屋外公衆浴場がある。 見た目は大きめの露天風呂という感じだが、他と違うのはここが水着着用での混浴風呂だというところ。 水着着用だか

        フィールドアスレチックと父子

          カンカラ三線

          カンカラ三線(さんしん)という楽器がある。 「三線」とは、沖縄民謡を演奏するときに用いる三味線のことで、ほとんどの方は目にしたことがあるだろう。カンカラ三線というのは、弦の音を増幅させる胴(チーガ)の部分をスープ缶などの大きめの空き缶で代用して出来ているものだ。 戦前から子供のおもちゃとして親しまれており、戦後まもなくの物資の少ない中で廃材を組み合わせて作られたそれは疲れ果て荒んだ人々の心を大いに和ませたという、チープな物ながら沖縄の歴史を語る際には欠かせないアイテムの一つ

          カンカラ三線

          もとや食堂と冷奴にねりがらし

          大阪京橋で貧乏をしていた頃、足しげく通っていたのが、もとや食堂という定食屋さんだ。この値段でやっていけるのかというくらい安く食べられ、しかも大満足のボリュームも約束されている、本当にいい店だった。 例えばフライ定食を頼むと、大きいのが4つくらい乗った皿が運ばれてくる。煮付け定食の鯖も大きい。単品の刺し身もおおいに満足できる厚みで、どれも迫力があった。ご飯は大盛り、テーブル備え付けのたくあんも食べ放題だ。 フライ天ぷらから丼もの、ラーメンそばから刺し身カレーまで、メニューは

          もとや食堂と冷奴にねりがらし

          金魚に餌あげたか問題

          なんとなく金魚たちが窮屈そうに泳いでいるので、金魚の水槽を大きい物に変えた。横幅30cmから60cmへサイズアップ。 入れ替えた当初は二匹とも怯えたように水槽の隅っこにひっついたままで、断りを入れず水槽を変えてしまったことを後悔したが、次の日の朝には水槽の端から端までスイーッと綺麗な疾走を見せてくれた。うれしい。ああ金魚も少しはよろこんでくれたかな、と胸をなでおろす。 とはいえ、たったの横幅60cmである。本当はもっともっとまっすぐ泳ぎたいに違いない。しかし我が家ではこの

          金魚に餌あげたか問題

          コンビニが終了するとき

          「本店は閉店することにいたしました、長らくのご愛顧誠にありがとうございました」 僕はそのコンビニにほぼ毎日ビールを買いに行っていたものだから、店先に貼られたその掲示を見て本当に面食らってしまった。ここに通い続けてもう10年ほどになる。 とはいえ、ここからきびすを返してあともう1分ほど歩けば、すぐに用事は事足りてしまうだろう。このあたりはいわゆるコンビニ密集地帯で、5分の徒歩圏内に4件ほどが店を構えていた。 僕はそのチープなMS Pゴシックをよくよく眺める。閉店まであと二

          コンビニが終了するとき

          開店してるんだけど明かりすらついていない電器店

          ちょっとひなびた商店街には、やってるんだかやってないんだか分からない電器店がかならずある。 展示してある液晶テレビのフチは妙に分厚く新古品様であり、だいぶ日焼けしている値札を見ると眉をひそめるほど高い。客に売ってやろうとは露ほども思わない、という気概を感じさせる。 ひとけの無い店内のカウンターには分厚いパンフレットやダンボールが乱雑に置かれ、まるで随分前に打ち捨てられたかのようだ。にもかかわらず「べつに入ってきてもいいよ」くらいの感じで、店先の引き戸は人ひとり分くらいの幅

          開店してるんだけど明かりすらついていない電器店

          プルームテックはめちゃヤバいスマートニコチン吸引器である

          会社にアイコス(iQOS)を忘れてきたのでたいへんにムシャクシャし、つい近所のコンビニに置いてあったプルームテック(PloomTECH)を購入してしまった。まさに薄汚いニコチン亡者の末路といった風体だ。 プルームテックとはJT(日本たばこ産業株式会社)がアイコスに対抗して開発した電子式無煙たばこの名前だ。巷ではあんまり良い評判を聞かなかったものだから期待もしていなかった。 家に持ち帰り、ややかっこいいパッケージを開けて機器を組み立てる。機器の吸口を軽く含みゆっくり息を吸う

          プルームテックはめちゃヤバいスマートニコチン吸引器である

          女性タレントと芸能界志望の少女

          出先でスマホの電池が切れそうだったので、電源が使える喫茶店を探し、そこで充電がてら休憩を取ることにした。 ロハスっぽい雰囲気の喫茶店だ。パンケーキがイチオシらしく、まわりはパンケーキに興じる女性ばかり。若干の場違いを感じながらフェアトレードのコーヒーを啜っていると、カウンター席の隣に女性客が二人やってきた。 スマホをいじりながら彼女たちの会話を聞くともなしに聴いているとその内容がなかなか面白そうだったので、僕は小さく音楽を流していたイヤフォンを外し、積極的に盗み聞く事にし

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          橋梁下の連なり

          体力を補うために、ウォーキングを始めた。ランニングはとっても辛いので、ウォーキング。散歩ともいう。時間があるときはだいたい10キロくらい歩く。 いつも同じコースを歩くのは面白くないので、定期券の範囲内で電車に乗り馴染みのない駅に降りて歩く。狭い路地を選んで歩くうち河川にたどり着く。大阪は川が多い。 夕暮れにキラキラ輝く川面を見ながら土手を降り、川沿いの道を歩く。好きな橋梁の下をくぐるときは歩みを止め、上を見ながら一服する。 川を横切る橋梁や、バイパスの高架下は好きな人も

          橋梁下の連なり

          ビデオゲームの夜

          ちょっと前の時代の深夜は、みんなゲームをして過ごしていた。 特に金のない学生は中古ゲーム屋で適当なのを買って、その一つのゲームをクリアするまでプレイした。 気がついたらスズメがちゅんちゅん鳴き始め、カーテンの向こう側が薄明るくなっている。ああ今日もやってしまったか。肺の奥がズンとする徹夜ならではの重さを感じながら、朝から入るアルバイトのことを思う。 あの頃は誰の家にもゲーム機があったし、逆にゲーム機を一台も持っていない人間は求道的な人間か、変わり者だという扱いだった。殆

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          飛行機が近すぎる街

          阪急電車宝塚線は庄内駅を降りてしばらく歩いていると、伊丹空港行きのジャンボジェット機がいくつも頭の上を通り過ぎる。 そして操縦を誤ったジャンボ機がこのまま向こうのビルに突っ込むんじゃないかとハラハラするくらいの結構な低空飛行で、つくづく伊丹空港はすごいところに作ってあるなぁと思う。 が、ひっきりなしに飛行機が頭上にやってくるものだから、やがてその光景にも慣れ、最初は耳をつんざくように感じたすさまじい轟音も、そのうちゆるゆると街の雑踏の一部に溶け込んでしまう。 つまりこの

          飛行機が近すぎる街

          ひとりで肉を焼くのが一番良い

          一人暮らしの時は、自宅のアパートで一人焼肉をよくやっていた。 6畳のワンルームだと肉を焼いていい場所はひとつに限られてくる。狭い台所に据え付けられた心許ない換気扇の下、ひとくちコンロの前に立って安い肉を焼く。 フライパンから肉をつまんでそのまま頬張る。そうして左手に持ったままのビールを飲む。うまい。好きなものを好きなだけ食べられる。 立ち飲みは酔いが回りにくい。5,6本ほど缶ビールを空ける。そうして充足した気持ちのまま、多少油臭くなった万年床に潜り込み、眠りにつく。

          ひとりで肉を焼くのが一番良い

          コインランドリーの仕上りを待つ時間はなにか特別な手触りがある

          すこし金銭に余裕ができると学生はコインランドリーの乾燥機を廻しはじめる。 とかく洗濯というものはやたら面倒くさくてできればやりたくなく、本当に最後のパンツを履いてしまうまで洗濯物をどんどん溜めていってしまう。夜も更けそろそろ寝ようと思った頃に今のパンツが3日めになること、そしてそれが最後のパンツだということに気づく。 深夜の12時に部屋の洗濯機を回すわけにも行かないもんだから、最後の手段として学生は洗濯物が積まれたカゴを抱え、いささか遠いコインランドリーに向かう。 深夜

          コインランドリーの仕上りを待つ時間はなにか特別な手触りがある